※本作には閲覧注意な内容が多分に含まれています
KUSOとはもちろん日本語の糞(クソ)のことです。
監督のフライングロータス(Flying Lotus)は昔から日本のアニメに感銘を受けており、親日家として知られています。
アメリカでは本作公開後、通りで人が「KUSO最高!KUSO最高!」と歓喜の声をあげているというから恐ろしいです。
渋谷シネクイントにて限定レイトショー。正直見るのも恐ろしかったのですが、史上最高の糞をレビューしたいと思います。
映画KUSOの評価
★★★★★
この作品はアカデミー賞を取る作品では絶対にないという前提で見る必要があります。
どうしても人は映画を見る時にアカデミー賞を審査するような視点で見てしまいますが、本作ではそんな映画の見方をすべて捨てる必要があります。
なぜなら、見たものの半分以上意味不明であり、何かを暗示したり、していなかったりするからです。
この映画は見る人をそのまま映す鏡です。
つまらない、理解したくないと思えば興味が薄れる映画ですし、勇気をもって興味をもって見てみると「あれ、なんだこれ、もう少し見ていたい」と思う人もいるはずです。
映画KUSOのあらすじ【ネタバレ】
舞台はロサンゼルスでの大地震の後です。
文明は崩壊し、これまで人間積み上げてきた秩序もなくなり、病気にかかったり、頭がおかしくなったり、奇形になったりする人々がひっそりと暮らしていました。
黒人の女性はアパートに住んでいますが、上の階の人に性行為がうるさくてたまりません。
彼女の隣の部屋には彼氏が住んでおり、壁をノックしたらセッ〇スをする決まりになっています。
いつものとおり彼の首を絞めながら性行為に及んで楽しんだあとに、今度は彼女の部屋で楽しむために彼氏が入ってきます。
すると彼女が慌てふためいて自分の首にしゃべるコブができてしまったことを告白します。
なんとかそれを取り除こうと二人で悪戦苦闘しますが、一向に取れません。
それどころかコブは自らしゃべりだし、自分は決して取ることはできないので一緒に共生するしかないと言い出します。
仕方なく男性は何か役に立たないかと思い、おもむろに自分のイチモツをコブに咥えさせます。それがなんとも絶妙な気持ちよさで彼らは3人で楽しむことにしました。
彼らはコブに「ロイヤル」と名前を付けて、仲良く暮らすことにしました。
ところかわり、ハンガークリニックという病院に男性が入ってきます。ここではどんな病気でも治してくれるという名医がいるのです。
男性の病気はなんと「おっぱい恐怖症」
女性のおっぱいを凝視できないというとんでもない病気です。
待合室で問診票を書き、診察室に入る男性。
しかし、その医師の治療法とは奇想天外な治療でした。
なんと、ドクターが飼っているミスタークイグルという寄生虫が出す液体(ゲロ?)を飲むことで治療できるのです。
しかし、残念ながらミスタークイグルはいつもはドクターの肛門の中に隠れているため、出てきてもらうために歌で盛り上げる必要があります。
男性は仕方なく、ミスタークイグルに関する歌をアカペラで歌い、無事にミスタークイグルと対面することができました。
ミスタークイグルの液体を飲み干した男性は気絶しそうになりましたが、起き上がるとおっぱいを凝視し、自分が治ったことをとても喜びました。
そのクリニックにはもう一人女性の患者が来ていました。
彼女は顔中にイボがあり、黒目もほとんど失われているひどい見た目でした。
彼女は異星人二人と一緒に住んでクソみたいなテレビ番組を見て過ごすのが日課でした。
ある日、トイレに入っておもむろに隠していた妊娠検査薬を使ってみると陽性になっています。
相手は便器から顔を出している、モラハラ、バイオレンスのろくでもない男でした。彼女が意識がないときを狙ってレ〇プしたのです。
彼女自身もほとんど内容を覚えていなく、仕方なく中絶をしに病院を訪れていました。しかし、おっぱい恐怖症の男性と話すうちに、まずはそのモラハラ男に妊娠を伝えるほうがいいと心変わりしたのでした。
彼に妊娠を伝えると、中絶はさせないと激怒します。
女性を殺してでも子供を産ませるという彼に嫌気がさした彼女ですが、ちょうど異星人たちが男性の部屋に来ます。
彼らは魔法(?)で男性をものいえない肉塊に変えてしまいました。
元通りテレビを3人で見ていると異星人が妊娠を知ってお腹の中の赤ちゃんをまだ十分に育ってない状態で取り出してしまいました。
