この記事は映画哭声/コクソンを見た疑問や謎を解説している記事です。ネタバレを多く含んでいます。
哭声/コクソンのあらすじ解説
物語は聖書の引用からスタートします。
人々は恐れおののき霊を見ていると思った
そこでイエスは言った。
なぜ心に疑いを持つのか
私の手や足を見よ、まさに私だ
触れてみよ このとおり肉も骨もある
ルカの福音書より
韓国のとある村では奇妙な事件が発生しました。
警察官のジョングは事件の捜査に乗り出しますが、事件はとても奇妙なものでした。
まず事件の被害者と加害者は親族同士であり、多くの傷や残虐な方法で殺害されています。
また、被害者の家にはまるで悪魔崇拝の儀式のようなおどろおどろしい祭壇や動物の死体で埋め尽くされていました。
これがまた、絵に描いたような悪魔崇拝のようなおどろおどろしいもので、これ準備するのに1か月くらいかかるのでは?と思ってしまうような素晴らしい出来でした。
さて、一連は幻覚を見せるキノコが原因という風に死亡解剖では出ていました。
しかし、村では一つのうわさが流れます。
それはある村人が鹿狩りをしていたとき、誤って崖から転落して意識を失っていると、村のはずれに住む日本人がその鹿を生で食べていたというのです。
しかもその形相はおそろしく、目は血走り、まるで野獣のような姿をしていたという噂です。噂を聞いた警察官の一人はその裸の男が怪しいという風に考えます。ジョングはそんな話ははじめは信じていませんでした。しかし、警察官の仲間は、その日本人が現れた時期と事件が起きた時期が一致すると推理します。
ジョングがばかばかしいと話を一蹴すると、突然停電してしまいます。窓の外を見るとなんと不気味な女がいるではありませんか。驚くジョングと仲間ですが、外を見ると影は消えていました。次の日、別の家でまたも家族が殺される事件が発生します。なんとその事件は母親で、昨日警察署の前に立っていた女ではありませんか。女は頭がおかしくなっており、意味のわからないことを言ったり、暴れたりでどうにも手におえない状態で、警察官に取り押さえられました。そして、その女性も次の日には木から首を吊って死んでいるところを通りがかりの人が発見しています。これまでの事件同様、頭がおかしくなった家族が身内を殺し、その後自殺するというケースになっています。ジョングは操作を進めていると一人の女性に出会います。
女性は以前警官仲間が言っていた通り、日本人に近づくと災いが起こり、最後には殺されてしまうと言います。
慌てて、真相を確かめようと同僚に電話して女性に証言してもらうようにお願いしようとしますが、いつの間にか女性は消えていました。しかし、女性の代わりに現れたのがなんと日本人でした。
日本人は裸でフンドシ一丁で目が血走っています。慌てて逃げ出すジョングですが、足がもつれ地面に倒れこみます。襲われそうになった瞬間、ジョングは目が覚め、すべて悪夢であったことに気づきました。しかし、その夜ジョングの娘のヒョジンが突然苦しみだします。
ジョングはヒョジンの苦しみを止めるために日本人に会いに行くことに決めます。
仲間を連れて日本人の家に言った彼らは、日本人が不在だったため勝手に中に入って調べますが、その家に愕然とします。
不気味な動物の死体や祭壇があり、まるで死体の見つかった家にあったような儀式の跡でした。そして、納屋では死体の写真が壁いっぱいに貼ってありました。とてもまともな人間がやれる所業ではありません。そして、仲間の一人がヒョジンの名前の書かれた靴を見つけました。
その夜、ヒョジンを問いただすと日本人のところへ行ったことを素直に認めました。ジョングは改めて日本人のせいだと確信し、ヒョジンのために通訳を連れて日本人を再度訪れます。日本人の家に着くと、今度は日本人がいました。しかし、日本人の家は昨日訪れたときのような祭壇や壁いっぱいの写真がなくなっています。
ジョングは韓国語がわからない日本人に対して通訳を通して尋問をしますが、日本人の回答はぱっとしないものでした。
写真はどこかと聞けば、燃やしたというし、村に来た目的はなんだと聞かれれば、旅行と答えるし、どうも話がかみ合いません。いらだつジョングは日本人を挑発し、家を破壊して、一旦引き上げます。
