キュア 禁断の隔離病棟の評価
★★★☆☆
まず良い点として、映像がとても奇麗であり、カメラワーク、役者の演技力、映画としての完成度はかなり高いです。
病院という少し暗いイメージを払拭する不自然なくらい白で統一された院内と対照的に青や赤を中心とするコントラストが強く効いた映像が、「こりゃ何かが起こるな」という神秘的な雰囲気を作りだしていると言えるでしょう。
一方で、脚本は少しお粗末だったと言わざるを得ません。まず2時間半近い作品の中盤ではとにかく謎を量産し続けるという始末。しかも脱走しては戻され、脱走しては戻されを繰り返し、少し間延びします。
ラストは荘厳に迎えたものの、はじめから「若返り」と「近親相姦」というキーワードが完全に見えていたので、謎を振りまいて回っていた割にはシンプルなラストで少し残念です。
キュア 禁断の隔離病棟のあらすじ
ウォールストリートで働くロックハートは、買収に伴う会社の危機に社長のペンブロークを迎えに行くよう命じられます。
社長はスイスの療養所におり、療養所は山のさらに奥に建てられていました。
面会時間が過ぎていたことを口実にロックハートは中々社長に会うことができませんでした。諦めるわけにもいかず、一度麓まで引き返そうとしますが、彼が乗っていたハイアーが事故を起こし足を骨折して、やむなく療養所で治療を受けることになります。
不幸中の幸いで、療養所を堂々と動き回れるようになったロックハートはついに社長と面会が叶いますが、彼はもはやかつてのビジネスマンとしての面影が全くない別人となっていました。
ロックハートが無理やり彼を連れ帰ろうとすると今度はペンブロークがいなくなってしまいます。
そして療養所を探し回っているとハンナという女性に出会います。
彼女は自らを特別な存在と言い、実際療養所で出会う老人たちと比べると何か違う雰囲気を持っていました。
さらにロックハートが療養所を調べていると、そこは元は城であり、城主が永遠の命のために村人を実験台にしていたことがわかり、その結果村人によって焼き殺されているという逸話まで明らかになります。
調べをすすめると驚愕の真実を知るロックハートですが、いつしかその療養所から抜け出ることができなくなっていくのでした。
ラスト結末
所長のヴォルマーには裏の顔がありました。
それは療養所の地下水が若返りの力を持つということでした。
ただし、水はそれだけでは毒性を持っており、幻覚を見る・歯が抜けてしまうなどの副作用がありました。そのためにウナギを人体に取り込み浄化して液体を抽出するために療養所にいる人たちを利用していました。
液体を抽出し終わった人たちはミイラのようになっており、その中にはペンブロークもいました。
また、ヴォルマーは実は焼き殺されたと思われていたここの元城主のバロンだったのです。
彼はかねてからの純血の子孫繁栄のためにハンナと性交に及ぶところでしたが、ロックハートがハンナを連れて逃げ出します。
帰り道会社の幹部たちが療養所に様子を見に来ますが、ロックハートは彼らの誘いを断り不敵な笑みを浮かべて自転車でハンナと闇に消えていきました。
キュア 禁断の隔離病棟のネタバレ感想
一言で言えば「大作になるはずだった作品」というのが感想ですね。
はじまりはまるでレオナルド・ディカプリオの「シャッターアイランド」のような閉鎖的な病院で始まります。心なしか、ロックハート役のデイン・デハーンもディカプリオに似ているように思います。
脚本の弱さが目立つ
「大作」になれなかった理由はただ一つ、脚本がお粗末ということです。
中盤ロックハートが街のバーや警察署から何度も連れ返されるシーンはみなさんうんざりしたのではないでしょうか。
しかもあまりにも風呂敷を広げすぎてしまってどこまでが本編に関係があり、どこまでが関係ないのかが非常にわかりづらくなっています。
特に私が気になったのは例えば社長が会社宛てに送った手紙に「私たちはみな病気なのだ。社会で成功したものはみな、病んでいる。しかし、その事を認めない。すると体が心を裏切り叫び出す。私たちは”病気である”と」とありますが、これ自体がもはや意味ありげで、結局あまり本編と直接関係ないという着地をしてしまい、非常に残念でした。
謎めいた病棟は素晴らしい
とは言ったものの、映画を見ていての初めの1時間くらいはワクワクするものでした。
病院にいる人間がまるでロボットのようで、評価のところでも書いたとおり「何かが起こる」感じがぷんぷんします。
キュア 禁断の隔離病棟のネタバレ解説
この映画「キュア」はどうしても話が飛び飛びになるのでもう一度整理したいと思います。当然完全にオチをネタバレしているので要注意です。
療養所の秘密は何か
若返りの薬を作るための精製所です。
療養所に流れる有害な水を、人間の身体とウナギを使って濾過することで若返りの水を作っています。
なお、水は有毒でそれだけで飲むと身体に有害です。
療養所にいる人たちが、思考能力が低下し、その土地に依存するようになる(=帰りたくなくなる)のも水の毒性の一つだと考えられます。
ヴォルマーの秘密
何十年も前に焼け死んだ城主バロンが名前を変え、火傷の皮膚を隠してヴォルマーとして復活しました。
彼の目的は死ぬ前から同じで、純血の種族を作ることです。
元々妹と性交渉を持って生まれたのがハンナでした。
そして彼の更なる目的はハンナの初潮を待って、子孫を作ることでした。
そのために、若返りの薬を飲み続け若さを保っているのでした
ハンナの正体
ヴォルマーに「特別な存在」と言われていたハンナは実は過去に火あぶりにして殺されたバロンの娘でした。
逸話によるとバロンと妻は焼き殺され、娘は地下水脈に捨てられたとありますが、生き残ったバロンによって育てられたと考えられます。
青い瓶の正体
若返りの薬です。
あれによって永遠に若さを保つことができます。
ロックハートの父親の死
父親の死と今回の関係は何が正しいかは不明です。
おそらく、現実と過去をごっちゃ混ぜにしているロックハートの内面の混乱を表現しているのだと思われます。
映画キュア禁断の隔離病棟の最後に
途中の展開から「都会で生きている人間は実は全員病気に感染している」というような展開を一瞬期待していたのですが、そこまで伏線を回収できなかったのが残念です。
それでも作品としては奇麗に作っているので、時間がある方は覗いてみる価値はある作品だと思います。