映画ゴーストランドの惨劇のネタバレ解説・感想【必ず騙される】

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ゴーストランドの惨劇の評価

★★★★☆

気鋭パスカル・ロジェ監督の作品です。

「マーターズ」など残虐描写で有名な作品の監督で、今回も女子供が暴漢に襲われるシーンが満載です。

展開はお見事、完全に騙されました。

ホラーとスリラーのいいところを掛け合わせています。

また人形もののホラーとしてもかなりクオリティが高いです。

カラクリ箱の人形が怖すぎますね、ポリーンのおばさんもいい趣味しています。

暴力描写に慣れている人にはおすすめの映画です。

ゴーストランドの惨劇のあらすじ

シングルマザーのポリーンは双子の姉ヴェラと妹のベスとともに人里離れた叔母の家に引っ越してきました。快活的で元気な姉と対照的にベスは往年のホラー小説の巨匠ラブクラフトに憧れる小説家を夢見る少女でした。

引っ越したその日の夜、大男と女装した男の二人の暴漢がポリーの家に押し入ります。泣き叫ぶ娘たちを必死に守ろうとするポリーンは犯人を殺してしまいます。

それから何年か後、ベスは家を出て小説家となり「ゴーストランドの惨劇」というホラー小説が大ヒットしました。

優しい夫とかわいい子供、小説家の夢をかなえたベスですが、時々16年前の惨劇を思い出します。

そんなある日電話が鳴り姉から「ベス 戻ってきて」という電話を受け取り、急遽ベスは実家に戻ることにします。

そこには元気な母親と16年前のトラウマにとらわれ続け体中が傷だらけの変わり果てたヴェラの姿がありました。

ヴェラの面倒を見るベスですが、この家では突然叫び声が聞こえたり、人形が動いたり、誰かの影が見えたりと不思議なことが起こります。

ある夜「助けてー」と叫ぶヴェラの元へ駆け寄ると彼女が人形のような化粧をされ、手錠で壁につながれています。

暴れるヴェラを抑えきれないベス。今度はヴェラが誰かに殴られたり、指を折られたりします。

混乱するベスはポリーンに助けを求めますが、ポリーンは「ヴェラの言うことは聞いてはいけない」と言い、家の外へ出て行ってしまいます。

混乱するベスでしたが、突然どこかから「姉は遊びつくしたから、次はお前だ」という声が聞こえます。

すると突然ベスは目を覚まします。

ネタバレどんでん返し

目覚ましの音で目覚めたベスは傷だらけ、顔は殴られたようにボコボコです。

目の前にはヴェラがいて彼女もボロボロでした。

何が何だかわからないベスはヴェラに「どうしてこうなったの」と問い詰めます。

しかしヴェラは「やっと気づいた」と言い、これまでベスが現実逃避していたことを教えてくれました。

16年前のあの日、母が暴漢を殺したと思っていたのは、実は逆で暴漢が母を殺して、それ以来二人は暴漢に監禁されていたのでした。

ベスが戻ってきたことが嬉しいヴェラを見てベスも現実に気づきます。

暴漢たちが帰ってくると彼女たちは人形の衣装と化粧をされて乱暴されました。

今日はベスが大男に乱暴される日で、部屋に連れていかれます。

大男の変態的行動に耐えていたベスは一瞬のスキをついて大男を殴り倒し、ヴェラを連れて逃げ出します。

走って逃げた二人は途中警官に保護されますが、景観は暴漢の女装男に殺されてしまい連れ戻されてしまいます。

キャンディー屋の車に乗せられると2人は何とか脱出しようと試みますが、精神的に限界の着ていたベスはまた小説家として成功した世界に戻ってしまいます。

結末ラスト

小説の記念パーティに出席していたベスはラブクラフトと小説について語ります。母親も自分の傍で幸せそうにしています。

唯一ヴェラだけが記憶の片隅で連れていかれ窓の向こうでこちらに助けを求めています。

ポリーンがベスを止めようとしますが、彼女はヴェラのところへ(現実へ)戻る決心をします。

現実に戻ったベスはまさに今大男に乱暴されている途中でした。

必死に抵抗するベスに大男が乱暴します。

すると銃声がして大男が倒れます。続いて女装男も射殺されました。

ベスとヴェラを救出に来た警察官でした。

無事救出され、救急車に運ばれるベスですが、屋敷の2階に母が見えました。投げ捨てられたタイプライターを指さし、ベスもそれを見てうなづくのでした。

ゴーストランドの惨劇ネタバレ解説

ゴーストランドの惨劇はゴーストランドという場所が実在するわけではなく、主人公のベスが出版した本のタイトルです。

何しろゴーストランドと聞くと「オカルト系か悪霊系か?」などとミスリードされてしまうのですが、れっきとしたサイコパス変態監禁系映画です。

ゴーストランドの惨劇の由来

作中で「ゴーストランドの惨劇」の内容やタイトルの由来には一切触れられていません。これはあくまでも私の予想ですが、この「ゴースト」は母親のポリーンを象徴していると考えられます。ベスにとって母親が死んでから、現実逃避がはじまっていますが、死んだ母親が現れてくるのはまさにゴーストなのです。

