死霊館のシスターの評価
★★★☆☆
死霊館シリーズの中でははじまりの物語として描かれる本作、死霊館のシスター。
アナベルシリーズで突然出てくる最強の悪魔ヴァラクの誕生の秘密を描いた本作は、成功した部分と失敗した部分が色濃く出てくる結果平均的な作品となりました。
特に私も含めて死霊館シリーズを愛して見てきた人たちにとっては期待が大きかった分、それに応えた部分と応えきれなかった部分がくっきりと分かれた作品でした。
死霊館のシスターのあらすじ
ルーマニアの修道女で2人の修道女が犠牲になり、一人が自殺をしました。事態を重く見たヴァチカンは調査のためバーク神父と見習いのシスターアイリーンを派遣します。
2人は村の案内をしてくれたフレンチーとともに村のはずれの聖カルタ修道院を目指します。
そこは昔公爵が悪魔を召喚した場所でしたが、当時ヴァチカンの使者によりキリストの血で地獄の扉を封印されていたのです。
3人は修道院でヴァラクという悪魔がいることを突き止め再びキリストの血とともにヴァラクを倒すことを実行に移します。
完璧な悪魔 ヴァラクを解説
かつてここまで印象的な悪魔がいたでしょうか。
悪魔というのは仰々しい見た目にいかめしい角や牙が生えているものですが、このヴァラクはなんと後ろから見ると修道女の姿をしているではありませんか。
修道女とは、清らか、清純、真面目、正義、穢れなき、というまさに正義の象徴という存在が最強の悪魔の姿をしているのでこれがまた皮肉にも神々しいのです。
その完璧さを象徴するのがやはりこのポスターでしょう。
見事に陰と陽が交差するこのポスターは私がかつて見た中で最高のポスターでしょう。
なぜヴァラクはシスターの恰好?
この作品は死霊館シリーズ最高の悪霊ヴァラクを掘り下げるための作品です。
ヴァラクはかつてルーマニアの貴族が悪魔の儀式で生み出した存在でした。その後彼は十字軍により捕まり、悪魔もキリストの血により封印され、貴族の城は修道院となりました。
しかし、その後戦争による空爆で修道院が損壊、悪魔が復活してしまいました。
作中でも「ヴァラクは人に憑依しないと動けない」とあったように、修道院だったためヴァラクはそこにいた修道女に憑依したため修道女の姿をしているものと考えられます。
なぜアメリカにいるのか
元々ルーマニアにいたヴァラクがなぜアメリカ大陸まで渡ってきたのでしょうか。
それはフレンチーがカナダ人であり、ラストで「ここはこりごりだから、親父のやっていたトマト農家を継ぐ」と言っていたことと、映画内でヴァラクにより憑依されていたことから、フレンチーを媒介して越境したものと考えられます。
死霊館のシスターのネタバレ感想
死霊館シリーズの最新作にして最古の作品です。
作品の流れとしては
『死霊館のシスター』
『アナベル 死霊人形の誕生』
『死霊館』
と続く作品で死霊館シリーズの中で出てくるヴァラク誕生の秘密が明かされるファンには大事な作品の位置づけになっています。
ファンには嬉しい設定
細かいところでもファンサービスがうかがえます。
まずは主人公修道女アイリーン演じるタイッサファーミガーはなんと、死霊館シリーズでロレインウォーレンを演じたヴェラ・ファーミガーの実の妹ということ。
はじめみたときにやけに似ているな~と思ったのは間違いなかったということですね。
そしてさらに、死霊館ファンならよく知るウォーレン夫妻が講義するときに出てくる例のアノフィルムにつながるラストは本当に嬉しいですね。
残念な点も
さて、一方でシナリオには残念な点も多くあります。
一つはヴァラクがそれほど生い立ちに魅力がない点です。
なんとなく修道女の恰好をしているのはわかりましたが、やはり自殺した修道女の怨念など感情移入できるところが少し欲しかったという部分もあります。
単調なストーリーとフィクション性
いまいち物語の迫力に欠けるのももったいないです。
特に昔のルーマニアという「吸血鬼もいたでしょ」「あんな時代何でもありでしょ」という今から見るとかなり現実味を感じない時代設定がどうしてもただのフィクションの物語になってしまっています。
さらに単調なストーリーがとにかく映像と音で相手を驚かすお化け屋敷系の映画になってしまっているのは、死霊館シリーズとしては残念です。(死霊館シリーズでなければ上出来な作品になるはずなのですが)
最後に
死霊館シリーズとしては残念な点もありましたが、やはりファンとしては見逃してはいけない作品だと思います。
時代設定は一番古いものですが、まずは他の死霊館シリーズを見てからこの死霊館のシスターを見ることをおすすめします。