CARGO(カーゴ)の評価
★★★☆☆
ゾンビ映画としては変わった作風の映画です。
パニックものとしての性格がないわけではないですが、それはあくまでも物語を引き締めるためのおまけにすら感じます。
むしろ、噛まれてからすぐゾンビ化するのではなく、48時間という期限付きの爆弾を抱えた男の本気の終活をマーティン・フリーマンが好演し、見ごたえ抜群です。
ロメロのようなゾンビ映画を期待した人には期待外れでしょうが、ゾンビ映画が苦手な人や、ゾンビ映画を見尽くして飽きてきた人にはおすすめの作品です。
あらすじ
ウィルスで荒廃した世界で、アンディは妻のケイと娘のロージーと一緒に船で暮らし、人から離れた暮らしを送っていました。
食料が付きかけたある日、難破したヨットから食料を手に入れ、喜ぶアンディでしたが、妻のケイが感染者に噛まれてしまいウィルスに感染してしまいます。
感染後48時間がタイムリミットのためアンディたちは丘に上がり病院を目指します。
途中車を乗り継ぎながら行きますが、人影をよけたため、車が事故にあってしまい、ケイお腹に太い枝が刺さってしまいます。
ケイは死ぬ前に最後に「ロージーを守って」と血で文字を書き、ゾンビになってしまいます。
そしてアンディもまた、ロージーを助けるためにゾンビになったケイに腕を噛まれてしまいます。
アンディは自分がゾンビになった後もロージーを託せる相手を探す旅に出かけるのでした。
途中多くの人に出会いますが、安住できる場所はありませんでした。
そして、ゾンビ化しそうになりますが、必死に抵抗しながら、落ちていた動物の内臓を拾って枝に括りつけ、自らの口にマウスピースを装着し、トゥミに娘を託します。
ラスト結末
アトラの近くで、ハンターたちがゾンビと戦っていました。
トゥミの口笛が聞こえて、彼女の母は立ち止まります。
トゥミとロージーはゾンビ化したアンディに乗り、アンディ自身は、枝の先にある内臓を見て、前に進んでいます。
無事救出されたトゥミとロージーは集落で暮らしはじめます。
ネタバレ感想
元々動画サイトでの短編映画だったものが100分に引き延ばされた作品だそうです。
なるほど、物語はアメリカドラマが得意なメインドラマがありながらそこから派生する話を15分づつ入れていくような展開です。
今日はそんな映画CARGO(カーゴ)の魅力を解説していこうと思います。
ゾンビ世界での親子愛
この映画のテーマは親子愛。
ゾンビが蔓延する世界では人間の赤ちゃんは成す術もない肉の塊と一緒なんです。
だからこそ、ゾンビ世界では互いに助け合って生きていかなければならない、そんなメッセージを含んでいる作品です。
そのために重要な設定が「48時間後にゾンビ化すること」です。
通常のゾンビ映画ですと噛まれてすぐにゾンビ化してしまうので抱きかかえている赤ちゃんはお母さんやお父さんがそのまま食べてしまうことが多いのですが、、、、
今回は時間があります。
つまり死ぬまでに「終活」ができるわけです。
壮大な終活物語
この物語は死を悟った大人が必死に子供のために頑張る終活ムービーなんです。
アンディも幼い娘のロージーをなんとか生き延びさせようとして奔走します。
ある時は病院にいき、ある時は生き残りの夫婦を訪れ、ある時は別の家族連れのところへ行き。
ですが、こんな荒廃した世界ではまともな人たちはかなり減ってしまっており、DV男だったり、一家心中最中だったりと散々な結果に終わります。
途中何度かアンディーは拳銃で娘と心中しようか迷います。
余談ですが、不治の病にかかってうつ病になり自殺する人は現代でもいます。
こんな世界だからこそ一家心中が許されるのかもしれません。
それでも前に進んだのは守るべき存在があったからなんですね。
加えてアンディにはトゥミという支えてくれる人もいました。
原作から追加されたトゥミ
さて、7分間のショートムービーから追加されたのはトゥミもそうです。
この物語の中でも大きな存在を占めますが、彼女の役割はずばりラストにあると思います。
原作ではお父さんは敢え無く射殺されて終わりですが、今回はロージーも好きな香水を最後にアンディに一拭きしてあげるシーンがあります。
これはアンディに「ロージーはもう大丈夫だよ」というメッセージだったのでしょう。
死してもなおロージーが心残りだったアンディをしっかり安心してあの世へ連れていってあげるためのおくりびとがトゥミだったのです。
最後に
最近はロメロに代表されるパニック系のゾンビからコメディ、ヒューマンドラマと変わった作品も多く出ています。
最近ですとサンズ・オブ・ザ・デッドなどが個人的には心打たれた作品です。
映画サンズ・オブ・ザ・デッドネタバレ解説・感想【ゾンビと生きろ!】
普通のゾンビ映画には見飽きたよ、という人にはぜひおすすめの作品です。