映画評価・レビュー
★★★★★
ゾンビの中心で愛を叫ぶ は題名こそ「世界の〇〇で愛を叫ぶ」のパクりですが、正直題名としてはこれしかないだろう、というベストなタイトルでしょう。
肝心な中身はジャンクなパロディ作品かと思いきや、これも期待をいい意味で裏切る良作でした。
ゾンビ世界という極限状態で人間関係を回復する二人は、ある日を境に文字通り別世界へ行ったように世界が変わってしまう、着眼点も素晴らしく暴力描写も控えめなので誰にでもおすすめできる作品になっています。
あらすじ
カレンとジョンは離婚寸前の夫婦。カレンは過去に死産で子供を失って、それ以来自身も妊娠できない身体になってしまい、夫婦仲もギクシャクするようになりました。
ある日、ゾンビウィルスが蔓延し、彼らは運命共同体として、マンションの自室に閉じこもることになります。
食料を確保し、救助を待つまでの時間、二人は初めはぎくしゃくしていましたが、カレンは我慢することをやめ、昼間からワインを飲み、自身が押収保管庫から盗んできたドラッグをやりはじめます。 ジョンもたまらずドラッグをやります。
ドラッグでハイになった二人はこのまま助けを待っているだけではダメだと思い、自分の身は自分たちで守るため身体を鍛えはじめます。
そんな日々を続けていくうちに二人は失った夫婦関係を取り戻していきます。
ある日、二人の部屋にマンションの住人が訪ねてきます。
ジョンたちは彼らを招き入れますが、数少ない食料を分け与えたくなく、二人を追い出そうと策略を考えます。
結末ラスト
ある日、カレンがゾンビに噛まれてしまいます。
渇きを感じるカレンにジョンは自らの血を与えます。
ジョンが朝起きるとカレンがいません。代わりに手紙があります。
余命をさとったカレンはジョンに自分を殺すように手紙でお願いします。
ゾンビ化したカレンは自分を子供部屋に縛り付けており、ジョンは銃を構えます。
その時、救助隊が突入してきました。
彼らは部屋を念入りに捜索し、子供部屋で手をくくりつけ、ゾンビになったカレンをジョンを見つけるのでした。
映画ネタバレ感想
感想レビューのところでも触れましたが、とても面白い作品です。
ゾンビものはパニックものが主流であくまで個人が生き残りをかけるサバイバルものが多いですが、この映画の二人ジョンとカレンはサバイバルらしくないサバイバルを繰り広げます。
ゾンビ映画?恋愛映画?
通常ゾンビ映画というのは一つの場所にとどまることをしません。
災害時を含めて、ゾンビの世界でも基本的には動かないで安全な場所で救助を待つのが一番生存率が高そうですが、映画では生存率が高いシナリオでは盛り上がりに欠けるからです。
ですので通常は、街を移動したり、車に乗ったり、時にはショッピングモールにいったりと活発に活動して、無事(?)ゾンビに襲われるというのが王道なのです。
この映画の二人ジョンとカレンは部屋から動きません。
もちろん結果的に場面も動かず、状況も動かず、ゾンビの脅威にさらされるのは本編でも数回しかありません。
動くのは場面ではなく、二人の心の関係です。
この映画はゾンビ映画というよりは恋愛映画に近いものと言えます。
ゾンビの恋愛ものというと、ウォームボディーズがありますが、やはりゾンビと人間の恋愛ものはどちらかというと(笑)か(苦笑)なわけですのでこういうゾンビ環境下での恋愛映画というのも視点がとても面白いです。
二人の夜の営み
通常夫婦の仲というのは結婚とともに冷めていくもので、夜の営みを持つのは大半が子作りのためです。ここで興味深いのは、子供が産めない身体になってしまったジョンとカレンにとって夜の営みは真の恋愛行為だったということです。
夫婦関係の改善というお題目の中で夜の営みが出てくるのは当然のように思いますが、これは結構うまいことできてるなと思った部分です。
むしろゾンビの蔓延する世界で子供を産むこと自体危険だと思いますので、子供が産めない身体になったカレンには結果的にプラスに働いたことだったとも考えられますね。
ラスト結末の評価
いいですよね、ラスト。
どうオチるのかなと楽しみにしていましたが、想定通りの納得の終わり方です。
これしかないですよね。
ジョンはやっぱりカレンを殺せなかった、むしろカレンのいない生活なんてありえないジョンは自らもゾンビになり、カレンと一緒にいることを選択したのです。
まさに我が人生に一遍の悔いなし、という感じでジョンもカレンも幸せだったと思いますね。
やはりそう考えると映画ミストのようなバッドエンドはやはりよくないな、と感じました。
最後に
見やすい映画で、ゾンビもののあたり映画と言っていいのではないでしょうか?タイトルで地雷臭がしてしまうのは少し損しています。タイトルで地雷と言えばこちらのも危険な香りがしますが、見てみると大分まともなゾンビ映画なのでお薦めです。