映画最悪の選択の評価
★★★★☆
冒頭誤って男の子を殺してしまい、そこからは泥沼の道を突き進むストーリー展開はまさに鬱展開そのもの。
救いのないこの物語は正直普通の人には大きな傷跡を残すことになるでしょう。
映画最悪の選択のあらすじ
マーカスは婚約中で今後子供が生まれる友人のヴォーンと独身最後の旅行として、狩りをしに田舎にでかけます。
酒場では地元の名士であるローガンに迎えられ、久しぶりに羽目を外す二人に若い女性のカラとイオナと知り合い楽しい時間を過ごします。
翌日二日酔いで体調がすぐれない状態のヴォーンでしたが、狩りにでかけます。途中自分の銃弾を持ってくるのを忘れたので、仕方なくマーカスの銃で狩りを行いますが、誤って鹿と間違って子供を射殺してしまいます。
慌ててかけよるヴォーンに近くにいた父親が激情してヴォーンの銃を取り上げ銃口を向けます。ヴォーンを守るためマーカスはやむなく父親を射殺してしまいます。
戸惑うヴォーンに対してマーカスは冷静に死体を隠し、アリバイを作るために別の狩場へ向かいます。
夜に街に戻った2人はローガンたちとディナーをしますが、上の空です。
夜も更けたころ、2人は死体を埋めるためにまた森に入りますが、死体を埋め終わったあと帰ってきたところを宿屋の息子に見つかってしまいます。
翌朝に早めに宿を出ようとしますが、カラの父親のブライアンがカラにコカインをやらせたあげくベッドをともにしたことに激怒し、車のタイヤを傷つけてしまい帰れなくなってしまいます。
同じころローガンの甥の親子がキャンプから帰ってこないことが話題になり、捜索隊が組まれることになります。
結末・ラスト
話の成り行きでヴォーンたちもやむなく捜索隊に加わります。
捜索隊の犬が何かを嗅ぎ当て、ローガンたちがその場を掘ると親子の遺体が見つかります。
ヴォーンたちは怖くなってしまい、逃げ出します。
ローガンはヴォーンたちを生け捕りにするように指示し、ヴォーンが捕まってしまいます。
ヴォーンはあらいざらい話し、ローガンたちは激怒します。
マーカスもついに捕まってしまい、ローガンたちは彼らを殺すかどうか仲間たちと話し合います。
話し合いの結果、ヴォーンがマーカスを殺せばヴォーンは見逃すと言う結論になりました。
戸惑うヴォーンでしたが、婚約者と生まれてくる子供のことを言われて、やむなくマーカスを殺してしまいます。
その後ローガンと口裏をあわせて、マーカスを殺人犯に仕立て上げ、彼は北へ逃げたということにしました。
妻に迎えに来てもらい帰宅したヴォーンでしたが、赤ん坊が生まれたあとも時々呆然とするのでした。
映画最悪の選択のネタバレ感想
スリラーとして終始ハラハラドキドキする展開で、最後はバッドエンドというか鬱展開ですので見る人を選びますがよくできている作品です。
終始転落人生
子供が生まれるという人生の絶頂期から、運が悪かったとしか言いようのない子供の射殺に始まり、1時間半ひたすらに人生を転落していく二人の物語は心をえぐります。
常に選んだ選択が、裏目に出てしまい、結果的に最悪のケースになります。
「もしあの時違う選択をしていたら」
誰もが思う、そんな希望を強く感じさせる作品に映画鑑賞中夢中になってしまいます。
原題「CALIBRE」=「最悪の選択」
原題は「CALIBRE」で邦題は「最悪の選択」です。
CALIBREには以下の二つの意味があります。
①銃の「口径」
②人としての「器」
銃の口径と言えば思いつくのは、ヴォーンが銃の弾を忘れてマーカスが「異なる口径には異なる銃弾は入れられない」といった言葉です。
あの日、もしヴォーンが自分の銃弾を忘れずに狩りに行っていたら。ヴォーンは自分の罪を自分で告白して、マーカスが自分の罪を逃れたいと思うことはなかったでしょう。
器はもちろん人としての器とすれば、自分の罪を認められるかどうかでしょう。
ヴォーンもマーカスも自分の罪を認めるだけの器があれば、それで終わったはずでした。常に二人は文字通り「最悪の選択」をしていってしまったのです。
本当の意味での最悪の選択
ヴォーンについての最悪の選択はやはりラストの選択でしょう。
何しろ他のは全て「事故」もしくは「正当防衛」だった一方で、最後にマーカスを射殺したのはまぎれもなく「自らのため」であり、それゆえに生かされたヴォーンは一生その罪の十字架を背負っていくことになります。
ラストで呆然としていたヴォーンはその罪の意識に起因しています。
格差社会の果てに
そして、この映画で忘れてはいけないのがローガンたち村人の存在です。
今回ローガンこそ難しい選択を迫られた人間の一人です。
もし、この村が普通の町であれば物語はそれほど複雑になりませんでした。
ローガンはじめ村人の中の根底にあるのは「街が廃れたのはよそ者のせいだ」というヒガみや妬みなのです。
それを象徴するかのようにマーカスの職業は「金融業・投資家」であり、お金を右から左に動かすだけで自分たちは儲かり、過疎地では村が廃れるという元凶を作っているような存在で、はっきり言って村人からすればはじめから「殺してやりたい」存在なのです。
そして、事件は起こります。まずは都会に憧れる女の子のカラが薬物をやってマーカスとベッドを共にし、父親のブライアンが激怒するきっかけを作ります。
さらに村人を誤って射殺する、という事件が起き、村人の怒りのボルテージは最高潮に達します。ほとんどが殺すことを望んでいる中で、ローガンだけは冷静に村人をいさめていました。
もし、ここで本当に殺人が起きてしまうと警察が押し寄せ、村自体の存続が危うくなるからです。
一方でリーダーにとしてローガンも村人たちが納得する結果を出さなければなりません。
ローガンにとってラストの選択を用意したことは「最悪」どころか実は「最高」の選択だったという皮肉も込められています。
最後に
誰にでもある「あの時ああしていれば」という後悔を掘り下げた良作スリラーです。
悪いことをしたら正直に告白するようにしましょうね。