映画パージはスリラーホラーで、いくつか続編も出ています。
その斬新な設定から多くのファンを作っている作品で、物議をかもしています。
パージのあらすじ
経済が崩壊した後のアメリカでは、「新しいアメリカ建国の父たち」を名乗る集団が全体主義的な統治を行っていた。
「父たち」は1年に1回、すべての犯罪が合法化される夜(パージ)を設けた(夜7時から翌朝7時までの12時間)。
この間、すべての警察、消防署、医療サービスが停止される。パージの導入によって、犯罪率と失業率は1%にまで低下し、経済状況も改善したのである。
大衆はパージをカタルシスをもたらしてくれる行事だと思っていたが、実際は「父たち」が大衆をコントロールするための行事であった。なぜなら、パージの夜に犯罪の標的となるのは富裕層ではなく、貧困層だったからである。
そんな状況下の2022年3月21日、ロサンゼルス近郊の富裕層の居住区に住むサンディン家は、パージの前に逃げ込んできた男を匿ったために、犯罪者たちと戦うことになってしまった。
パージのネタバレ解説
パージと言えばFF13を思い出すのは私だけでしょうか。元々の意味は浄化や一掃など、まあおおよそいい意味でないことは確かです。
あらすじの通り、全ての犯罪が合法化される夜をパージと名付け、その日だけ好き放題みんな暴れるというわけ。
今日はそんなパージの魅力を解説していきます。
なぜパージが必要なのか?
アメリカが経済崩壊し、世の中の治安は地に落ちたという世の中が本作の前提にあります。
新たに与党になった人たちは治安を回復するために「よし、1日だけみんなのストレスやらうっぷんやら暴力欲望なんかを発散する日を決めよう!」と決めたのがパージです。
攻撃する側からすると要は他人をボコボコにすることで、ストレス発散してしまおうというわけです。
しかもこのパージではとにかく家の中を要塞のようにして侵入を防ぐことが必要なわけですので、ボロアパートに住んでいるやつなんていうのは瞬殺されるわけです。
そして間違いないく標的にされるであろうのはホームレスですね。
いずれにせよ、社会的弱者や経済的弱者は生き残ることができない、そんなルールがパージなのです。
理にかなった無情なルール
例えば、水商売や風俗といったものが世の中で認められるのは、それが認められていない社会よりも性犯罪率が減少傾向にあるからです。
これは考え方的にはパージと同じで、犯罪を減らすには犯罪を一部合法化してしまうほうがいいということです。
しかもこのパージにより、社会的弱者が文字通り一掃されますので、当然社会のバランスがほどよく保たれることになります。
正直設定としてはぶっとんでいますが、非常に着眼点はいいのではないかと思いました。
注目のキャスト
主演の父親であるイーサン・ホークばかりとりだたされていますが、個人的にはお母さん役のレナ・ヘディに衝撃でした。
お父さんが死んだあとは堂々と近所さんたちを取り仕切り、夜を明かします。
はじめはなよなよ気味ですが、間違った世の中で正しいことを選ぶことができる強さを持っています。
どっかで見たことあるな~この人!と思っていたら、テレビシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』ではサーセイ・ラニスターを演じていたんですね。
こちらも蛇のような執拗な感じで、ある意味強い女性でしたね。
パージの評価と感想
★★★★☆
個人的には暴力描写が好きなので結構好きな部類の映画です。
ただし、内容はとても薄いもので、社会的問題を提起するような設定にも関わらず、結局家族が出す答えは「やっぱ殺すのやめよう」という単純なものでした。
もう少し皮肉が効いた感じのエンディングにするか、暴力描写を減らして家族の絆かご近所さんとの絆っぽいところを描くと深い作品になったのではないかと思います。
ただ、いずれにせよ個人的にはとても好きな作品です。
アメリカ社会を風刺
映画パージはアメリカの行き過ぎた資本主義や弱肉強食の社会への批判が含まれていると思われます。
金持ちは鉄の壁を家の周りに轢いて、自分たちの財産と命を守る、そして気まぐれで出かけた金持ちによって、社会的弱者(パージの中ではホームレス)は何もできずに死んでいくのです。
パージが非常識な制度だと単純に批判することは簡単です。でも現実に実質的に同じことが世の中でも起きているのでは?今もどこかで職を失って路頭に迷って死んでいる人たちがいるのでは?富裕層によって間接的に社会的弱者は死んでいくのです。
人の根源をうまくつく良作
この作品は、人を殺すことに焦点があるのではなく、人を救うところに焦点があります。
ホームレスが逃げ込んだ一家はとても難しい決断をすることになります。
救いの手を差し伸べるのか、自分たちを守るのか。ホームレスは富裕層の子供を助けるのか、自分を守るのか。
互いに相手を思いやりながらギリギリのラインで12時間が過ぎていきます。それは人間として最後捨ててはいけないラインと親として譲れないラインを見事に表現している作品です。
最後に
バイオレンス映画としてはハラハラドキドキしながら見ることができます。イーサンホークの名演も本作をもう1ランク上に作り上げています。
パージはシリーズでも出ていますので興味のある方はぜひご覧ください。
ただし、この後のパージはやはり殺し合いが中心で、社会的メッセージは少しづつ少なくなっていきます。