映画ウォーキングZの評価
★★☆☆☆
つまらない作品ではないです。はじめの30分は苦痛な単調なシーンが進むものの終わりに近づくにつれてどんどん味わい深いものになります。
例えるならスルメのように、はじめはパサパサで硬いのが、噛んでいるうちに甘みとうまみがにじみだしてくる。
気づけばあんなに魅力のない主人公になんだか親しみが湧き、見終わってみるとそれなりに満足感があります。ただ、それまでが苦痛なんですよね、、、
映画ウォーキングZのあらすじ
フランス人のスコットはゾンビが蔓延する世界を一人で生きてきました。
彼は1つの根城を決め、死んだ人の荷物を漁り、無人のスーパーで食料を漁る、まさにハイエナのような生活を送っていました。
そんな彼にはまだ平和だったころベスという婚約者がいました。
あるパーティで出会ったベスはスコットの一目惚れでした。彼はベスにプロポーズをするが、ベスはゾンビのいる不安定な世界で結婚することに疑問を感じており、すぐにイエスとは言ってくれませんでした。
そんな彼女との幸せな日々とは対照にスコットはいつものように街を周り使えないものがないか探していました。
彼の日課は無線の中だけの知り合いのジョージとバーバラという夫婦と更新することでした。
一人で過ごす彼にとって唯一のつながりの彼らは親友のようなものでした。
ある日ジョージの様子がおかしいので問い詰めると妻のバーバラがゾンビに噛まれてしまったとのことです。
その日以来ジョージは落ち込んでしまい、ついにバーバラがゾンビになってしまったのだった。彼は妻のそんな姿に耐えられず、自らもゾンビ化してしまうことをスコットに打ち明けます。
スコットとベスははじめは二人でゾンビの世界で隠れて生きていました。
スコットにとってベスがいればほかに何もいらないが、ベスにとってはロンドンに置いてきた家族が気がかりで仕方ない様子でした。
ベスはついにスコットを置いてロンドンへ向かうことを決意します。
もらった婚約指輪を置いてスコットが寝ている間に出て行ってしまいました。
そんな苦い過去を抱えていたスコットはベスの帰りを待ち続けます。
ある日ドアを叩く音にスコットは気づきます。
聞き覚えのある女性の声に我が耳を疑うスコット、それはまさにベスの声だった。
慌てて彼女を中に入れてゾンビを追い払います。
スコットがずっとそこに居たことに驚くベス。
スコットは喜びベスを抱きしめました。
ベスとの久しぶりの再会を喜ぶスコットですが、ベスは衝撃的な発言をします。
「ロンドンで奴らに噛まれた」
ベスの手には出血の跡があります。
しかし、血は止まっていて、もうゾンビ化するのに時間がないように思いました。
スコットはベスの意識があるうちに、首からかけていた婚約指輪を外して付けます。
「老人になっても一緒にいたい」
過去何度も断られてきた最後のプロポーズでした。
幸せそうなベスはその後死亡しゾンビ化しますが、スコットはためらうことなく彼女の頭を打ち抜きました。
スコットは彼女を残し、家を焼き払い、持てる者だけもって家を跡にします。
その後、彼はうずくまる女性を助けようとして二人の男女につかまります。
彼らはスコットを縛り上げると必要なものを奪います。
親子ほど年の離れている二人ですが、彼女のほうにはウィルスに対して耐性があり、それを研究者のところへ連れて行ってワクチンを作ってもらう計画でした。
スコットのお酒に睡眠薬を入れて、彼が眠った隙に二人は出ていこうとします。
しかし、突然二人はゾンビに囲まれてしまいます。
しかもその中で男性のほうは死亡、女性も目覚めたスコットによって助けられます。
彼女は自分がウィルスに免疫があることを伝え、スコットに自分を守るようにお願いします。
スコットは自分の身を挺して彼女を守りますが、逃げる途中でゾンビに噛まれてしまいます。
彼女はスコットに感謝し、二人は道中研究者のいるロンドンへ向かうのでした、
彼女は言います、「あなたは私と、たぶん人類を救った」と。
映画ウォーキングZの見どころ解説(ネタバレ)
この作品は一見グダグダな作品に見えます。
なにしろはじめのほうは黒人のおっさんがハイエナのように残り物をあさる姿が延々と流れて、ゾンビ映画としての緊張感やワクワク感がほとんど感じられません。
多くの人が低評価をつけることは納得なのですが、それでも見終わったあとになんだか温かいものを感じずにいられません。そんな見どころを解説します。
ゾンビの世界で必死に生きる人
ゾンビ世界でのサバイバルなんてつまらないものですが、それでも例えば雨を喜んで慌ててシャンプーをはじめたり、それなりに小技が効いています。
スコットははじめはハイエナのように、ただ生き延びるだけが目的のつまらない人間かと思いましたが、彼には生きる理由があります。
「生きてもう一度ベスが返ってくるのを待つ」
ジョージがいかに食べ物があるからこっちへ来いと言っても、彼が断固として今の場所を動かなかったのはベスがここに帰ってくる可能性にかけたからでした。
自分がここを動くわけにはいかない。
スコットの静かな決意が後半に伝わってきます。
妻を失って死ぬジョージと対照的
ゾンビのいる世界では絶望の連続です。
長年連れ添った最愛の妻をジョージは失ってしまい、結果的に自らも耐えられずゾンビになる道を選びます。
スコットも長年待ったベスがまさかあんな早くに失うなんて思ってもみなかったでしょう。
それでもジョージと違い、スコットは前に進みます。
生きる目的を亡くした彼の最後の決断
彼は生きる目的を失っても前に進みました。
もうベスに一度会えたのだから死んでもよかったと思ったかもしれません。でも彼はトランプやゲームをもって出かけます。
生きることを決めたからです。
結果的に彼は最後に人を守って死にます。
絶望した人間ができる行為ではありません。
ジョージとのやりとりをSNSに比喩するのがおもしろい
個人的にこの脚本の人は結構優秀だなと思います。
スコット自身が言っていますが、会ったこともないジョージとの無線でのやりとりはまさに今のSNSでのやりとりと似ています。
ゾンビがいるだけで、数m先の人間とも会うことができず、その相手とのやりとりが今を生きる糧になっているのです。
SNSであったことなくてもやはり絆を感じるのはこのゾンビの世界にもとても同じようなところがあるようです。
最後に
いまいちな中にも何かを表現したいと思っている作品です。
伝えたいメッセージがなんとなくわかるし、スコットという人物が決して薄い人間ではないことがわかってきて面白いです。
ゾンビ映画としてはもう少しハラハラさせてほしいところですが、B級映画としては及第点でしょう。