イノセントガーデンの評価
★★★★☆
名作オールド・ボーイのパク・チャヌク監督にプリズンブレイクのウェントワースミラーが脚本をするという異色のコンビで興味をそそられたのがきっかけでした。
結果は秀逸な作品で面白かったです。
監督も優秀、脚本も優秀、演者も優秀とくれば安心して見れる作品です。
イノセントガーデンのあらすじ
インディアには誕生日に毎年届く靴のプレゼントがあります。それは家の広大な庭に、隠されているはずでしたが、18歳の今回の誕生日は「鍵」が入っているだけでした。
ある日、突然父のリチャードが自動車で不思議な死を遂げてしまうのでした。
繊細で五感が鋭い彼女は、家でも学校でも孤立し、母のエヴィとも心は通わず、ただ一人の理解者だった父を失ってしまった悲しみに暮れていました。
葬儀の日、突如行方不明だった叔父のチャーリーが現れます。
参列した人たちはみな驚き、彼はそのままインディアたちとストーカー家に滞在します。
その後、家政婦のマクガーリック夫人、叔母のジンたちが行方不明になっていき、ある日インディアは家の冷凍庫で死体を発見することになります。
ある日リチャードがエヴィとキスしているのを目撃したインディアは家を飛び出し、不良少年のホイップを誘います。
ホイップはインディアに肉体関係を迫ってきましたが、チャーリーが助けます。
チャーリーはインディアの目の前でホイップを殺してしまいました。
その日からインディの中で何かが目覚めたのでした。
結末ラスト
ホイップが失踪してから警察が来ましたがチャーリーとインディアは知らないふりをしました
インディアは誕生日に届いた鍵を使って机の引き出しを開けます。そこには精神病院からのチャーリーの手紙と3人兄弟写った写真がありました。
全てを悟ったインディアはチャーリーが弟のジョナサンを殺して精神病院に入院していたこと、父のリチャードを殺したことを知ります。
チャーリーはさらにインディアとの関係にも感づいたエヴィを殺します。
インディアはエヴィを殺したチャーリーを猟銃で殺します。
一人になったインディアはチャーリーの車に乗って走り出します。
途中保安官に呼び止められますが、彼女は聊かの迷いもなく、彼を殺害して道に立たずむのでした。
イノセントガーデンのネタバレ解説
イノセントガーデンは不思議な展開からスタートする映画です。
今回はイノセントガーデンが映画中に明らかになる事実を一つづつ整理していこうと思います。
チャーリーの正体
当初は海外を放浪中という触れ込みのチャーリーでしたが、実際は過去に弟を殺したことで精神病院に入院していました。
彼はインディアに固執しており、彼女の中に眠る自分と同じ異常殺人者(サイコパス)としての血をかぎ分けていました。そのため、獄中からも手紙を度々送り、彼女の18歳の誕生日を待って精神病院を自ら退院したのでした。
父はなぜ殺されたのか
父リチャードは精神病院に入院していたチャーリーの退院の迎えに行ったときに殺されました。
リチャードはサイコパスのチャーリーを娘や家族に近づけるわけにはいかないことからチャーリーにお金を渡しニューヨークに行くことを強要しました。
しかし、チャーリーはイ自分とインディアの関係を阻むものを許さず、リチャードを殺したものと思われます。
チャーリーの目的
チャーリーの目的はインディアを殺人者として覚醒させることでしょう。
インディアが人並外れた感性の持ち主であることを早くから見抜き、自分と同じ人種であると確信したのです。
チャーリーはインディアを覚醒させるために何度も殺人を見せようとしました。
例えばインディアの好きなアイスと死体を敢えて同じ地下のクーラーボックスに隠したのも暗にインディアに死体を見つけさせるためと考えられます。
ホイップの殺害がはじめのきっかけですが、そのきっかけを作ったのもチャーリーがさほど愛しているとは思えないエヴィとの密会によるものでした。
そして、ラストにエヴィを一緒に殺すことで完全にインディアを覚醒させる狙いがあったのでしょう。
父の狩りの教え
インディアにとって狩りは特別な意味を持ちます。
母エヴィがリチャードやインディアと疎遠になったのはインディアとリチャードが度々狩りにでかけていき、彼女との溝を作っていったからでした。
さらにリチャードが仮にインディアの中の異常殺人者としての資質に気づいていたとしたら殺害本能を狩りによって紛らわせていたとも考えられます。
あるいは、リチャードはチャーリーに対抗できるだけの力を持つインディアにチャーリー殺害を託したとも思えます。なんでもできる天才のチャーリーが唯一隙を見せるのは誰かを殺しているときだけとすれば、狩りの基本である相手が隙を見せるその時を狙うようにインディアに猟銃の使い方を教えたのかもしれません。
イノセントガーデンとは
原題はSTOKERなのですが、日本題のイノセントガーデンは個人的に気に入ってます。
この映画では前半でインディアが屋敷の庭でプレゼントを探したり、読書をしたりとまさにストーカー家の純潔お嬢様、という感じでした。一方でチャーリーが弟を殺した事実が出てくると一気に庭は殺人を犯した場所、インディアは殺人鬼に一遍します。この場所をイノセントガーデン(無垢な庭)とするセンスは素晴らしいと思います。
プレゼントの靴
インディアの誕生日には毎年サイズが上がっていった靴が贈られました。
その靴は小さいときからデザインが変わらない地味な靴で、18歳の誕生日にチャーリーが用意した靴は打って変わって大人びたハイヒールでした。
サイズが上がる靴はチャーリーが成長を楽しみにしているという現れ、ハイヒールは女性としての目覚めならぬ殺人者としての目覚めを暗示していると考えられます。
イノセントガーデンの感想
100分間ノンストップで進む物語に息をのみました。
エロティックサスペンスなんて書かれているところもありましたが、正直女性の裸や性行為ばかり出てくる作品ではなく、驚いています。むしろ官能的というか、自慰行為のような描写が多く、それもインディアが大人の階段を上る描写としてしょうがないと考えられます。
何しろ本作の中心にあるのはインディアの覚醒があります。
暗示的な描写が多くあり、例えばインディアがメトロノームに合わせて手足をバタつかせているシーンがありますが、あれはまるで蛹から生まれた蝶のようでした。
ちなみにチャーリーもはじめて弟を殺した時に同じ動きをしていました。そちらは手足をばたつかせたことで砂にできた跡が完全に蝶々の羽のようになっていました。
非常にスタイリッシュというかかっこいい場面も多く、どんどん世界観に引きこまれていく作品です。
最後に
終始暗い雰囲気を醸し出す本作の陰の主役はニコールキッドマン演じるエヴィでした。
彼女はサイコパスの母親として全く理解できない娘にとにかく翻弄されます。
それもそのはず、父親は自分の家計にサイコパスがいたことを隠していたわけなので終始彼女だけが蚊帳の外なわけです。
そんな彼女の唯一の救いはインディアが彼女に直接手を下さなかったことでしょうか。
ニコールキッドマンをそんな脇役に使う贅沢な映画ですが、ぜひ一見の価値があるのでご覧ください。