息子もよく見るアンパンマン
やなせたかしさんが作った子供たちの絶対的ヒーローです。
私も息子と一緒によく見るのですが、10分程度の短い枠の中でバイキンマンが街を脅かしアンパンマンが「アンパンチ」でバイキンマンを撃退するお話です。
今日はそんなアンパンマンのお話を少ししたいと思います。
アンパンマンとバイキンマンの関係
先述した通り、アンパンマンとバイキンマンはそれぞれお話の中で明確な役割を持っています。
バイキンマンが侵略し、アンパンマンが防衛する。単純な白と黒の関係です。
原作者のやなせたかしさんは戦争を経験する中で「正義」とはなにかを考えたそうです。
日本の正義、中国の正義、アメリカの正義、、、それぞれの国でそれぞれの正義があり、その全く違う内容に正義という言葉に困ってしまったと言います。
その時彼が思いついた絶対的正義が「飢えた人に食べ物を与えること」なのだそうです。どんな国でも、どんな人種でも飢えた人に食べ物を与えることはまぎれもない正義の行為であると確信してアンパンマンが生まれました。
他を探してもこんなヒーローはいないでしょう。自分の顔を分け与えて「はい、どうぞ」とあげる。
これこそが絶対的正義なのです。
さて、ここまでは「なるほど」と思うばかりです。
しかしここで私の疑問が生じます。
アンパンマンはバイキンマンにパンをあげたことがない
このシーン見たことあるでしょうか?
1話くらいはあるのかもしれませんが、私は100話くらい見た中で見たことがありません。
ではバイキンマンがお腹を空かしているシーンは見たことあるでしょうか?
これはかなりあります。
お話のパターンはたいていこんな流れです。
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題名「アンパンマンと○○マン」(○○はお団子だったり、おしるこだったり食べ物)
バイキンマン「おなかすいたな~」
○○マン「○○はいかがですか」
バイキンマン「よこせーー」
○○マン「キャーー」
アンパンマン「やめろバイキンマン!アンパーンチ」
バイキンマン「ばいばいきーん」
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もちろん無理やり取ろうとするバイキンマンにも非があるでしょう。
ですが、もしこの展開ならどうでしょう。
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題名「アンパンマンと○○マン」(○○はお団子だったり、おしるこだったり食べ物)
バイキンマン「おなかすいたな~」
○○マン「○○はいかがですか」
バイキンマン「よこせーー」
○○マン「キャーー」
アンパンマン「やめろバイキンマン!いいから黙ってこのアンパンを食べてください」
バイキンマン「…おいしい」
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こうなるケースは考えられませんか。
つまりアンパンマンが絶対的正義である場合、バイキンマンにパンを分け与えることが大事なのですがここで正義は基本的にははたされません。
ここには持つものと持たざるものの明確な境界線があるのです。
持つものと持たざるもの
アンパンマンはジャムおじさんに作られました。基本的に親はジャムおじさんと見ていいでしょう。彼らは温かい暖炉があり、ベッドもある、食べ物もいっぱいある緑豊かな場所に住んでいます。
一方でバイキンマンは草一つ生えていない崖の上に家を構えています。彼はカビルンルンという大量の仲間を養っています。食べ物は基本的に育てることは不可能な状況ですので、街や他人から奪って暮らすしかないのです。
これが持つものと持たざるものです。
もう少し行きましょう。
アンパンマンではよくお祭りが行われます。
模擬店が出たり、おいしい食べ物が腐るほど出てきます。
バイキンマンがよくそのお祭りを襲っていますが、果たしてバイキンマンはそのお祭りに招待されているでしょうか。
バイキンマンは街を襲います。しかし、街もバイキンマンを避けています。
この大きな溝がアンパンマンの構図の中にあります。
アンパンマンの武器はアンパンチではなく、食べ物を分け与える勇気
アンパンマンがもしバイキンマンに食べ物を分け与えていたら、ジャムおじさんがバイキンマンを街のお祭りに誘っていたら、バイキンマンはどうするのでしょうか。
中々できないことだと思いますが、アンパンマンの武器は敵を倒す勇気ではなく、敵に塩を送れる勇気だと思います。
社会から疎外されたバイキンマンに手を差し伸べられるのもほかならぬアンパンマンだけです。
アンパンマンとバイキンマンの最後に
アンパンマン自体が絶対正義ではなく、あくまでもやなせたかしさんは「飢えている者に食べ物を与えること」が絶対正義と言っていました。
バイキンマンは絶対悪ではなく、社会から疎外されたものです。
もしアンパンマンが彼に救いの手を差し伸べてくれたら、、、、
所変わり、現実の世界でも世界情勢が不安定です。シリアで大量虐殺が、北朝鮮が世界をけん制しています。
いがみ合う世界では必ず暴力が生まれます。アンパンチの勇気ではなく、アンパンを上げる勇気を常に持っていたいですね。