ブルー・マインドの評価
★★★★☆
一言「思ってた映画と違った」
ホラー映画として見た自分は、完全に想定外の内容でしたし、一方で見終わったあとで「彼女は変態する」の意味がばっちりわかってある意味すっきりした映画でした。
内容としては「RAW 少女の目覚め」と同じテーマです。
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邦画が苦手そうなテーマ「女性の身体(心)の変化」を思い切ったシナリオ設定で表現した斬新な作品です。
ブルー・マインドのあらすじ
両親の仕事の都合で新しい街に引っ越してきたミア。
転向したての学校でクラスに馴染もうとクラスでも”イケてる”グループのジアンナたちと仲良くなろうとします。
はじめは彼女たちのパシりからはじまり、一緒にタバコを吸い、万引きをし、酒を飲み、過ごしているうちに仲良くなっていきます。
自分を理解してくれない親へのいらだちや、子供から大人の女性へと変わっていく言葉にできない不安を抱えるミアは、その鬱屈した気持ちを振り捨てるかのようにジアンナたちとの悪い遊びにハマっていきます。
しかし、ふとミアは自分が他人と違う”変化”を感じとります。
ミアは成長と表現するにはあまりにも不気味で不自然な身体の異常な変化を感じはじめます。
ミアは自分が生魚を食べたくて仕方ない衝動にかられること、気づけば足が水かきのようにつながっていること、足にあざのような模様ができること、脇腹にエラのような隙間ができてしまい一人悩んでいました。
結末ラスト(ネタバレ)
周りの人間は「彼女は病気だ」と言って彼女を遠ざけます。
彼女の両親も彼女を理解しようとしませんでした。
ある日パーティで溺れかけて死にかけたジアンナを助けました。
まるで魚のような動きで彼女を助けたのを目撃したみんなは絶句します。
泣きながら帰ったミアは家の中で酔いつぶれてしまいましたが、起きると下半身が魚の人魚になっていました。
ジアンナだけはミアを理解し、海までミアを連れて行ったのでした。
ブルー・マインドのネタバレ感想
斬新な作品にいい意味で裏切られました。
予告編からとても注目されていた「少女が魚を食べるシーン」も控えめに描かれ、とても繊細な作品に仕上がっています。
少女の複雑な心のうちを表現
思春期の少年少女というのはとても扱いずらいものです。
精神的に言えば、それまで親にしっかり守られていた子供時代から突然学校という閉鎖された集団生活の中でのヒエラルキーに翻弄されます。
そこでは先生、親誰も助けてはくれません。自分で誰と付き合ってどう生きていくかを決めないといけません。個性を出すために、大人ぶってタバコを吸ったり、麻薬をやったり、時には社会からはみ出た行動が必要なときもあります。
肉体的にも女性は月経がはじまり、身体の不調が出ます。
私は男なので月経はわかりませんが、突然出血すれば驚くことでしょう。
誰もそれに答えをくれませんし、自分を完全には理解することはできません。
今回はその少女の心と身体の大きな変化をよりダイナミックに表現するために、通常の女性の生理的変化に加えて、自分が魚の能力を得ていく様を描いています。
この発想はとても評価すべき点だと思います。
疎外感や孤独
人間は病気になると、とても疎外感や孤独感を感じるそうです。
今回の魚への変態というメタファーは実はある種の病気患者を指しているのではないかと思います。
例えば乾癬(かんせん)のように全身の肌が赤黒くなってしまう免疫系の病気はいつでもだれでも突然なる可能性があります。
昨日まで普通だったのに、ある日を境に突然自分の身体が赤黒くブツブツができてくる。理由はわからないし、周りは自分を変わった目で見つめる。乾癬患者は徐々に人を遠ざけてしまい、孤独や疎外感に覆われるそうです。
まさに今回のミアのように誰からも理解されず、だれからも理解されない、どうしていいかもわからず「自分はおかしい」とただただ感じてしまいます。
今回は魚だったので海に身を投げても死ぬことはありませんが、もしかしたら病気で精神的に追い詰められて、海に身を投げる人もいるかもしれません。
誰がミアを助けるか
ミアは一人で抱えてしまい、最後まで誰にも告白することはありませんでした。
唯一ジアンナだけには最後電話していますが、完全に手遅れになってからでした。
今回象徴的なのは「手を差し伸べない大人」です。
ミアの両親は彼女の悩みを正面から受け止めようとせず、ただただミアを叱っていました。あんなに悩んでいたミアに「カウンセリングを受けろ」だのまさに他人事のようにアドバイスをします。
唯一相談しにいった婦人科の医師には「ありえない」と一笑にふされ、相談するどころか不信感を高める結果になりました。
若い少女の悩みを受け止める準備が今の社会にはない、ということを暗に示していると感じました。
最後に
たとえば日本人が突然人魚になるととても違和感がありますよね。
人魚と言うと洋風な目鼻立ちに金髪の髪、まさにこういう映画は洋画じゃないと撮れないんですよね。
そういえば「女心は海よりも深い」って聞いたことありますね。タイトルの「ブルー・マインド」もこの言葉に少しかかっているのかもしれませんね。
まだ見てない方はぜひ一度ご覧ください!