イット・カムズ・アット・ナイトのあらすじと意味をアレの正体を徹底解説【想像力が人を殺す】

この映画は単なるパンデミックの映画ではありません。まずはあらすじから映画の内容を振り返り、このイット・カムズ・アット・ナイトが伝える人間の破滅の一歩を解説していきたいと思います。

イット・カムズ・アット・ナイトのあらすじ

未知の病気が蔓延し、人類が絶滅しかけている世紀末。ポールは妻と息子のトラヴィスと山奥の小屋に立てこもっていました。普段はガスマスクに手袋をし、外界との接触を完全に立っていました。そんな彼らにとって悲しいことはトラヴィスのおじいちゃんが亡くなったことでした。

ある日、ポールたちの家に何者かが侵入します。彼の名前はウィル。飲み水を探し、歩き回り空き家だと思って入った家がポールたちの家でした。ポールは彼を捕まえ拘束し様子を見るようにします。

翌日ウィルに尋問すると彼は自分には妻と息子がいること、食べ物はいっぱいあることなどをしゃべり命乞いしてきます。ポールは迷いながらも彼の拘束を解き、食べ物と水を共有することを提案します。

2つの家族の奇妙な同居がはじまりました。互いに不安になりながらも少しづつ人間らしい生活を取り戻していき、互いに笑顔が見えるようになりました。

しかし、安寧の日々はそう長くは続きませんでした。ある日の夜、眠れなかったトラヴィスが見ると家のドアが開いています。何者かに侵入されたのか、あるいはウィルたちの誰かが扉を開けたのか互いに不安が募っていくのでした。

ポールはウィルに互いに距離を置くことを提案しました。ポールはウィルの息子アンドリューが感染していることを疑います。ウィルは疑われていることを不安に思い、危害を加えられる前にこの家から出ることを画策します。

結末ラスト

ポールはウィルが出ていくときに物資を奪われることを危惧し彼を拘束しようとします。しかし、ウィルは銃を抜いて対抗します。ポールも黙ってはいなく、もみ合いになります。一瞬のスキをついてキムはアンドリューを連れて逃げ出します。しかし、その甲斐なく小さなアンドリューはポールにより射殺されます。ポールはサラもウィルも殺してしまいました。

トラヴィスはベッドにいます。彼は自らが感染したことを悟ります。皮膚にデキモノができた彼は静かに息を引き取るのでした。

イット・カムズ・アット・ナイトのキャスト

ジョエル・エドガートン – ポール
クリストファー・アボット – ウィル
カルメン・イジョゴ – サラ
ケルヴィン・ハリソン・Jr – トラヴィス
ライリー・キーオ – キム
グリフィン・ロバート・フォークナー – アンドリュー
デヴィッド・ペンドルトン – バッド

ソレの正体の考察&解説

とても暗示的な映画で、似たような映画にイット・フォローズがあります。制作会社は同じアニマルキングダムです。このイットフォローズも正体不明の何かが襲ってくる作品です。

【ネタバレ】イット・フォローズの正体・結末・あらすじを解説!ラストはハッピーエンドか

今回はパンデミックの世界ということもあり、より目に見えない何かが襲ってきます。

この映画が伝えたかった人類を全滅させるソレの正体、皆さんはわかったでしょうか?ではそれを解説していきましょう。

人間を殺すものは何か

人間を殺すものは何か。ナイフ?銃?爆弾?もちろんこれらは人を殺しますが、道具でしかありません。人間を殺すのは人間の最大の特徴でもある「想像力」なのです。

私たちは、あれができたらいい、これができたらいいというのを常に実行し進化してきました。その想像力は私たち最大の武器である一方で、時にはマイナスに働くことがあります。

例えばナチスを生んだ優生学です。人間を優等、劣等に分け、結果的にそれが世界大戦を引き起こすことになりました。例えば16世紀から17世紀の近代で行われた魔女狩りも同様です。魔女が本当にいたならまだしも、その大半が魔女だと”思われて”殺されていったのです。しかも残虐な方法で。

この手のテーマを取り上げた映画は数多くあります。例えば鬱映画として有名なスティーブンキング原作の「ミスト」では正体不明な霧が表れますが、結果的に映画の中心はショッピングモールで殺しあう人々や状況に絶望して自害する人々でした。ロメロの作るゾンビ映画もまた、その作品の中心にあるメッセージは「本当に怖いのは怪物ではなく人間」です。

「それ」の正体は何か

ではこのイット カムズ アット ナイト=それが夜に来る、という「それ」は何を指しているのでしょうか?この映画では登場人物の半分以上が死にますが、その死因は病気ではありません。病気で死ぬのは冒頭のトラヴィスのおじいちゃんと最後にトラヴィスが死ぬだけです。それ以外は人間同士で殺し合いをしています。

ウィルたちを殺したのは銃ですが、彼らを殺しに導いたのはポールたちの恐怖心です。彼らが物資をもって逃げてしまうのではないかと「勝手に」想像し、疑心暗鬼になり結果的にウィルたち一家を皆殺しすることになります。

誰がドアを開けたのか

ウィルたちの殺害につながったのは「ドアが開いていた」事件でした。そこで真っ先に疑われたのが死んだおじいちゃんの部屋で寝ていたアンドリューです。ですが、アンドリューは背丈から言ってどう考えても鍵を変えられません。(ウィルたちのまっとうな主張をポールたちは冷静に聞けませんでした)

では誰が夜にドアを開けたのか?まるで何かがドアをあけて部屋に来たかのようで、文字通り「イット カムズ アット ナイト=それが夜に来る」となっています。

これはトラヴィスです。おそらく夢遊病はアンドリューでなくトラヴィスで、犬を心配するがあまり部屋から抜け出したものと考えられます。彼は無意識に犬を連れて帰り家に置きます。(病気と夢遊病の関係は明らかではありません)

伝染病は本当にあるのか?

そもそも本当にこの世界に伝染病はあるのでしょうか?ウィルはマスクなどせずに歩き回り、ポールたちを道で襲ってきた野盗たちも特にマスクのような防護はしていませんでした。

トラヴィスは死にましたが果たしてそれは本当に恐れていた伝染病でしょうか?もしかして別の病、例えば狂犬病やほかの病の可能性もあります。

横井庄一という人をご存じでしょうか?戦争が終わってからも28年間戦争が終わってないと信じてグアムに潜伏していた日本人です。全く同じことがこのポールたちにも起きた可能性もあるのではないでしょうか。それぐらい人間が見ている世界は小さく狭く、一方で思い込みにより時にとんでもない世界を作り上げてしまうのだと思います。

感想・評価

いわゆる普通のハラハラドキドキする映画ではありませんが、見終わった後考えさせられる作品です。

何度も見ればそのたびに発見がありそうですが、この制作会社は常に抽象的な作品を作り続けるため良くも悪くもドツボにはまると消化不良に陥ります。

あなたは「イット」を何だと思いましたか?