MAMAのキャスト・スタッフ
監督 アンディ・ムスキエティ
脚本 ニール・クロス(英語版)
アンディ・ムスキエティ
バルバラ・ムスキエティ
原案 アンディ・ムスキエティ
バルバラ・ムスキエティ
原作 アンディ・ムスキエティ
『Mama』
製作 バルバラ・ムスキエティ
J・マイルズ・デイル
製作総指揮 ギレルモ・デル・トロ
アナベル – ジェシカ・チャステイン(魏涼子)
ルーカス / ジェフリー – ニコライ・コスター=ワルドー(桐本琢也)
ヴィクトリア – ミーガン・シャルパンティエ(清水理沙)
リリー – イザベル・ネリッセ(佐藤美由希)
ドレイファス博士 – ダニエル・カッシュ(菅生隆之)
ママ – ハビエル・ボテット
MAMAのあらすじ
精神を病んでしまった投資会社役員のジェフリーは幼い娘ビクトリアとリリーの二人を連れて森の奥の小屋で一家心中しようとします。拳銃を構えた彼ですが、姿の見えない何かに襲われて彼だけ死んでしまいます。
それから年月は経ち、事件も忘れ去られそうになったころ。ジェフリーの弟のルーカス(ルーク)はいまだにジェフリーとその子供たちを探していました。ある日、例の小屋で姉妹が生きていることがわかるとルーカスは恋人のアナベルとともに二人を引き取り、ドレイファス博士と協力しながら彼女たちを育てていくことにします。
はじめ二人は野生児となり、意思疎通ができませんでしたが、徐々にルーカスたちに心を開いていくようになります。特にビクトリアは失踪時もすでにある程度の年齢だったことから言葉をしゃべり感情を持ち、スプーンやフォークを使い、ベッドで寝るようになります。しかし、リリーは失踪時に幼かったこともあり、いまだに虫を食べたり奇行を繰り返していました。
2人は失踪時に孤独に耐えるために「ママ」という虚像を作ったと博士は考えました。実際2人は時々いるはずのない「ママ(MAMA)」を家の中で呼ぶのでした。
しかし、次第にアナベルと博士は姉妹のいる家に得体のしれない何かがいることを感じ始めます。そんな矢先、ルーカスが階段から転び重傷のため入院、アナベルは姉妹との3人での生活を余儀なくされます。
博士はビクトリアが語る「MAMA」があまりにも具体的であることから実在の人物ではないかと思い、近隣での女性の精神異常者を調べていました。
すると湖の近くにかつて精神病院があり、そこに入院していたイーデス・ブレナンという女性がビクトリアの語る「MAMA」にぴったりと一致したのでした。彼女は一人の子供を産んだが、精神疾患が原因で子供を取り上げられました。子供は孤児院で育てられましたが、彼女はあきらめきれず病院を抜け出し修道女を殺害後、子供を抱きかかえて湖に逃げます。追い詰められた彼女は子供を抱きかかえたまま高い崖から湖に飛び込みます。しかし、その時に子供だけ木の枝にひっかかり彼女だけが湖に落下し死んでしまったのでした。
博士はその女性こそが「MAMA」の正体であり、姉妹にとりついていることを確信します。
結末ラスト
博士は自らの仮説を確かめるために姉妹が見つかった山小屋を訪れました。しかし、そこにいたMAMAに殺されてしまいます。
一方、アナベルは自らの不安を博士に相談しようと彼の研究室を訪れます。連絡がとれないことを不審に思った彼女は博士の資料を見て、MAMAの存在を知ります。すべてを理解した彼女が家に戻ると叔母のジーンが家にいました。彼女はすでにMAMAに乗っ取られており、姉妹を連れていってしまいます。
アナベルは姉妹を助けるために山小屋へ向かいますが、途中運よく病院を抜け出したルーカスと合流します。
MAMAはあの崖で起きたことを再現し、子供を手に入れようとしていました。そこにはリリーとビクトリアがいましたが、MAMAに従順なリリーと裏腹にビクトリアはMAMAと一緒にはいかないことを選択します。崖から落ちたMAMAとリリーは無数の蛾となって散っていくのでした。
MAMAを120%楽しむネタバレ解説
題名からも想像どおりの子供を失った母親の霊のお話。
海外ではどれくらいメジャーなのかわかりませんが日本では子供を探し歩く幽霊の怪談話(子育て女、飴を買う女など)は数多くあり日本人にとっては子供を失った女が悪霊化して悪さをするのはなじみのある設定なのでしょう。
今回解説するのはMAMAの悪霊のほうではなく、生き残った二人の姉妹、リリーとビクトリアについてのお話です。
二人は姉妹であり同じ境遇にありながら、最終的にリリーはMAMAとともにいき、ビクトリアはアマンダとともに生きる道を選びます。彼女たちの間にあった違いは何だったのでしょうか?