彼女ははじめは唖然としていましたが、すぐに気を取り直して抜け殻のようになった赤ちゃんをパイプ代わりに麻薬を吸い始めました。
ある村に奇形で体中にコブのある男の子がいました。
男の子は家ではお母さんからムシや目玉の入ったスープを無理やり食べさせられていました。
また、彼は万年ひどい下痢で、ある日授業中に下痢を漏らしてしまい、恥ずかしさのあまり授業を逃げ出しました。
森の中を歩いていると突然切り株の穴から触手のようなものが伸びてきました。
また、下痢をしてしまった彼は下痢をその職種に塗りたくりました。すると職種はどんどん大きくなっていき、最終的に人の顔になりました。
所変わり、地下には日本人の女性がコンクリートを食べながら生活していました。
彼女は出口と自分の赤ちゃんを探し回って地下をずっとうろついていました。
頭が完全におかしくなっているため幻聴を聞き続ける彼女は、ある時地下のさらに深い穴の中に探している赤ちゃんがいるという幻聴を聞きます。
彼女はすがる思いで穴のさらに奥深くに落ちていきます。
たどり着いた先では彼女が別の女性と一体化してしまう幻覚に襲われたりします。
最終的に下痢をしていた男の子の穴にたどり着きました。(地上につきました)
映画KUSOの見どころ【ネタバレ】
フライングロータス(Flying Lotus)の世界観にどこまでついていけるかでこの作品は楽しみ方が変わってきます。
同時並行で起こる色々な世界
作品の構成は私が認識しているだけでも5つ以上のシーンから成り立っています。
そしてそれをまるで、ディズニーランドのイッツアスモールワールドのように船で巡るように物語は進みます。
首にしゃべるコブができた女、不思議な方法で治療する医者、コンクリートを食べる女、万年下痢をする奇形の男の子、妊娠してしまった異星人と住んでいる女性など、崩壊した世の中で生活している非常識が常識になってしまった人たちの世界を覗けるのがこのKUSOの世界なのです。
グロさよりも目立つ”不思議”な人たち
正直グロ作品なら世の中にもっとありますが、本作の魅力はそこに登場する不思議な人たちでしょう。
彼らは私たちの非常識が常識になっている世界で暮らしています。
おっぱい恐怖症の男性はなぜ、おっさんの肛門に住んでる寄生虫で病気が治るのでしょうか。
女の首にできた喋るコブになぜ、アレを入れてみようと思いつくのでしょうか。
切り株にできた職種になぜウ〇チを塗ろうと思ったのでしょうか。
もはや設定からして笑えるほど笑えないのですが、どうにも目を離せないのです。
これが例えばいじめの一環でウ〇チをなすりつけている描写なら、正直胸糞悪いです。
でも今回はただ、触手に擦り付けて、しかも元気になっている。治療のために必死に肛門から寄生虫を呼ぼうとウ〇チを出させようとする。
頭がおかしい設定であることは重々承知しているのですが、不思議と不快感が思ったよりない、というのが少し新鮮なのです。
崩壊した世界で頭がおかしい前向きな人たち
おそらくKUSOの世界では全ての文明が崩壊して、まともな人間は死んでいるか頭がおかしくなっているのです。
ですが、今回出てくる人たちはなんとも前向きに生きているのです。
排便一つとっても大事に大事にします。
コブができてもそいつと共生する寛容性を持っています。
異常なまでに前向きな彼らに私たちは引いてしまうのです。
KUSOとは何か
糞とはクソです。
排泄物を私たちは嫌悪します。
でも糞は私たちから出てきたものなのです。なんで、自分で作っといて嫌悪するの?本作でも一部でこのメッセージが何度か出てきます。
深いような浅いような、そんなセリフです。
音楽は最高
正直音楽は最高です。サウンドトラックとかあればぜひおすすめです。
映画は二度と見ないと思いますが、フライングロータスの音楽のファンにはなりそうです。
映画KUSOの最後に
個人的なおすすめはおっぱい恐怖症の男性のシーンです。
彼がミスタークイグルを呼び出すために流す音楽は最高です。
この映画はすべてを理解しようとしなくていいと思います。自分のお気に入りのキャラクターを見つけてそこで、ぷっと笑えるぐらいがちょうどいい作品でしょう。
何しろクソですから。意味がありそうで、意味がない。価値がありそうで、価値がない。そんな作品もあっていいのではないでしょうか。