フレンチスプラッターホラーの名作映画「屋敷女」
本作は日本のマンガ「座敷女」からインスパイアーを受けて屋敷女と命名された作品と言われています。
映画ハイテンションなど多くのスプラッターホラーの名作を生み出しているフランスの良作です。
その界隈の人には有名な作品でグロ描写の限界に挑みながらもフランス映画らしいもの哀しい雰囲気もある、個人的に大好きな1作です。
なお、以下にはグロ描写や閲覧注意な画像が含まれていますので苦手な方はお帰りください。
屋敷女の評価
★★★★★
映画配給会社のスタッフが作っているため、もう好き放題作っている作品なので最高です。
スプラッターの限界に挑んでいるので監督がやりたいことをとにかく詰め込んでいます。スプラッタ、ホラー、サスペンス、ゾンビなどあらゆる要素を詰め込んだ物悲しい作品はグロいから、という理由だけで避けるのはもったいない良作です。
グロ度は確かに高いですが、きめ細やかに作られたグロ描写は芸術として見れば多分に勉強になる部分も多くあるでしょう。
まさに芸術品の1作です。
ちなみにキャストはこんな感じです。
監督:アレクサンドル・バスティロ、ジュリアン・モーリー
脚本:アレクサンドル・バスティロ
製作:ヴェラーヌ・フレディアニ、フランク・リビエール
サラ:アリソン・パラディ
女(侵入者):ベアトリス・ダル
このベアトリス・ダルがやばすぎるんです。
そこらへんはあらすじと解説でじっくりと見ていきましょう!
屋敷女のあらすじと解説【ネタバレ画像あり】
【詳細解説】
スプラッターホラーは数多くあれど、フランス映画はやはり毛色が違います。
冒頭車の衝突事故が起き、2台の車が大破、そのときに妊婦のサラはシングルマザーになってしまいます。
お腹には赤ちゃんがおり、一人で育てていくことに不安なサラの描写が冒頭続きます。
こういうキチ〇イじみたおせっかいナースがいるあたりがもうフランス映画の香りがぷんぷんしています。
古参ナースの癖に出産の不安を煽るだけ煽って、自分はタバコを吸い始める始末。
おいおい、妊婦の横に座ってそりゃねーだろ!
事故の後からこの世界は絶望の景色に変わってしまったのか、サラには味方が一人もいないようにそんな見せ方にになっています。
そして、クリスマスの夜に来訪者が現れ「電話を貸してくれないか」とノックします。
一度は断るサラですが、自分の色々なことを知っているこの女が不気味でしょうがありません。
そして窓を見ると女が窓越しにいるではないですか。
ここで、本作の主役ベアトリス・ダルが登場。
透明なガラス一枚の先に得たの知れない女がいるなんて怖すぎます。
もはやこれから嫌な予感しか感じないそんな展開です。
その後、サラは警察に電話し、警察が調べに来ますが、家の周りには女いなく、安心してサラは寝床につきます。
しかしそこに一人の忍び寄る影が、、、、、、
今回のこの侵入者の女の武器はどこにでも売っているようなハサミだけ。
ほとんど丸腰で乗り込んで来る当たり、やはり頭がおかしい女であることは間違いありません。
そしてなにやらハサミの先に粘着質の液体を塗り込んでサラに馬乗りになります。
ここから第1ラウンドスタートです。
視聴者からすると「まだ始まって30分だし、まだそんなスプラッタな展開ないでしょ」と油断している人が多いのではないでしょうか。ところがどっこい屋敷女では開始30分でフルスロットルです。
ハサミをサラの妊娠で大きくなったお腹のへそに入れ始めます。
流れ落ちる鮮血。
サラも目を覚まし異常に気付き、抵抗します。
本作の一つの特徴で、現実世界と同時にお腹の胎児の様子が実況中継されます。
サラが抵抗すれば胎児も生きようと抵抗しますし、サラが攻撃を受けると、胎児も痛そうにします。
妊婦を攻撃するということは胎児も攻撃するということが、まさに非人道的、インモラルな行動であり、それをより具体化するために赤ちゃんのCGを入れているのでしょう。
やはり赤ちゃんという一つの守られるべき存在を攻撃するということが見ている人を刺激します。ちなみにベッドで襲われているときの赤ちゃんはこんな感じです。
サラはとにかく抵抗し、一度は洗面所に逃げ込みます。
間一髪。すでにサラは顔をはさみで傷つけられて血だらけです。
必死になって武器を探すサラ、あわててドアにカギをかけ立てこもります。
サラに洗面所に逃げ込まれて悔しがる侵入者の女ですが、そのころ、サラの上司のジョン=ピエールが訪問します。
彼はサラから電話を受けて昼間の写真に屋敷女が写っていることに気づき、解析をお願いしていたのです。
残念ながら、サラの上司は当然のようにこの屋敷女に殺されてしまいます。
そして、その後サラのお母さんが様子を見に訪れます。
