ザ・リチュアル いけにえの儀式の評価
★★★☆☆
Netflixオリジナル映画「ザ・リチュアル いけにえの儀式」を見ました。
美しい森から不気味な森に様変わりする前半の展開はとてもよかったです。
まるで人食いの動物が出てきそうな中で、まさかの全員が異世界に迷い込んだような状況は見ていてワクワクしました。
一方で、後半の「これじゃない」感が非常に残念な作品でもあります。
リチュアル=宗教の儀式、ということでカルト集団のように連れ去られ、気につるされるいけにえの儀式は見ごたえがありました。
ザ・リチュアル いけにえの儀式のあらすじ
ルーク、ロバート、ドム、フィル、ハッチの5人は大学時代の仲間で仲良くお酒を飲んでいました。
次の旅行でどこに行くか話し合っていた彼らは、帰り道で寄ったコンビニで強盗に遭遇し、ロバートが殺されてしまいます。
ロバートの弔いもかねて彼らはロバートが行きたがっていたスウェーデンのハイキングを次の旅行に決定します。
長い道のりでロバートの弔いをした彼らは帰り道でドムが怪我をしやむなく、登山コースをはずれショートカットすることになります。
夜が近づきやむなく、無人のロッジで夜を明かすことにします。
しかし、彼らは、小屋の2階で首のない人型や小屋の周りに掘られた謎の印、寝ていた間に起きた不可解な出来事に混乱します。
悪夢を見て目を覚ましたルークは、胸に怪我を、ハッチはお漏らしを、ドムは怯え狂い、フィルは2階のオブジェを崇めていました。
美しい森の一方で、森の中には木に吊るされた動物の死体があったりと不気味な雰囲気が漂います。
また夜が来てテントを張る彼らでしたが、突然うめき声とともにハッチがいなくなります。
翌朝、遭難の危険もあり、とりあえず山を降りる彼らでしたが、ハッチが木に吊るされているのを発見します。
おびえた彼らは下山を急ぎますが、今度は突然フィルが何かの動物に襲われてしまいます。
状況が読めない彼らは逃げ出しやっと道にでますが、突然何者かに襲われ気絶させられます。
ラスト結末
捕まったルークとドムは人々が何かに祈りを捧げているのを目撃します。
ドムはつれていかれ悲鳴が聞こえます。
なんとか逃げ出したルークは巨大な動物(古代の神で巨人族ヨトゥン)がドムを襲っているのを目撃します。
彼らはヨトゥンに生贄を捧げているのでした。
ルークは隙を見て村から逃げ出します。
ザ・リチュアル いけにえの儀式のネタバレ感想
リチュアルとは宗教の儀式のことを意味します。
文字通り、リチュアルを行うとする森の中の一族に巻き込まれる話です。
評価にも書いた通り、前半と後半で面白さにムラがある作品です。
個人的にはこの手の映画は好きなのですが人によっては「意味不明」という結論になってしまい評価が分かれるところでしょう。
前半の魅力
フィンランドの悠久の大地に、何かが起きそうな森林、この映画は「直感だけで見る映画」だからこそ評価が難しい。
①何かが起きそう②何かが起きる③うわーーという3段階のうち、この最後のうわーーがいまいち、と感じた人がこの作品を低評価している傾向があります。
しかし、一方で、前半の「何かが起きそう」感は他の映画よりも圧倒的にうまく描かれています。
まるで誘われたように友人が殺され、フィンランドへ行く一行、まるで仕組まれたようにダグがケガをしてショートカットをする4人、まるでそう決められていたかのように山小屋に向かう彼ら。話は流れるように進み、森の中では不気味な予兆、幻覚、生贄が現れます。
これだけで「怖い」と思ったなら、ホラー映画としては合格ではないでしょうか。
山小屋の出来事を解説
消化不良の人たちのために解説をします。
多くの人が「結局、山小屋で一行が見た色んな幻覚だったり漏らしたり、祈ったりしてたあれはなんだった?」という疑問です
ヨトゥンについて調べたところこれが参考になりそうです。
サクソ・グラマティクスのデンマーク歴史書『デーン人の事績(ゲスタ・ダノールム)』(13世紀初頭)第1書第5章には、一見物語とは全く関係の内容に見えるサクソの「神族分類」がある。それによれば「魔術師(マテマティカ)」には3種類いて、1つ目は「巨人」であり、怪物のような人間であった。その身体はとてつもなく大きい。巨人と第2の魔術師たちは、ともに目の錯覚を引き起こすことが巧みであり、自分たちや他人の姿を自由に変えたり、自分の本当の姿を偽りの姿の下に隠すこともできた。(幻想動物の辞典「ヨトゥン」のページより)
つまり、ヨトゥンとは私たちが考える単なる巨人ではなく、北欧神話では魔術師の一種であり、相手に錯覚を見せることができるのである。
どうしても私たちは巨人と聞くと、「知恵がない」「力だけ」と思いがちですが、魔術師の一派なんですね。
今思えば山小屋に泊まった以降ダグが違和感のある道を選び続け、結果的にリチュアルでいけにえに捧げられるのは、彼らに魔術でおびき寄せられていたのかもしれません。
細かいディテールがよい
B級映画っぽい中にもディテールが効いていていいな、と個人的に思います。
山小屋のシーンで現れる首のない藁ぶき人形なんかも不気味だし、ヨトゥンの造形も人間と動物を足して2で割ったような神獣のような見た目ですし。
日本人ならヨトゥンを見て、もののけ姫のシシガミみたいと思った人もいるでしょう。
シシガミも神ですし、こういう4つ足の生き物が動物か、神か、というのはその不気味さで決まると思っているので、今回のヨトゥンは十分合格点でしょう。
最後に
ザ・リチュアル いけにえの儀式はNetflix(ネットフリックス)だけで見ることができるオリジナル映画です。
いけにえ、という言葉ついているので少しグロいところもありますが、本当に少しなので多くの方に見てもらえる作品だと思います。