映画アイアムアヒーローのキャストと評価
【キャスト】
大泉 洋
有村架純 吉沢 悠 岡田義徳
片瀬那奈 片桐 仁 マキタスポーツ 塚地武雅 徳井 優
長澤まさみ
【原作】
花沢健吾『アイアムアヒーロー』(小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中)
【監督】佐藤信介
【脚本】野木亜紀子
【音楽】Nima Fakhrara
評価:85/100点
邦画でも本格的なゾンビ映画が出てきたのはとても嬉しいです。
韓国の「新感染」には勝てないですが、それでもやはり日本の漫画のシナリオの良さと大泉洋という素晴らしいキャストでお腹いっぱいな出来になっています。
映画アイアムアヒーローのあらすじ
鈴木英雄(大泉洋)35歳。職業:漫画家アシスタント。彼女とは破局寸前。
そんな平凡な毎日が、ある日突然、終わりを告げる…。
徹夜仕事を終えアパートに戻った英雄の目に映ったのは、彼女の「異形の姿」。
一瞬にして現実の世界は崩壊し、姿を変えて行く。謎の感染によって人々が変貌を遂げた
生命体『ZQN(ゾキュン)』で街は溢れ、日本中は感染パニックに陥る。
標高の高い場所では感染しないという情報を頼りに富士山に向かう英雄。
その道中で出会った女子高生・比呂美(有村架純)と元看護師・藪(長澤まさみ)と
共に生き残りを懸けた極限のサバイバルが始まった…。
果たして彼らは、この変わり果てた日本で生き延びることが出来るのか。
そして、英雄は、ただの英雄(ひでお)から本当の英雄(ヒーロー)になれるのか! ?
映画アイアムアヒーローのネタバレ感想
大前提として漫画の実写化はあまり好きではないです。トラウマがありまして、進撃の巨人、テラフォーマーズともうマンガの実写化はお腹いっぱいかなと思っていたんです。
マンガの実写でうまくいくのは花より男子みたいな恋愛系だけかなというのが正直なところです。
ですが、本作はとてもいい出来で満足です。特にグロについてはいつも見ている洋物グロに比べると抑えめですが、ゾンビ映画でこんなに画面が明るいのも珍しいですし、鮮血が飛ぶ感じでこれはこれでとても新鮮でした。
結構カップルが見に行くケースもあるようで、ZQNは外見が「明らかに人間ではない」のでぶっ壊されても爽快なのですが、やはり日本人が死んでいく様子はつらいものがありますね。
中でも序盤の三谷さんの自決のシーンは直視できませんでした。
ショッピングモールの食料調達隊が一人ひとり殺されていく場面も、クズが多かったとはいえ痛々しかったです。断末魔がリアルでとてもよかったです。
最後のメガネく……メガネさん無双は爽快です。暴力的な死体たちに囲まれさぞや血や腐臭で鼻がつらかろうなと思うくらい、画面の中は鮮血のオンパレード。
原作マンガと比較しての感想
原作ではブスなてっこのキャストが片瀬那奈さんということで、うーんという感じでしたがそれでも美人な片瀬さんがきちんとてっこを演じているのがなんだか妙に納得しました。
前提もよかったと思いますが。マンガではそれなりに英雄を信じて認めていた彼女ですが、尺の関係でそこまで人間らしさを入れられなかったのか、ヒステリックで現実的な三十路女性になっていたのはおそらくすぐにゾンビになっても後腐れがないようにするためでしょう。
また、例の書置きが省略されていたのはこれもしょうがないですかね。死にゆく彼女の最期の女心がうまく描写されるいいシーンが撮れると思うのですが。
出番が少なかったためコロリ先生がただの無頓着な有名作家であるかのようにみえたので、彼が英雄の才能を高く評価しているシーンは削らないで欲しかったですね。
比呂美ちゃんとの出会いは尺の関係上仕方なかったのでしょうが、大事な伏線や彼女の心の闇・人間関係が描かれず残念です。
でも確かにフケフケ連呼される有村さんはいやですね。
ショッピングモールの男性連中はほどよくクズで良かったです。
井浦役の俳優さんは男前なのですが出で立ちの奇妙さと表情の不気味さで、満点でした。
ただ、映画ではサンゴの下剋上後、単なるサイコパスと化していてびっくりしました。
サンゴは実写化のお陰でドクズからちょっとかっこいいクズにランクアップしていますね。
しかし原作ショッピングモール編に登場したブライさんが登場せず残念でした。
彼は中盤までに登場するキャラクターの中で唯一ヒーローっぽい男性だったので。
藪さんは原作だと粗野で芯の強い女性ですが、映画では美人で強い(物理)女性ですね。
藪さん役が長沢まさみさんというのは可愛すぎるのでは、と不安だったのですが、きちんと藪さんでした。
大泉洋さんは、まさしく鈴木英雄でした。
キャスティングは文句なしどころか「彼以外誰が鈴木英雄を演じることができる?」というレベルです。
でも彼の人物描写が……。ZQNという存在を知らぬままてっこZQNを退けたあとに、人を殺してしまったと狼狽し自首の手紙を書く場面、タクシーから逃げ出すときに几帳面に乗車賃を置いていく場面など、彼の融通の利かないほどの生真面目な「ステレオタイプの日本人」的な描写は削ってほしくなかったです。また、過剰なまでの妄想癖ゆえに猟銃を心の拠り所とする鈴木英雄の説得力が、実写版にはありませんでした。大泉洋さんの演技は完璧です。完璧すぎて原作と実写版の差異によるマイナス点が帳消しになります。
アイアムアヒーローの最後に
グロはそれなりにある作品ですが、ゾンビ好きにとってはほどよい味付けぐらいに見るのがいいでしょう。
どうしてもアメリカ映画だとどんどん銃でゾンビを打ちまくる描写が中心になるのでしょうがとにかく今回は最後まで銃を抜かない日本映画のリアルを見た気がします。
それでもてっこのゾンビだったりタクシーでのゾンビシーンであったり、十分ゾンビ映画を撮れる土壌が日本にもあることがわかる1本だと思います。