まず大前提として映画シャイニングと小説のシャイニングは全く持って別の作品になっているということです。
小説は当然スティーブンキングですが、映画はキューブリックが作っており、キューブリックの独自の解釈が大分入っているので原作と呼んでいいのか疑問なくらいです。そしてさらに重要なことは小説と映画ではその情報量が違うため映画については大分あいまいな部分が出ています。
今回はそんな映画シャイニングを理解するためネタバレを多く含みながらあらすじからラストの解説まで徹底的に考察していきたいと思います。
シャイニングのあらすじ
小説家でアルコール依存症を患っているジャック・トランスは生活費を稼ぐために妻のウェンディ、一人息子のダニーを引き連れて冬の間の高級ホテルの管理人をすることになります。ホテルの名前はオーバールック・ホテル。
支配人のアルマンによると、このホテルは前管理人のチャールズ・グレイディが、孤独に心を蝕まれたあげく家族を斧で惨殺し、自殺したといういわく付きの物件と語るが、ジャックやウェンディは気にも留めず、管理人を引き受けます。彼らの息子ダニーは実は超能力を持つ少年であり、このホテルの違和感をいち早く感じ取っているのでした。
ホテル閉鎖の日、料理長であるハロランはダニーとウェンディを伴って、ホテルの中を案内してくれます。自身も「シャイニング」の能力を持つハロランは、ダニーが自分と同じ力を持つことに気付き、「何かがこのホテルに存在している」「決して237号室に近づいてはいけない」と彼に語ります。そして、猛吹雪により外界と隔離されたオーバールック・ホテルで、3人だけの生活が始まります。
外界から隔離された状況と小説がうまく書けない状況にジャックは苛立っていました。いつしかジャックはいるはずのない人が見えるようになり、どんどん正気を失っていきます。
正気を失ったジャックはウェンディとダニーを殺そうと斧を手に襲い掛かってきます。ウェンディはジャックの異常に気づきダニーを連れて逃げ出します。そのうちにウェンディもいるはずのない人たちが見えるようになってきます。
彼女もまた正気を保つためにダニーとともにホテルを脱出することを決意し、雪上車に乗って逃げ出します。一方のジャックはホテルの外にある巨大迷路に迷い込み一人孤独に凍死するのでした。
ホテルの展示部屋には「1921年7月4日」のオーバールックホテルの舞踏会を記録したモノクロ写真にジャックと瓜二つの男が写っている事が映し出されるのでした。
シャイニング徹底解説
早速シャイニングの世界を知っておかないといけない大前提を書いていきます。初めに書いた通り映画では確定的な事実が述べられていないので今回は私の個人的な解釈を書いていきます。
シャイニングとは
シャイニングとは超能力のことです。作中ではダニーがその能力を持っており、未来が見えたり、死人が見えたり、テレパシーが使える能力のことを指します。
ダニーだけでなくホテルのハロランもその能力を持っておりダニーに話しかけてきます。
またシャイニングの続編である「ドクター・スリープ」では多くのシャイニングの持ち主が現れますので決してダニーだけの能力でないことがわかります。
オーバールックホテルは結局何だったのか
一言で言えばあの世とこの世が最も近い場所、と言えます。
他のブログなどではこれを例えて「鏡」と表現しています。ホテルの設備がほぼすべて左右対称のシンメトリーで描かれ、双子が現れ、極めつけは完全シンメトリーの庭の迷路です。鏡になっていることが重要というよりは、あの世とこの世の境目が曖昧になる場所こそがこのオーバールックホテルなのだろうと私は理解しました。そうすると多くのことが理解できるようになります。
REDRUMとMURDER
ダニーが書いたREDRUMという文字が反転するとMURDERとなりますが、これはあの世とこの世のミラーの関係にある世界を如実に表しています。
ホテルの亡霊たちは何者か
ホテルの人たちというよりはあの世の人たちというのが一番わかりやすいかもしれません。
次作のドクタースリープでもオーバールックホテルは出てきて、しかもその住人たちも出てきますが彼らは生きている人間の生気(ドクタースリープ内では「スチーム」と呼ばれている)を求めてきます。つまり彼らの目的はウェンディとダニーの生気だったのかもしれません。そしてあの世の黒幕は誰だったのか。それこそが元管理人チャールズ・グレイディ=ジャックだったと考えられます。
チャールズ・グレイディ=ジャック?
一番の疑問であるラストシーンでジャックが1921年の写真に写っています。つまりジャックはホテルにより狂気を受けた被害者ではなく、ホテル側の加害者であることがわかります。もっと正確にはあれはジャックではなく、前の管理人のチャールズ・グレイディと思われるのでチャールズ・グレイディ=ジャックという構図が成り立ちます。この世でジャックと呼ばれる人間はあの世でチャールズ・グレイディその人なのです。酔った勢いで家族を惨殺したグレイディがこの世にジャックとして転生した目的はただ一つ。
それはあのホテルに生きた人間を連れてくることです。
ジャックの本当の目的
まとめるとジャックは元々が普通の存在ではありません。自ら望んでか望まずか彼の目的はホテルで待つ飢えたあの世の住人のために生きた人間の生気を提供するために連れてくることなのです。ちなみにチャールズ・グレイディとジャックの切り替わるスイッチはお酒です。バーでバーテンダーにお酒を勧められるシーンがあります。実はあれは次作のドクタースリープでも重要なシーンでお酒を飲むことであの世とこの世の境目が曖昧になるのです。
最後に
シャイニングは曖昧な部分が多い作品としてとても議論の多い作品です。
私の意見もあくまでも一つの意見です。キューブリック自身はジャックは転生した存在と言っているそうなのであながち間違っていないかもしれません。あなたはあの最後の1921年の晩餐会の写真をどう思いましたか?
シャイニングが面白かった方はさらに続編としてドクター・スリープが公開されていますのでぜひご覧ください!