映画触手の評価
★★☆☆☆
一言で言えば不思議な映画、もう一つ付け加えると変態な映画です。
もちろん、エロ漫画に出てくるような触手で女性がもてあそばれるようなシーンもあるのですが、それもほぼ数分なのでそれほどクローズアップするところではないでしょう。
全体的にどんよりとした雰囲気ややり場のない登場人物たちの気持ちが行き場を求めて結果的に触手のシーンにたどり着いている構成からしてタンタンと物語が進む感じです。
映画としての完成度は悪くないと思うのですが、いかんせん話としての面白さが盛り上がりに欠けるように思います。
特に今回は「結局あの触手何だったの?」というところが気になるところですが、そこらへんにもあまり触れられておらず「概念的なものだよ」というふわっとしたことした触れられていないのは残念です。
そういう意味で最後までもやっとした映画で、終わった後に「え、終わり?!」って言いたくなる作品です。
触手のあらすじ
アレハンドラは、夫アンヘルとの冷めた仲と彼からの暴力、自分勝手な姑に耐えながら2人の幼い子供を懸命に育てていました。
しかも夫は、あろうことかアレハンドラの弟でゲイのファビアンと肉体関係を持っていました。
そんなある日、森の奥で変わり果てた姿のファビアンが発見されます。
失意に暮れるアレハンドラは、ファビアンの友人ヴェロニカの勧めで、弟が発見された森の奥にポツンと立つ、小さな屋敷を訪れることにします。
そこで彼女を待っていたのは軟体動物のような長い触手と、ある“官能の魔力”持ち合わせた、謎のクリーチャーでした。
触手の感想
冒頭でも触れたように不思議映画であることは間違いありません。
悪く言えば、中途半端な映画であり、終始ふわっとしています。
触手が出てくるのは数分ですので、この触手をモンスターものと思って期待すると裏切られることになります。(私も裏切られた一人です)
また、エロティックな部分もなくはないのですが、これも少な目で、もう少し触手との絡みがあってもよかったかもしれません。
ですが、これまでとは一風変わった不思議な魅力を持つ触手自体にはとても興味を轢かれてしまう作品です。
触手生物の正体は何か
これがこの作品最大の魅力でしょう。
作品で紹介されている、触手生物の正体は地球外生物です。
ある日宇宙から隕石に乗ってやってきて、まずは野生の本能がするどい動物が集まってきます。
「あらゆる生物の原始の姿」と言われており、最も純粋で根源的な要素が具現化したものと言われています。
彼らの特徴を見てみると
①ミミズのような触手で人間のアナから侵入し、悦楽に導いていく
②彼らの影響を受けると動物たちが交尾をはじめる
③はまりすぎると死んでしまう
さて、非常に概念的な話ですが、私はこれを「快楽」の象徴だと思いました。
生き物は快楽に弱い
生き物は総じて快楽に弱いです、その一つが性欲です。ここでいう性欲とは生殖のための性行為だけでなく、男女の一夜の過ち、男性同士のホモ行為、自慰行為、強姦行為を含むすべての性行為です。
また、それだけでなく快楽には食欲も含まれますし、時には麻薬のような快楽が強いものが含まれます。
女性が触手に犯される場面
みなさんは女性が触手に巻きつかれているシーンを見て何を思いましたか?
私は自慰行為を思い出しました。
まるで女性が一人で快楽に溺れているように見えます。
細かいですが、あれは生殖行為ではないと感じました。男女が行う生殖行為は前後の動きが入るもので触手はあくまでもまとわりつくように人間の身体に入り込みます。女性の自慰行為に似ていると感じたのはそこです。
人間の快楽とは何か
生物学的に言えば人間の快楽は脳に流れる電気信号によるものです。脳のある部分に電気を流し続ければ快楽を与え続けられると言います。
触手はそういった「強制的な快楽」に似ていると思います。
性行為で女性は男性の何倍もの快楽を味わっていると聞いたことがあるでしょうか?さらに言えば、男性がそれを味わうと身体が耐えられないらしいです。
出産の機能を持つ女性は男性よりも痛みや快楽に強い存在なのでしょう。
作中でも実は触手に触れた男性(アンヘルやファビアン)はすぐに死んでいます。一方で、ヴェロニカは何度か触手に触れて何週間かたってから死ぬことになっています。
触手が伝えたいこと
触手は快楽を餌に人間を虜にしてしまいます。一度味わうと離れられず男性はその快楽によって死んでしまうことすらあります。
それは人間の根源的な弱さであり、本質であることを触手が証明しているのだと思います。
○○中毒や○○依存症というのはその最たる例で、モノが豊富にあふれる時代においては快楽による多くの人間性の崩壊がメキシコでは起きているのかもしれません。
最後に
今回は完全に独自の解釈での触手に触れてみました。
ちなみに原題は「野生の領域」という意味のスペイン語でやはり、本能に関する何かを表しているものと考えられます。