映画ミスミソウの評価
★★★★★
漫画のミスミソウが実写映画化されました。
最限度のクオリティはかなり高く、トラウマ級のホラー映画に仕上がっています。
山田杏奈をはじめ、無名だけど迫真の演技に注目です。
※R15であり、グロ残酷描写が含まれています。
映画ミスミソウのあらすじ
父親の仕事の都合で東京から田舎の大津馬村に転校してきた野咲春花は、小黒妙子を中心メンバーとするグループからどいいじめを受けていました。
春花の唯一の味方は、同じく転校生の相場晄だけでした。
ある日家に帰るといじめっ子グループと流美たちが春花の家に火をつけて家が全焼、両親は焼死、妹の花菜は全身に火傷を負ってしまいます。
いじめっ子グループは生き残った春花に自殺をさせようと迫りますが、ふと自分たちが火をつけて殺したことを口走ってしまい、キれた春花はいじめっ子グループを次々と殺していきます。
春花が次々と火事に関与したメンバーを殺していることに気づいた妙子は春花にいじめについて謝罪します。謝罪を受け入れた春花は殺害をやめるのでした。しかし、妙子は帰り道で流美に襲われ重傷を負ってしまいます。
卒業したら東京に移り住むと決めていた春花は晄にそのことを打ち明けますが、自分と同棲すると思い込んでいた晄は逆上してしまい春花の祖父に重傷を負わせます。
ミスミソウのラスト結末
晄は春花に東京で一緒に住もうと説得しますが、聞き入れてもらえません。そこに流美が来て春花を刺します。晄は春花を刺した流美を殴り殺します。
ふと、晄のカバンから写真が落ち、その中に家族が焼かれている写真がありました。春花は晄が自分たちの家族を助ける前に撮影をしていることに憤慨し、晄を落ちていたボーガンで殺します。
卒業式の日、そこには妙子しかいませんでした。教室を振り返る妙子には春花と仲が良かったあのころを懐かしんでいました。
映画ミスミソウのネタバレ感想と魅力解説
今年見た映画で一番面白かったと言っていいのがこの”ミスミソウ”です。
ストーリーは単純明快のリベンジもので、家族を焼き殺された少女が同級生に仕返しをするというものです。
なぜ私がこんなにミスミソウに惹かれるのかを解説していこうと思います。
ミスミソウの意味
ミスミソウは 「厳しい寒さを耐え抜いて春になると奇麗な花を咲かせる」。
野咲春花の名のとおり、冬を耐え抜き、咲く花がミスミソウであり、彼女の名前自体がミスミソウにふさわしいです(もちろん狙ってのことでしょうが。)
作者がこのミスミソウというタイトルにどんな意味をこめたかはわかりません。
あと2ヶ月で卒業だったのに、一家焼死事件があったことで、それを待ちきれなかった春花を表しているのかもしれません。あるいは雪に埋もれて耐え抜いていた花がいつしか、力強く雪を押しのけて咲く姿が、まるでいじめにあって耐えていた春花がはじけて殺戮に走る瞬間に似ていたのかもしれません。
ちょうどいいリベンジもの
私がこういったリベンジものを評価するときは以下の点を重視します。
・リベンジの原因となった事件や理由
・リベンジの方法や描写
・リベンジャー(主人公)のキャラ
このミスミソウはすべてにおいて満点です。
リベンジの原因
まずリベンジの原因の部分ですが、春花が受けた被害は自分へのいじめ、両親の焼殺、妹の焼殺未遂です。
彼女がリベンジを決めたのは最後の2つの家族への暴力です。人間はどうしても私的な殺人には感情移入しにくいものです。
例えば映画「リベンジ」では遊びまくってる女の子が金持ちに殺されかけるところから復讐をしますが、正直「まあ、若干自業自得」と思った人もいることでしょう。
しかし、これが家族であったり、自分でない人の復讐だと人間はその人を応援したくなってくるのです。
映画バットマンのブルースウェインは両親を殺されて、ヒーローになりました。 ミスミソウでは復讐者になった、それだけのことです。
リベンジの方法・描写
リベンジシーンも秀逸です。
当然R指定の映画にはなっていますが、そこを描かないリベンジものははっきりいって、カレー粉の入っていないカレーを食べているようなもので、味もコクもスパイスもない料理です。
いたぶるんだけど、長すぎず、それでも彼らが少しでも後悔する時間を与えていく。そういうリベンジの方法が試されます。
リベンジの方法で秀逸と言えば
やはりアイスピこと「アイ・スピット・オン・ユア・グレイブ」でしょう。
ありとあらゆる手でクズ男どもを地獄へ送っていく、執念は春花に通ずるものがあります。
リベンジャーのキャラ
リベンジャーは多くのケースで女性です。
なぜでしょうか?
リベンジャーを選ぶ時の基準というのは基本的に「弱者」だからです。
いかの弱者をリベンジャーに持ってくるかでその作品のリベンジ度は変化します。
今回のポイントは以下の通りです。
・女性
・中学生
・障害者(失語症)
余談ですが、「強者」をリベンジャーに選んでしまうとヒーローものになってしまいます。例えばアメリカンコミックの「パニッシャー」や「バットマン」なんかもそうですね。
話を基に戻すと、さらに春花はクラスに一人はいそうなたれ目で、丸顔の「おっとり系」女子というのが作品を引き締めています。
まさに現実でもよくある「まさか、あの人が」ということです。
スプラッタとしての完成度
本作ミスミソウではスプラッタ描写も秀逸だと思っています。
監督は内藤瑛亮。映画パズルの監督もつとめた今私が一番ホラー映画で期待をしている監督です。
内藤瑛亮監督は、スプラッタだったり、バイオレンスだったりの描写がうまいんです。邦画では多くのケースで殺されるシーンや血が噴出すシーンがかなりチープなのですがこの監督の作品はよりリアルに、むしろ現実よりも迫力ある形で再現されます。
作中では目を潰すシーンが目立ちます。たとえば春花が一番初めに殺した相手は釘で目を潰しましたし、晄の目をボーガンで目を打ち抜いたりと迫力ある殺し方になっています。
全員狂ってる
主人公の春花はもちろん、流美も担任の南先生もかなりイっちゃってる人たちです。
流美なんか気持ち悪いくらい殺人鬼が板についてしまってますし、南先生は何かあるとゲロを吐くあたりが「この村ヤバすぎるでしょ」という世界観を演出します。
特に流美は本当にいい味を出していましたので、助演女優賞は間違いなく彼女です。
そして、衝撃だったのがラストの晄の狂い具合です。彼は一見正義のシンボルのような動きをしていますが、なんてことはないとんでもないサイコパスでした。
原作との違い
原作と大きく違うのは妙子の生死です。原作では妙子は流美に襲われ死亡しますが、映画では生き残ります。
個人的には妙子の謝罪はうわべを取繕っているだけのように見えたので、あそこで死んだほうが展開としては奇麗だったんじゃないかと思っています。
まあ、美容師が夢だった妙子にとって流美から受けた手のダメージは後遺症ものだったので彼女にとっては生きていること自体もつらいものになるかもしれませんが。
最後に
シンプルイズベストの文字どおり、余計なものが一切ない作品としてよくできています。
内藤瑛亮監督のこれからの活躍も一層期待しています。
主人公の春花役の山田杏奈さんもかわいかったですね、こんな子がかわいい顔してナイフ片手に無双する作品を今後も期待しています。