ヒョジンの症状は悪化の一途をたどります。
皮膚は爛れるようになり、苦手な魚料理を食べたり、今まで言ったことないような乱暴な言葉を吐くようになります。
見かねたジョングの義母は祈祷師に一度見てもらうことを提案します。
祈祷師の イルグァンは憑りつかれているいることを指摘して早速儀式をはじめます。
儀式を進めるうちにヒョジンが苦しみだします。
ですが、最終的にヒョジンの中の悪魔を出すことはできませんでした。
しかも祈祷師は気を付けないとこのままでは悪魔にしてやられると指摘します。早急に次の手を打って本格的な祈祷をしないとならないと言い、準備に移ります。
祈祷師は仲間を大勢連れ準備をして悪魔祓いのようなことをはじめます。
はじめは半信半疑だったジョングも真剣なまなざしで見守ります。
その頃日本人も祈祷をしていました。まるで祈祷師が行っていることに対抗して祈っているかのようでした。祈祷が進むにつれてヒョジンが苦しみだします。祈祷師が杭を打ったところと同じところに杭を打たれたかのように苦しみます。
ジョングは見ていられなくなり、やむなく祈祷を中止させました。もはや、最後の手は諸悪の根源である日本人を殺すしかないとジョングは確信し、仲間とともに武器を持ち、日本人のところへ行きました。日本人のところへ行くとまるでゾンビのような男が飛び出してきて彼らを襲いました。
殴っても蹴ってもびくともしない男をなんとか殺してジョングは日本人を追い詰めました。日本人は殺されると思い逃げ出します。崖まで追いつかれた日本人はやむを得ず崖の岩肌に隠れますが、そのままがけ下まで転落してしまいます。
ジョングたちはやむを得ず村に戻りますが、その帰り道に崖から落ちてきた何かを轢いてしまいます。
なんと轢いたのはあの日本人でした。
どうすればいいかわからないジョングたちはそのまま日本人を道路から谷へ落としました。
日本人が死んだことでジョングはすべての呪いが解けたと思い、ヒョジンを抱きしめました。
その頃、祈祷師は自分を無視したジョングたちに警告しようとジョングのところへ向かっていました。
すると例の女が現れ話しかけます。祈祷師は突然苦しみだし、嘔吐と吐血を繰り返します。女こそ悪霊と確信した祈祷師はジョングたちに警告するために必死に車を走らせます。
車には鳥の糞が大量に落ちてきて運転どころではありませんでした。しかし車から降りると鳥の糞などありません。
祈祷師はジョングに電話をすると、今度はつながります。
ジョングも例の女に気づき、すべてが終わっていないような直感を感じたのです。
祈祷師は例の女こそ悪霊で、日本人は自分とおなじ祈祷師で村人を守ろうとしていたことを伝えます。
電話越しに驚くジョングに女は「自分こそ悪霊の日本人と偽物の祈祷師からヒョジンを救いだすもの」と言いジョングに自分を信じるように言いました。
その頃一方、通訳のイサムは教会で祈りを捧げ、鎌を準備し、腕に十字架を巻き、日本人宅に行っていました。彼はいまだに日本人が生きていて彼こそ悪魔であると思い、殺すつもりでした。同じころジョングはあることに気づきました。
女の着ていた服がかつて自分が居酒屋で見た女の服と同じことに気づきます。
また、別の日にあった女が着ていた服が、別のキノコで頭がおかしくなってしまったと思っていた男の作業着と同じであることに気づきました。
その瞬間この女こそ今回の事件に深くかかわっていると確信し、ジョングは家に走り出しました。
しかし、家では時すでに遅し、ヒョジンが家族を全員切り刻んでしまっていました。
イサムは変わらず日本人を問い詰めていました。
しかし、日本人は言います「私が何を言おうが、お前は私の言うことを信用しないだろう」と。
日本人は突然悪魔のような見た目になっていました。
哭声/コクソンネタバレ考察
まず大前提として本作は監督自身が「見る人によって正解が違う」と述べている通り、これが正解!という答えがない作品になっています。
ただ、作品の根本に宗教的な考え方があることは間違いありませんが、ここでは敢えて宗教的解釈には触れていませんので、別のブログなどご覧ください。
この記事では村で起きた事件と登場人物を整理しながら、実際に何が起こっていたのかを解説していこうと思います。
祈祷師は詐欺師?
