映画ベルベット・バズソー:血塗られたギャラリーの評価・あらすじとネタバレ解説【Netflixオリジナル】

ベルベット・バズソー:血塗られたギャラリー

 ベルベット・バズソーの評価

★★★☆☆

一言:芸術を食い物にする輩に死の鉄槌を!

 Netflix(ネットフリックス)オリジナルのベルベット・バズソーです。

少し展開が遅かった部分もあったのですが、面白かったです。

普段アートに触れる機会もあまりないので、アーティストたちの悲鳴を聞いているようで、金に群がるアートディーラーたちが一人残らず粉砕される当たりがスカっとします。

皮肉のきいた作品

何がいいって、各人の殺され方に皮肉がたっぷりきいているというのが一番気に入っています。

例えばモーフは自分がレビューでけなしたアートロボットによって殺されますし、ジョセフィーヌはストリートアーティストに捨てられた瞬間にストリートアーティストの一部になってしまいます。

ロードラはこの映画の題名にもなっている元々は「ベルベット・バズソー」というアーティストだった頃のタトゥーに殺されることになります。

ただ殺されるだけでなく、しっかりと味のある展開に仕上がっているのが素晴らしいです。

ベルベット・バズソーのあらすじ

評論家のモーフは歯に衣着せぬ批評でアート界では誰もが一目置く存在でした。

ロードラは元アーティストでしたが、現在はアートディーラーです。

ジョセフィーナはロードラの元で働いていましたが、ある日住んでいるアパートの住人のディーズが急死したことで、彼の生前書いた絵を入手することになります。

ディーズの絵は不気味な作風であったものの、見事な作品で見る者を虜にする高値で売れることが間違いない作品でした。

ジョセフィーヌの持つディーズの絵の価値をいち早く見抜いたロードラは、競合避止義務を縦に共同パートナーとしてディーズを展示し、販売する提案をします。

モーフもまた、ディーズの虜になり、展示会のパンフレットを好意的に書くことを条件に書籍の独占販売権を得るのでした。

すべてが棚ぼたでうまく進みそうだったはずが、彼らの周りでディーズにかかわった人がどんどん死んでいく事故が発生します。

モーフは幼い時から不遇だったディーズの怨念がアートに宿っているといって作品を全て捨てようとします。

結末ラスト

モーフがアート倉庫にディーズの作品をしまおうとすると芸術品の一つがモーフに襲い掛かり彼を殺します。

また、ジョセフィーナもまた偶然入った画廊で絵に飲み込まれて絵の一部になり行方不明になります。

ロードラは事態を重く受け止め美術品を撤去しようとしますが、自身の「ベルベット・バズソー」と入ったタトゥーが刃のように回転し、命を落とすのでした。

その頃事故で一部行方不明になっていたディーズの絵が通りで売りに出され、多くの人が二束三文の金額で絵を買い求めていくのでした。

ベルベット・バズソーのネタバレ解説

この映画を見た時に、私は Netflix(ネットフリックス)オリジナルの悪霊系ホラー映画としての秀逸さを感じました。

しかし、一方でスリラーとしての面も薄々感じ取っており、その時あることに気づきます。

それは「見る人によってラストが違う」ということです。

今回は絵画のように見る人によってその展開を変える映画「ベルベット・バズソー」の解釈と解説です。

コンセプトは悪霊?メタファー?

ディーズという暗い過去のある無名画家がアートを食い物にする人間たちにどんどん死の鉄槌を加えていく、というのがこの話の展開です。

ではディーズはなぜモーフはじめジョセフィーナ、ロードラたちを殺していったと思いますか?

①ディーズの絵の売買にかかわった人間を殺す悪霊系ホラー

②アートを商業主義に利用する人間を殺すメタファー系ホラー

私は完全に①のつもりで見ていました。

①はディーズが血を使ってまで自分の中の邪悪な部分を絵を使って表現していきました。彼の負のオーラがそれに惹きつけられる人間をどんどん殺す、まるで絵が生きているかのようなそんなホラーと思っていたのです。

一方で、②はアートを商業主義に利用して金もうけしている人間に死の鉄槌を喰らわせている、という見方です。

ジョン・マルコヴィッチ演じるピアースのようにアートの商業主義に踊らされて自分の芸術を書けないようなアーティストの悲鳴は堪えません。

また、モーフのような批評家によって才能をつぶされたアーティストも数多くいるでしょう。そういった話は現実にもあり、それを批判する意味でのメタファーを含んでいるという見方です。

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見る人によって変わるメッセージ

①と②はどちらが正しいということはないように思います。

仮に①の悪霊系ホラーだとしても、ディーズの売買に直接関与していないディーラーも首を吊って死んでいるわけですし、②にしてもディーズ本人は生涯孤独で商業主義に首をつっこんでいないので、その彼の作品が「商業主義はいかん!」というのも少し引っかかります。(ピアースの絵が人を殺すならわかりますけどね)

むしろ絵画と同じで見る人の解釈でいいと思っています。

絵画は見る人の心を映す鏡といいますから、この映画もそのように自分が思ったものをそのまま映し出せばいいのです。(だから、私は悪霊系ホラーに見えたのかw)

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ラスト結末はハッピーエンド?

この映画の面白さは①と②の解釈の違いによってラストの展開が変わるところです。

ラストとは道ばたでディーズの絵が売られ、5ドルでカップルが買っていくところです。

①の悪霊系ホラーだと思っていた私は「あ~こうやって不幸は連鎖していくのか~」と完全にこのカップルがディーズの絵で虐殺されるバッドエンドを想像していました。

一方で、②だと思ってみた人は「やっとアートを純粋に楽しめる」というハッピーエンドを想像できるのではないでしょうか。

このカップルがどうなったかは描かれませんのでこれも見る人によってその展開が違うというこの映画特有の面白さでしょう。

最後に

あんなことがあったのにベルベット・バズソーを見るとなんだか絵画が家に一枚欲しくなってしまいます。(道で売られているディーズみたいな絵だと困りますが)

余談ですが、今回地味にジョン・マルコヴィッチ演じるピアースがいい味出していました。

商業主義に右往左往させられるアーティストとして味のある演技をしていました。ジョン・マルコヴィッチといえばこの前見たバード・ボックスでもいい偏屈親父を演じていましたので是非こちらもご覧ください。