映画テルマの評価・あらすじとネタバレ感想【超能力少女の苦悩と解放】

テルマ
テルマ

テルマの評価

★★★★★

久しぶりに重厚な作品を見ました。

最近は悪霊系のホラーが続いていたためこういう哀しい北欧ホラーはホロっときてしまい心をきつく締め付けます。

いいホラーというのは単純にホラーとジャンルだけに定めたくなく、ヒューマンだったり、青春物語だったり、そういった要素が怖いけど哀しい、そういう重厚な思い出を作ってくれるんですね。

ラストに向けて一瞬たりとも気の抜けない作品だと思います。

テルマのあらすじ

テルマはオスロの大学に通う女の子。彼女はこれまで信心深く厳しい父親のトロンに育てられ、幼いころの記憶がなくなっていました。

大学でアンニャに出会い、彼女の自由奔放の生き方を見ているといつしか彼女を好きになってしまいます。

厳格な家に生まれたテルマにとって女性への恋愛は赦されるものではなく、葛藤に苛まれる彼女でしたがその頃テルマの周りで不思議なことが起き、しばしば発作が起きることが多くなります。

医者にかかったテルマははじめ癲癇を疑いましたが、癲癇ではなく、心因性の発作であることがわかります。

その頃テルマとの仲がこじれてしまったアンニャが行方不明になってしまいます。

そんなことは知らず自身が昔患った精神疾患を聞くために父トロンのもとに向かうテルマでした。

テルマの結末ラスト

父トロンはテルマの幼いころの真実を語ってくれました。

それは彼女が実は超能力の持ち主で、自分が望むとおりになんでもできる能力があるというのです。

テルマは幼いころ、自分の弟を湖で溺れさせたことがありました。

そして、テルマは父トロンがこれまで自分にしてきたことや同じ能力を持つおばあさんを薬漬けにした真意をしります。

次の日、テルマは父トロンを焼き殺し、母親の足を治して大學に戻ります。

何もなかったかのようにアンニャとともに大学生活に戻るのでした。

テルマのネタバレ感想と見どころ

北欧発の超能力少女の映画、それがテルマです。

人が超能力を持つと幸せになるケースと不幸になるケースがあります。今回のテルマはこの後者のパターンです。

テルマの超能力

幼いころから思ったことが何でも叶ってしまう力を得たテルマ。ジャンルが違えがスーパーヒーローになれるかもしれないでしょうが、兄弟すぎる力というのは人を不幸にするものだと個人的に信じています。

テルマもその一人で力を制御できない彼女は幼いころ弟を殺してしまい、その後も周りの人を危険にさらします。

似た作品で言えば、スティーブンキングの「キャリー」などはその類ですが、北欧らしい静かな物語の展開と冷酷なまでにドライな展開がホラー映画として磨きがかかっています。

ハリウッドでは主人公の嫌いな人間が死に、北欧映画では主人公の愛する人が死にます。それがホラーと相交わったときに哀しい重厚な作品ができるのです。

テルマの不幸

テルマの不幸は超能力を手に入れたことではないと思います。

彼女の真の不幸は、能力を手に入れたにも関わらずその真実に彼女含め大人になるまで誰も向き合わなかったことでしょう。

特に両親はひどいもので、信心深い両親は超常的能力を知って、ただただ祈らせることだけを教え、強力な薬で薬漬けにし、ときには拳銃で娘を殺すか迷うことすらありました。母親に至っては正直自殺を図ること=育児放棄のため向き合う以前の問題です。

 ラスト結末の考察

最後テルマは夢の中で父親を焼き殺してしまいます。

そして、その後当然のように母親を歩けるようにし、アンニャを生き返らせます。

それどころか、まるで開始30分後以降何もなかったかのようにアンニャとお互いのファッションを誉めあい当然のように日常に戻っていくのです。

果たしてこのラストをあなたはどう見ましたか?

テルマ
テルマ

テルマのハッピーエンド

テルマの表情をみれば一目瞭然、このすがすがしい表情には一点の後悔すら見えません。

ラストでテルマは全てを受け入れます。

それまで厳しい父親と信教と薬にによって自分が抑圧されてきました。

はじめて好きになった人は女性ということも人に話せるものでなく、挙句の果てに過去には実の弟を殺し、今まさに父親も焼殺したばかりです。

それでもテルマは全てを受け入れることにしたのです。

通常の人間は世の中を家族だったり、友人だったり、恋人だったり、相手との関係で自分を定義しています。

しかし、テルマの場合、自分の思う通りに相手を動かしたり、世界を動かすことができるのでテルマの世界では、テルマか「テルマ以外」に存在しません。

そう考えれば弟や父親を殺したのは自分にとって厄介な存在であったから(父親は将来自分を薬漬けにして病院に送るから)消すことにし、自分の愛するアンニャは傍に置くことにします。目の前にいる歩けない女性を助けたのは、母親だからではなく、身体が不自由であったから助けたにすぎないのでしょう。

彼女はそう割り切って、全ての世界を受け入れたのだと思います。だからこそアンニャと歩く彼女は満面の笑みなのです。

映画テルマの最後に

ノルウェー映画の重厚な作品に大満足です。

映画としての出来は素晴らしいです。テルマ役の女性のサイコパスなところはもちろんのこと、アンニャも操り人形をよくぞ演じ切りました。

そして何よりこの映画の最大の見どころは焼殺される父親のシーンです。

おそらくこんなに美しく怖いシーンは映画史上ないでしょう。