縦の糸はホラー 横の糸はゾンビ
★★★★☆
ホラー映画が人を怖がらせるためだけに作られるのであればこの映画ほど怖い作品はありません。
低予算、地味な作りながら見る人間を驚かせ、怖がらせ、胸糞悪くさせる、そんな素晴らしい作品です。
作風はもちろんのこと話の展開も含めて基本文句ない作品です。
後半は少し間延びする部分があるのは残念ですが、最後まで胸糞展開でホラー好きにはたまらない作品となることでしょう。
高校生のローラ・バーンズはSNSに上がった自分の恥ずかしい動画で自殺をしてしまいます。しかも、それを動画配信サービスで生放送していました。
それから、時は過ぎ、ローラの親友だったブレアは彼氏のミッチ、男好きのジェス、ミッチの親友のアダム、コンピューターオタクでお調子者のケンたちとネット上で会話していると突然billie227という知らないユーザーが会話に加わってきます。
何とか追い出そうとする彼らでしたが、どうしても切れずに仕方なくbillie227を無視して、さらに友人のヴァルをチャットに招待して楽しんでいました。
すると突然のヴァルの恥ずかしい写真がジェスのSNSに投稿されます。
ヴァルは怒り狂いますが、それが実はbillie227の仕業だとわかり、さらにそのアカウントはローラ・バーンズのものであるとわかります。
その後もSNSはすべてbillie227に乗っ取られ、彼女たちはbillie227のいうことを聞かないと死ぬと脅されるのでした。
そして彼女の言う通り、一人また一人と友人たちが死んでいき、ついに彼女は彼らに「したことあるなしゲーム」に参加することを命じてきます。そのゲームの中で、4人が抱えていた秘密が次々と暴かれていくことになりました。
映画アンフレンデッドは間違いなく胸糞ホラーでしょう。
ホラー映画にとって良質なものはこれまでは実話であることが多かったんのですが、最近のホラー映画ではまさに臨場感がその出来を左右してしまうと思っています。
ホラー映画の撮影手法としてこの10年で最も偉大だと思うのはPOV(Point of View Shot)というカメラの画面を通して映画を見せる作品だと思っています。
クローバーフィールド、パラノーマルアクティビティ、ダイアリーオブザデッド、RECなど数々の有名作品がPOVで撮影されてきましたが、次なる世代と言っていいのが、このPCOV(PC of View Shot)でしょう。ちなみにPCOVは勝手な造語です。
この手法によるとPOVの時よりもカメラのブレや「なんでこんなピンチの時にカメラ回してるの?」と言う違和感を排除して、主人公が自ら行動しているかのように映画作品に臨場感を与えます。
最近ではこのアンフレンデッドの影響を受けて、サーチという映画もPCOVで名作を作り上げています。
【SNSは怖い】映画サーチ/searchの評価・あらすじとネタバレ感想
PCOVだけがこの作品の売りではありません。実はPCOVの珍しさに隠れて見える、友人たちの残酷な真実こそがこの物語の最高のスパイスです。
仲がいい友達もSNSで毎日顔を合わせている友人同士が時に裏切り、時に傷つけあうのがこの作品の醍醐味であり、90分の間で日常を一気に非日常に変えていきます。
最近の作品ではトウルース・オア・デアなどもこの手の展開を見せており、作中にもあった5本指を折っていくような展開はスリルと互いの裏切りがドキドキな胸糞展開で、ホラー好きにはたまらないでしょう。
真実か挑戦か!映画トゥルース・オア・デア~殺人ゲーム~の評価・あらすじとネタバレ感想
友人たちの裏切りがもういい意味でヒドい。
友達の悪口をSNSで書くとこから始まり、卑猥な動画を撮り、親友の女を寝取り、女は彼氏を裏切る。
もはやここまでやって「私はそんな悪いことしてない」なんて言い切るところが、完全に悪役街道を突っ走てしまい、死ぬシーンを見ても「しょうがない」と思ってしまうくらいの胸糞展開でした。
そしてさらに評価したいのが死のシーン。残酷な殺し方が多くなっている中でもSkypeの通信精度の粗さを逆手にちょい見せで、視聴者を驚かせます。
しかもそのシーンがくどくないから、すぐ次の画面に戻っても問題なくストーリーに戻ってこれるんですよね。ここまで計算して撮影しているなら本当に大した監督ですよ。
文字通りSNSが人を殺す映画でした。
まずブレアとミッチが撮った動画がSNSを通じてローラを殺します。
死んだローラはSNSを通じて彼らに仕返しをします。
そして、作品としてSNSのいじめのシーン(ローラが脱糞するシーン)が結構生生しく映し出されます。
SNSが人を殺すというのはこの映画のテーマにあり、監督自身もこう述べています。
現代のいじめの性質は私の子供の頃のそれから変わってしまいました。インターネットがあるために、いじめっ子たちは放課後も被害者をいじめ続けることが可能になったアンフレンデッド – Wikipedia
現代のいじめの性質は私の子供の頃のそれから変わってしまいました。インターネットがあるために、いじめっ子たちは放課後も被害者をいじめ続けることが可能になった
アンフレンデッド – Wikipedia
まさにその通り、昔のように殴る蹴るというような加害者にも痛みを伴ういじめから
、ボタン一つでしかも匿名で相手を攻撃できるSNSでのいじめは精子的なダメージも大きく、被害者の苦痛もかなり大きいものでしょう。
そんなSNSの怖さを、SNSが殺すという大胆な展開で教えてくれる作品でした。
まさにアンフレンデッドという名前の通りの作品でした。
作中でFacebookの友達申請をアンフレンデッドに切り替えてましたが、残念ながら、あのいじめ動画をブレアが撮影していた時点で彼女はローラのアンフレンデッドに他なりませんでした。
彼女の死因は自分自身の罪を認められなかったことによるもので、痛いほどの自業自得でした。