ベスの空想シーン

この作品を面白くしているのはベスの空想シーンと暴漢がいる現実世界が混在しているところです。

基本的にベスがきれいな恰好、きれいな顔をしているシーンは全て空想です。

まず夫と息子と小説家として成功しているシーン、そして、作中後半で小説家のパーティのシーンです。

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多彩な伏線

この映画のパッケージにも書かれていますが、本作の魅力の一つに多彩な伏線が挙げられます。

鏡に書かれたヘルプミーの文字(実際に監禁場所にあった小物)

不気味な物音(暴漢たちが闊歩する音)

まずい安酒(おそらく暴漢たちの尿か何かを飲まされていた?)

小説家妄想の登場人物(夫もインタビュワーも小説家として成功したときの登場人物は全て監禁場所の壁に貼ってあったポスターなど、自分の子供がピエロの恰好をしていたのは人形部屋にあったピエロの人形から)

などなど後から見ると「なるほど」と思えるような伏線がいっぱいあります。

二度見ても楽しめる作品

まさにこの作品は二度見るとさらに発見がある映画です。

ベスからの「助けて、1人にしないで」の電話からはじまり、母親に通じない電話、作中ベスが母親と話すシーンでも

ベス『ヴェラをお母さんに任せっぱなしでごめんなさい。』

ポリーン『いいえ、あなたは自分の人生を歩んでほしいの』

一見よくありそうな会話ですが、これも今思えば完全に空想の中でのやりとりとして聞けば1回目に聞いた時よりもニュアンスが変わってきます。

また、ポリーンが「ヴェラはベスのことが欲しいのね」という作中のセリフも納得です。ヴェラはベスを現実世界に戻そうと何度も呼びかけていたので無意識化でのヴェラへの意識が生んだセリフだと思われます。

すべてを理解したあとでもう一度見ると「ああ、これはこういう意味だったのか」と納得してしまいます。

ゴーストランドの惨劇のネタバレ感想

この映画での最も注目すべきは監督のパスカルロジェでしょう。

ご存知悪名高いカルト映画「マーターズ」の監督としてこの世界ではとても有名な監督です。

「マーターズ」のネタバレ解説!最後の言葉は何?【ラストシーンのささやき】

 また女性をいじめてる

ゴーストランドの惨劇を見た時にまず思ったのが、「またロジェが女の子を痛めつけてる」ということです。

先ほどのマーターズでも二人の女性を徹底的に拷問にかけていましたし、今回も双子の姉妹+母親と相変わらずロジェは女の子をいじめるのが好きだな~というの第一の感想です。

通常一家が襲われる映画では女性だけでなく男性、夫であったり、兄弟であったりと、が出てくるのが通常だと思います。

女性だけにすると残虐性が増します。さらに、成人した女性ではなく、今回は大人と子供の中間です。ベスは初潮がはじめて来た日に襲われると言うこれも生々しいシーンで大変残虐的でした。

一方でこの監督は昔から女性への性的暴力の描写はほとんどありません。

あくまでも儀式的というか変態趣向的というか、今回も女性を人形のように扱っていたぶるという暴力的な描写はあったものの性的な描写はほぼ皆無でした。

一方で女性を失禁させたりと、あくまでも人格的な否定のシーンは多いので苦手な方は少し控えたほうがよさそうです。

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辻褄が合わないことの辻褄が合う

この映画の評価の高さはストーリーの構成にあります。

通常の悪霊系ホラーかと思いきや、実は夢オチや空想による二重三重の構造になっています。

これがただのホラーになってしまうと「事件があった家から出ようよ」とか「早く医者に見せなよ」とか余計な部分が気になってしまいますが、全て妄想であり、細かい辻褄が合わないことが後で「なるほどね」と全て持っていかれてしまうのです。

タイトルが秀逸

これは絶対ロジェ監督は意識していると思いますが、今回はタイトルにしてやられました。

ゴーストランドの惨劇」と聞くと絶対にみんな悪霊系だと思うはずです。

まずこのタイトルを聞いた人は「ああ、悪霊の出る島。通称ゴーストランドにいった人たちがひどい目にあう作品なんだろうな」ぐらいに思って見始めて、ヴェラを見た人たちが「これは悪霊の仕業や!」と思ったはずです。

ただ、実際はヴェラがまともでベスがおかしかったわけです。

つまり、入り口から錯覚した状態でスタートしてしまったがゆえに見る人たちはころっとロジェ監督に騙されてしまったわけです。これはお見事です。

最後に

ロジェ監督のゴーストランドの惨劇はホラー映画好きには満足できる内容になっています。女性が痛めつけられるシーンは衝撃的ですし、結構いたい描写もあるのでご覧になる方は自己責任でお願いします!