リリーとビクトリアの年齢の違い
1つの大きな違いは姉妹の年齢です。ビクトリアはすでに言葉をしゃべる年齢で連れ去られており、ある程度の年齢でしたが、リリーはまだ赤ん坊だったため、MAMAの影響を大きく受けたものと思います。このMAMAを見たときに始め思ったのは「オオカミに育てられた野生児のアマラとカマラ」です。
アマラとカマラ
アマラとカマラは現在の西ベンガル州ミドナプール(Midnapore)付近で発見され、孤児院を運営するキリスト教伝道師ジョセフ・シング(Joseph Amrito Lal Singh)によって保護、養育された。シングは、2人が幼少時に親に捨てられた後オオカミに育てられた野生児だと主張し、文明から切り離されて育てられた子供の事例として有名な逸話となった。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9E%E3%83%A9%E3%81%A8%E3%82%AB%E3%83%9E%E3%83%A9
姉のカマラは8歳、妹のアマラは1歳半だったこともあり、アマラはその後社会になじめず病死、カマラはその後何年かかけて言葉をしゃべり2足歩行をしたといいます。このように年齢によって野生から社会に戻ってくることへの影響の受け方はかなり違うように思います。
視力の悪かったビクトリア
もう一つビクトリアがMAMAの影響を大きく受けなかったのは視力も考えられます。ビクトリアは近眼で眼鏡をかけていました。発見当時眼鏡をかけていなかった彼女はおそらくMAMAをその目で直接は見れなかったものと推定されます。そのため、ビクトリアのほうがMAMAの呪縛から早くに開放されたのものと思われます。
また、メガネは科学の象徴でもあるので、人間社会へのビクトリアの復帰を大きく後押しする象徴として映画でもそのシーンが印象深く描かれています(ビクトリアがはじめてルーカスと会ったとき)
蛾を食べ続けたリリー
MAMAのシンボルといえば蛾でした。彼女は実体がガスのようにないのですが、彼女の身体からは無数の蛾が飛んで回り、リリーはアナベルたちの目を盗んではそれをむさぼり食べていました。
この蛾が何を表しているのかは作中で明示されませんが、おそらく母親が幼い子供に与えるものといえばほぼ間違いなく「母乳」を象徴しているのではないかと考えられます。
この点やはりリリーのような幼い子がMAMAのとりこになり、ある程度大人のビクトリアは蛾を口にすることがほとんどなかったのはそういう理由かと思います。
ちなみに千と千尋の神隠しで八百万の神の世界のものを食べるとアチラの世界に馴染んでしまうというのが日本では信じられてきました。リリーにとってMAMAの蛾を食べることはMAMA自身の支配をより高めるために非常に重要な儀式であったと考えられます。
最後に
いかがだったでしょうか?MAMAという作品はホラーという恐怖がある中で母親の深い悲しみとそれに依存する姉妹のなんともいえない関係が描かれている作品です。
さすがはギレルモ・デルトロが製作にかかわっているだけありますね。ちなみに私はMAMAも怖かったですが、リリーの演技もとんでもなく秀逸だったと思っています。蛾をむさぼり心を殺されたような演技は実は裏のヒロインだったと思っています。