アナイアレイションの評価
★★★★☆
幻想的な映像だけでなく、独特の世界観から見る人を楽しませてくれる映画です。
遺伝子が変異して出てくる生き物や植物ってすごいですね。
物語が進むにつれて抽象的な描写が多くわかりずらい部分もありますが、その分見終わった時になんだか考えさせられる作品であり、アナイアレイション=絶滅を意味する意味深な映画です。
アナイアレイションのあらすじ
元軍人で大学教授のレナのもとに1年前に極秘任務に赴いたまま行方不明だった夫のケインが戻ってきます。
ケインには記憶がなく、突然倒れてしまい救急車で搬送されます。
しかし、突然ケインとレナが乗った救急車が軍によって止められ二人ともサザリーチにある研究所で監禁されてしまいます。
施設で心理学者のヴェントレスによってケインが危篤の状態であると告げられ、そのケインが施設の外に広がるシマーと呼ばれるエリアからの唯一の生存者であると説明されます。
レナはヴェントレスが物理学者のジョージー・ラデク、人類学者のキャス・シェパード、救急医療隊員のアーニャ・ソレンセンを率いてシマーを調査することを知ると、この探検隊についてゆくと自ら志願します。
シマーに入って、すぐにレナは不思議な体験をします。
自分がシマーにどうやって入ったか数日の記憶がなく、また、シマー内の植物や動物が突然変異によって独自の進化を遂げていたのです。
レナたちが先に進むにつれて先発の調査隊の調査報告書などからこのシマー内は遺伝子が反射しあうことで、遺伝子が融合しやすい環境にあることを突き止めます。
調査が続きますが、その途中で変異した生き物たちに襲われ隊員が行方不明になり、シマーからの脱出と調査の終了のために灯台を目指すことにします。
灯台ではケインの残したビデオカメラを見てケインが二人いることを知り驚愕します、
結末ラスト
灯台に先にいたヴェントレスはレナに出会うと炎のようなものを吐き出しながら消滅してしまい、そこから新たな人型生物が生まれます。
人型生物はレナの血液を吸収し、レナの真似をすることでレナのクローンになろうとしていました。
なんとかしなければと、人型生物に白リン弾を使い灯台ごと燃やしてしまいます。
生還したレナはサザンリーチの施設で尋問を受けていましたが、ケインと再会するとケインがクローンであることを知ります。
逆にケインに「君はレナか?」と聞かれ確信をつけないまま黙り込んでしまいます。二人はそのまま抱き合いますがレナの虹彩は異なる色をしていました。
アナイアレイションのネタバレ解説
アレックス・ガーランド監督のアナイアレイション~全滅領域~です。
ある日突然現れた謎の空間のお話で、完全SFチックでありながら、ある種のメタファーを含んだ映画だと見た瞬間に気づきました。
今回はこの作品を深く掘り下げていきたいと思います。
アナイアレーションの象徴
エリアXとそれを覆うシマーという膜で覆われた地域の特徴を整理すると以下のようです。
- 一部の地域がある日突然変化した
- シマーによって域内の動物は細胞レベルで変異する
- シマー内では人間は長くは生き残れない死の世界となっている
- シマーの中の街は完全に荒廃している
細胞レベルで生き物が変異すると聞いてまずピンとくるのがガンや放射線です。
さらに状況設定から聞いて思ったことは、まるで原子力発電の事故現場のような印象を受けないでしょうか?
チェルノブイリ
死の街チェルノブイリを紹介している人もいますが、まさに納得です。
作中でも荒廃したビルと生い茂った草木がチェルノブイリのように死んだ街を彷彿とさせます。
日本の怪獣の筆頭ゴジラも放射線により突然変異した化け物ですが、チェルノブイリを超える原発事故が起きるとそこはあっという間に死の街になり、まるで異世界のようにこれまで存在しなかった突然変異の動物が現れると想像できませんか?
シマー内の独自の進化
シマー内では多くの生物が突然変異していました。サメの歯を持つワニ、いろいろな花を1つの根で咲かせる花、人の声帯を持つクマなど、これらは生き物が何億年とかけてきた進化を一瞬で飛び越えて達成されます。
これはシマー内ではすべての遺伝子が反響しあって融合してしまうからです。
結果的に人間と植物が融合したり、ラストの灯台では人間の遺伝子を取り込んでクローンをつくる銀色生命体まで登場します。
ラスト結末の解釈
映画のラストで生還したレナはケインと再会し、ケインがクローンであることを見抜きます。一方でケインが「君はレナか?」と聞かれてレナが黙り込んでしまうシーンがあります。さらにレナの瞳の色は変化しており、明らかにシマーに入る前のレナではありませんでした。
レナがクローンと入れ替わったのかもしれませんが、私の解釈としてはレナはレナのままだが、シマーに入ったことでもはやレナ自身が違う生命体になりつつあることが自分でもわかってきたのではないでしょうか。
ラストで抱き合った二人からは、これから新しい生命体としてその種を広げていくことが予想されます。
エクスマキナとの類似から見る解釈
ガーランドと言えば映画エクスマキナで注目を浴びた監督です。
こちらはAIのお話ではありますが、本質的な部分では類似のものがあります。
つまり、AIのエヴァはラストで施設から逃げ出し、人間の中で混じって生きていきます。
私は将来AIが人間を絶滅させる日が来るのかなと思いました。
この展開はまさに今回のアナイアレイションでも同様のことが言えます。
私たち人間の中にどんどん異種生物が入り込んで、じつは100年後は純粋な人間はいなくなっている可能性だってあるのです。
最後に
「アナイアレーション」とは全滅、絶滅を意味します。
核のある世界ではその破壊力はもちろん、放射能物質の汚染や遺伝子レベルの変異は物理的なダメージよりはるか恐ろしいです。
エクス・マキナに続いてアナイアレーションと通じてガーランド監督は人間という種が滅びる可能性を示唆していると感じています。