クワイエット・プレイスの評価
★★★★☆
音を出すと死ぬ、という極限状態を生き抜く映画クワイエットプレイス。
スリラー的な要素、ホラー的要素、家族愛の要素、多くの要素が多面的に交わり、人間の絆の強さを感じられる良作です。
続編も2020年に制作される予定ですので楽しみです。
クワイエット・プレイスのあらすじ
時は2020年、世の中は化け物の襲来で荒廃した世界でアボット一家、父親のリー、妻のイブリン、長女のリーガンと弟のマーカス、末子のビューはひっそりと暮らしていました。
化け物は物音に反応して、人間を襲ってくるため音を立てない生活を余儀なくされていました。
ある日街に物資を取りに行った帰り、末息子のビューが物音を立ててしまい犠牲になってしまいます。
それから、家族関係はギクシャクしてしまい、特にビューに音の出るおもちゃをあげてしまったリーガンは父親を避けるようになってしまいました。
そのうちイブリンが妊娠し、出産が近づいたある日、リーがマーカスと魚を捕りにいっている間に産気づいてしまいます。
しかも悪いことに、音を立ててしまい化け物たちがイブリンたちの家に襲ってきました。
一家は化け物を撃退するために死闘を繰り広げます。
クワイエット・プレイスのネタバレ解説・感想
クワイエット=静かにする、プレイス=場所、まさにクワイエットプレイス=静かにしていないといけない場所、という緊張感あふれる映画でした。
終末の世界と思われるクワイエットプレイスの世界では物音を立てると謎の化け物に襲われてしまうというお話です。
○○してはいけない
○○をしてはいけない、という「見るなの禁」系の映画が最近何かと話題に上がっています。
少し前は、目の見えない異常者の家に忍び込み、音をするな、息すらするな、という禁止を強いた良作、映画ドントブリーズ。
ネットフリックスで見てはいけない、見たら即死、という本作の設定に近似している作品、バード・ボックス。
映画バード・ボックスのあらすじとネタバレ考察【それの正体を解説】
これに続く、作品がこのクワイエットプレイス。2017年2018年と立て続けにこういったシチュエーションスリラー(本作はややモンスターパニックぽいが)の良作がリリースされています。
ホラーの新しい流れ
かつてのホラー映画とは1970年代からジェイソンのような特徴的な殺人鬼やモンスターが暴れたり、悪霊が悪さをするなど、非常にシンプルな人間を脅かす設定が主流でした。
2000年代にSAWのようなスリラー系の映画が脚光を浴びるようになります。
そして、今ホラーとスリラーを足した映画、それがクワイエットプレイスです。
喋っていはいけない状態というスリルと襲ってくる化け物から逃げるというホラー的要素を両方融合させたのが新しいクワイエットプレイスという映画の楽しみ方です。
映画館でこれを見た人は固唾をのんで見守ったことでしょう。
まさに動画配信サービスがどんなに進んでも人が映画館で映画を見るべき映画と言えるでしょう。
家族愛が大きなテーマの映画
実はクワイエット・プレイスのアボット夫婦とそれを演じたエミリーブラントとジョン・クラシンスキーは実生活でも夫婦なんですね。さらに言えば、ジョン・クラシンスキーはこの映画で監督も務めています。
作品から感じる、この映画として描きたかったのは実はホラーではなく、家族愛なのではないでしょうか。監督はわざわざ自分の妻をヒロインとして選んだのは、実在の家族愛をそのままこのクワイエットプレイスのフィルムに収めたかったのでしょう。
振り返ってみても、映画開始早々息子を失ってしまった夫婦の悲しみはそれは深いものだったでしょう、文字通り声も出ないほどショックだったと思います。
そして、それを乗り越えるために、夫婦が子供の死を悲しむ時間も惜しんで残りの子供たちを生かすために生きる必死な姿がそこにはありました。
「しゃべると殺される」というホラー的な設定ばかり目がいってしまいますが、この作品にはどんな時でも失われない親子と夫婦の家族愛のメッセージがメインにあるのです。
突っ込みどころは多い
一方で、本作クワイエットプレイスを低評価している人たちの意見も大変理解できます。
しゃべっていはいけないという、クワイエットプレイスの世界観はとても魅力的な一方で、そもそも化け物に対する対策が色々思いついてしまうのです。
例えば携帯電話と爆弾をとりつけて置いて、音を鳴らして爆発させればあっという間に倒せるのでは?とか。
防音ルームを作っておけば特に日常生活には支障がないのでは?とか。
滝ではしゃべれるのであれば滝の近くに洞窟やキャンプを張ってそこで生活をすればいいのでは?とか。
実は化け物に対する設定がザルな部分が多いため、それほど恐怖を感じないのです。
さらにクワイエットプレイスを批判する人の中にはこの妊娠の設定を指摘する人もいます。
確かに、声を出せない状況で今の家族すら守り切れるかわからない中で、赤ちゃんを育てるという決断はもってのほかでしょう。
クワイエットプレイスのメッセージ
それでもクワイエットプレイスの監督は妊婦と言う設定を選んだわけです。それは極限状態での家族愛を描くためだと思います。
しゃべれない世界でどうやって家族に愛を伝えるのでしょうか。耳が聞こえない娘に愛を示すのは、それでも伝えないと伝わらないということを揶揄しています。
最後の最後でリーガンは父親の愛情に気づくことができます。それは普段は自分に冷たい父親が自分のために一生懸命に補聴器を作ってくれていたこと、そして皮肉にも命をかけて守ることで、伝わらなかった父親の愛情を感じることができたのでした。
最後に
クワイエット・プレイスをただのホラーとしてみると確かに抜けや穴がある作品に見えてしまいます。
しかし、監督が自分の妻を使ってまで描きたかったのは単なる人が殺されるホラーではなく、極限状態で生きる家族の絆や愛だったのではないでしょうか。
そういう目で見ると、細かい世界設定よりも大きな気持ちでこのクワイエットプレイスを見ることができるのではないでしょうか。
ちなみにリーガン演じたミリセントシモンズは本当に耳が聞こえないらしいですのでやはり監督のクワイエット・プレイスへの意気込みを感じます。