狼チャイルドの評価
★★★☆☆
シッチェス映画祭で2017年“シッチェス”映画祭批評家賞受賞&ロカルノ映画祭審査員特別賞受賞作品。
異色の狼男とその乳母の物語。ホラーというよりもファンタジー作品としての色合いが強く、不安定な人間関係を色濃く切ない展開です。
ハラハラドキドキを期待すると肩透かしを食らう作品です。
全体を通すと2時間を超え、前半が少し間延びしたわりにラストは「想像にお任せします」という余韻を残す終わり方で少し消化不良です。
狼チャイルドのあらすじ
クララは看護婦。住み込みで妊娠中のアナの面倒を見ています。
アナの実家は裕福ですが、ある日バーで出会った男性との妊娠で家を破門になり、一人で出産に備えていました。
傷つくアナの心の支えになっていったクララはいつしかレズの関係にもなってしまいます。
ある日、アナの出産の日が近くなると寝室でアナが叫びとともに絶命していました。
恐る恐る寝室に近づいたクララは狼人間の子供を見つけます。
その後クララは子供を連れて帰り、一人でその子を育てます。
大きくなったその子は満月の夜になると狼に変身してしまうのでした。
ある日、自分だけ満月の夜に出かけられないことを不満に思った彼は、家を抜け出し本当の父親を捜しに出かけるのでした。
狼チャイルドのネタバレ感想
2018年シッチェス映画祭の中で一際注目を浴びていたのが、この映画「狼チャイルド」。
狼人間の話にも関わらずどちらかと言えばしっとりとした悲しい雰囲気の予告編に加えて、B級映画にしては長い2時間越えの映画です。
文学的構成の映画
ホラー映画というジャンルを与えられながら恐怖よりも悲しい気持ちになるのはこの作品が文学的な要素を多分に含んでいるからでしょう。
脚本構成も前半はクララとアナの話、後半はクララと狼少年の話と完全に分かれており、章立ての小説を読んでいるようです。
ところどころミュージカルのような挿入歌も入り、それもかなり落ち着いた感じです。
このあたりがこの映画の評価をきっちりと二つに分けてしまいそうです。
ホラー要素の薄さ
結局のところ、評価の高い人⇒ファンタジー映画として◎、評価の低い人⇒ホラー映画として×、という評価になる作品でしょう。
個人的にはそういう整理をすれば「好きではないけれど、悪くはない」という評価になります。
ただ、そうは言ってもアナの出産シーンは壮絶なものですし、ところどころおどろおどろしい場面もあるのでそれなりに満足ではあるのです。
憎めない作品
この手の映画は「結局何が言いたい?」という消化不良のような形で終わるケースが多いのですが、それでも満足感がそれなりにある映画です。
一つは最後のクレジットが10分くらいあることからわかるようにかなり手のかかった作品です。
セットから、CG、衣装まで、特にちび狼のCGはかなり鮮明でハリウッド一流映画にひけをとらない出来ばえでした。
気になる結末ラスト
このラストも賛否両論でしょう。魔女狩りならぬ狼チャイルド狩りで村人が武器を片手に押し寄せてきます。
この後、彼らは戦うのでしょうか。それとも降伏するのでしょうか。
個人的には親子で逃げ出して別の街で幸せに暮らして欲しいなと思います。
最後に
シッチェス映画祭の作品にしてはやけにしっとりした真面目な作品だなという印象です。同時期で上映した作品だと個人的には怪怪怪怪物がおすすめです。