日本人の議論の前に周りの登場人物の事実を固めていきましょう。
ラストで祈祷師が車に積んだ箱から写真をこぼすシーンがあります。この写真は日本人の家にあった、壁一面に貼られた今回の被害者の写真です。
なぜ彼がこの写真を持っていたのか。さらに祈祷にあたってのお布施がやけに高かったですよね。一つは彼が詐欺師だったことが挙げられます。いんちき霊媒師で町の人の不安を煽り、除霊のマネをしてお金を巻き上げていたと考えられます。
作中でも彼は「餌を飲み込んでしまったか」という発言をしています。
これは英語の慣用句で「swallow the bait」と言ってまさに”罠にかかる”という意味で、祈祷師が誰かを罠にかけた可能性があります。
もし祈祷師が詐欺師であると、実は日本人が鹿を生で食べていたと証言した村人も祈祷師の仲間である可能性もあります。
ジョングに付きまとう例の女は何者か
さて、霊媒師か悪霊のように見えた女ですが、彼女は被害者と同じ服を着ていました。
普通に考えれば不可能な話です。被害者の服をはぎ取って着るならまだしも、被害者は服を着て死んでるケースもあり、実際に彼らと同じ服を着るのは非現実的です。
つまり彼女は実在しないと考えるのがいいでしょう。見る人の頭の中で作り出された幻、もしくは悪魔というのが正しそうです。
現実で考えれば今回はキノコをはじめ神経系をおかしくする毒物によって幻覚が見えて人を殺してしまうそうですから、そういった幻かもしれません。
足りないピースを考える
この映画の面白いところは微妙に足りない部分があるところです。あと一つ足りないピースを入れることによって物語は色んな景色に変わっていきます。
例えば今回の毒をキノコを食べることによるものではなく、キノコの胞子を吸い込んだことによる空気感染による神経毒だったらどうでしょうか。
キノコは日本人が住んでいるところに生えているかもしれません、何しろ日本人のところに足を踏み入れた人がとにかく頭がおかしくなっているので。
でもそうすると、大枠のすべての理由がつけられます。
①謎の女はラリったことによる幻影。(ゆえに被害者の服を着ていたのも警察官ならではの幻影)
②日本人が悪魔だったり、鹿を食べていたのは幻影もしくは祈祷師が流した嘘の偶像
③日本人自体は幻影かもしれないし、実在しても無害な存在
④家族殺害の原因はラリったことによるもの
⑤祈祷師が謎の女を見たり、鳥の糞に悩まされたのはラリっていたから(日本人の写真を持っていたので、日本人の家に行っていたことがわかる)
細かい「なぜ」はまだまだいっぱいありますが、大枠はこれで型がつきそうです。
コクソンの解釈のまとめ
この映画を見るときに考えないといけないことは「どれが現実でどれが現実でないか」ということ。作中矛盾したり不思議な描写が多数描かれていますが、これは「映画の中の描写がすべて現実」と思うから混乱するのですが。
例えば日本人が悪魔の恰好だったりするのは誰かの幻影(そういう風に見えている)であると思えます。これは「現実」ではないものの、見えている人にとっては「真実」ではあります。
ある人にとっては日本人が悪魔という見方もできたでしょう。ある人には私のような解釈もできたでしょう。
最後に
私の見方ではこの作品の一つの見方は、キリスト教の日本人(國村)をイエスとする聖書の再現でありますが、これ自体は実は①祈祷師の詐欺という人間らしい部分と②キノコもしくはそれに類するラリってしまう自然的な部分が混ざることによって、超常的な現象のように見えてしまうことを表しているのではないでしょうか。
あなたはコクソンをどう見ますか?ぜひこれを読んだ後にもう一度考えてみてください。