怪怪怪怪物!の評価
★★★★☆
個人的にかなり面白かったです。
ホラー映画としてもよくできていますし、人間関係のつらさも感じられますし、何よりラスト15分がよくできているので見終わった後にとても満足できる映画です。
カメラワーク、演出、役者の演技、どれをとってもB級映画のシッチェス映画祭のものとは思えない作品です。
題名もいいですね、センスあります。
本当は★5あげたいところですが、間が若干中だるみするので、マイナス★1です。
この手の映画は90分くらいがベストですが、2時間あるとさすがにだらけますね。
怪怪怪怪物!のあらすじ
廃墟で2人の少女が老人を襲って食べています。彼女らはダンボールの中で生活をしていました。
いつもクラスメイトからいじめられている高校生リン・シューウェイ。ある日、問題を起こしたシューウェイといじめっ子3人は、独居老人の手伝いをするボランティア活動を教師から命じられます。
ふざけてボランティアを終わらせた3人が帰ろうとすると道路で女の子が車に撥ねられてしまいます。安否を確認しようと近寄ると突然少女が目を覚まし襲ってきます。
反撃した彼らは仕方なく少女を彼らが溜まり場にしている廃校のプールに監禁します。
普通の人間でないその少女は身体の中に巣食う悪蟲のせいで人間を襲って食べる習性がありました。また、彼女は見た目は怪物のようで太陽の光に当たると燃え尽きてしまう習性がありました。
いじめっ子たちは監禁した少女に拷問に近いイタズラを繰り返します。シューウェイは少女が死なないように血を分け与えながら逃すチャンスを伺っていましたが、いじめっ子たちの自分への報復を恐れて行動できません。
その頃怪物の姉がいなくなった妹を探して街にやってきました。交番、スクールバスなどを襲い、いじめっ子のボスのガールフレンドを殺してしまいます。
ボスは怒り狂い彼女をおびき寄せ、ガソリンで焼き殺す計画を立てます。
結末ラスト
少女から取った血液を町中に塗りたくり、少女の姉をプールまでおびき寄せることに成功します。
シューウェイの役目は化け物がプールのロッカールームに入ったらトビラを閉めて閉じ込めることでした。
しかし、いじめっ子たちの支配から逃れるためには今化け物に彼らを殺してもらうしかないと思い彼らを裏切ります。
ボスらを殺した少女の姉はシューウェイのいる部屋に入ってきて、彼を殺そうとしますが窓をあけて朝日で彼女らを焼き殺します。
ボスらいじめっ子が死んだ後もシューウェイへのいじめは変わりませんでした。
ある日彼はスープの中に少女の血を混ぜてクラスメートに飲ませます。
クラスメートはどんどん怪物になっていき、燃え出します。シューウェイも最後は自分も燃え尽きてしまいます。
怪怪怪怪物!ネタバレ感想
シッチェス映画祭上映作品は毎年掘り出し物があるので要注目です。(外れもいっぱいありますが)
その中でも圧倒的な当たりがこの怪怪怪怪物!でしょう。
台湾映画ということで避ける人もいるかもしれませんが、これを避けては通れないいい映画だと思います。
バランスのいい作品
序盤から中盤にかけては怪物というよりは人間の醜いところがオンパレードするようなイメージです。とにかく若さゆえの人間の弱いところが出てくるのです。
先生もクラスメートもみんなひどい!お前らこそ怪物だ!そう叫びたくなる作品です。
この作品はホラー映画でもありながら多くの映画要素を含む作品になっています。
ベースは食人鬼が暴れまわるのでホラーがベースにもありながら、時に笑いあり、時にほっこりする、見終わったあとラストの結末までたどり着くと「あー見てよかったな~」と思える作品です。
ラストの解釈(ネタバレ)
気になるのはシューウェイはなぜ最後クラスメートを殺したのか。
これは作中で彼が障害者の男性にぶつけていた怒りに関係があるのではないでしょうか。
「この世には悪人かバカしかいない」
これが全てだと思っています。
元々は心優しく秀才の彼にとって、いじめられることは元より、いじめっ子グループに入るのはつらいことだったでしょう。
そして、彼は世の中に悪人ばかりいることに絶望します。
人を食べる食人鬼が悪いのか、それを遊びで痛めつける奴の方が悪いのか、彼の周りにはとにかく悪人か、バカしかいません。
そして、彼もまたいじめっ子を殺してしまった悪人です。
そんな世の中に嫌気がさした彼は自らも含めて死ぬことを選びました。唯一悪人ではないいじめられていた太った女性を除いて。
なぜ怪怪怪怪物!は名作なのか
この映画の魅力は中盤の血まみれのバスのシーンではありません。
食人鬼をいじめるシーンでも、彼女が殺しまくるシーンでもありません。
この映画がとても魅力的なのは悪人ばかりの世の中でも、時折見える勇気や愛情にほっこりするのです。
それはラストに食人鬼の姉が妹を必死に守ろうとするシーンでもあり、自らも含めて残されたどうしようもないバカたちのために悪人を排除することを決めた主人公の勇気ある行動に心が温まるからです。
怪怪怪怪物!の最後に
この手の食人鬼の映画はスプラッタ全開でなかなか人には勧めずらいのですが、公開時のレギュレーションはPG12ということで誰でも見やすい映画になっています。
もちろん、食人鬼のメイクもとても怖いですが、初心者にとってはおすすめの映画です。