あまり仲がいい関係とは言えませんが、やはりクリスマス別々に過ごすのは偲ばれたのでしょう。
サラを探しに2階に上がります。
サラは反撃するためにドアの陰で待ち伏せします。
そしてドアが開いた瞬間、持っていた棒を首に突き刺します。
なんと突き刺した相手はお母さんでした。
突き刺した場所から血が噴き出ます。
スプラッタ映画としてはなくてはならない描写です。
(閲覧注意)
刺し殺してしまった相手を見て、崩れ落ちるサラ。
しかし屋敷女はその隙を逃しません。一気に階段を駆け上り、サラを外にひきづりだそうとします。
ここから第2ラウンドがスタート
髪を掴まれるサラ、握って離さない女。
血は出ないものの迫力のシーンです。
結局お母さんを指した棒で屋敷女の腕を突き刺し、一矢報いたサラはまた洗面所に逃げ込むことに成功します。
屋敷女の腕にはサラの髪の毛がついています。
悔しがる屋敷女。
第2ラウンドも決着は付きませんでした。
廊下でへたり込んでいるとサラの愛猫がすり寄ってきます。
はじめはかわいがっている屋敷女ですが、当然猫の首をへし折ります。
※以下握りしめているのは猫の首です
余談ですが、ベアトリス・ダルが本作で苦労した撮影シーンをレポーターに聞かれて「猫の首を絞めるシーン」だと答えたそうです。
それを聞いてみんな「そう、ベアトリス・ダルと言えど猫の首を絞めることには抵抗があったんだな~」と思って、その理由を聞いてみると
「(握りしめている手が)本当に猫の首を絞めて殺しているように見えるか心配だった」とのこと。
彼女は根っからのサイコパスというかホラー女優でした。
さて、話を基に戻すと警察が再度サラを訪れます。
彼らは護送中の被疑者を連れて帰るついでに寄ったようで(そんなことあるのか?)、出迎えた屋敷女を怪しみます。
その頃警察に助けを求めようとサラが洗面所から出ようとするとドアの前にモノがあって出られません。必死にどけようとしますが、中々出られません。
そこで戻ってきた屋敷女がすかさずサラにハサミを突き立てます。
ラウンド3のはじまりです。
先ほど腕を刺されたお返しとばかりにハサミが刺さります。
さらに警官が2階へ突入!
一度は警官に助けられるサラですが、結局その警官ももう一人の警官が持っていた銃によって射殺されます。
そして、パトカーで待機していた警官も銃声を聞き突入してきます。
あー言っちゃったよ、死亡フラグナンバー1「すぐ戻る」
当然こいつは速攻で屋敷女に殺されますが、かなりの時間稼ぎに貢献してくれました。
その隙にサラが1回まで下りていき、武器になりそうなものを探します。
キッチンまで来て屋敷女との対峙。ラウンド4です。
棒のようなものを持つサラに対して、トースターでの強烈な一撃によってサラはダウン、ノックアウトです。
勝利を確信した屋敷女は余裕のタバコで一服タイム。
サラはそれを見逃しません。
審判がいないことをいいことに、ダウン中からのスプレー攻撃!
タバコの火が燃え上がり、たまらず屋敷女を燃え盛る日の中に放り込みます。
さすがの屋敷女もこれには参ったのか、一度撤退して身を隠します。
形勢逆転、サラが今度は屋敷女を追い詰めます。
台所にある包丁を武器にして部屋中を探します。
クローゼットの中に屋敷女を発見します
「また、私を殺すのか」
屋敷女が弱弱しい声で言います。
なんと屋敷女はサラが自動車事故を起こした相手だったのです。
しかも彼女も妊娠しており、死産してしまったというのです。
あっけにとられているサラ。
もはや相手への殺意は霧散して、完全に頭が混乱しています。
サラ自身もあの事故で夫を失っており、同じような悲しみが理解できるからでしょう。
もはや敵も味方もいなくなってしまったこの家、ファイナルラウンドはないかと思われたその時!
部屋の隅で立ち上がる一人の陰。
なんと屋敷女が殺した警官が生きており、電気を付けました。
驚いたサラが声をかけて振り返るとなんと警官はゾンビに なっているではないですか!
この警官ゾンビは監督自身が「ゾンビ要素を入れたかった」という完全な趣味で挿入されたエピソードだそうです。
ですので、彼がなぜ生き返ったのか、とか彼がなぜサラを襲うのか、などはどうでもいいのです。
それぐらい唐突すぎる展開ですし、もう視聴者もあまりのスプラッター展開ぶりに何が起きても驚かない心の準備ができているのです。
そして突然訪れるファイナルラウンド!
ゴングとともに妊婦の腹を殴る警官ゾンビ。
もはや屋敷女ですらやらなかった人類最大のタブー
妊婦の腹パンチ
当然胎児の画像がグルんぐるん揺れています。
サラももうフラフラで起き上がる気力もありません。
しかし、執念の女屋敷女がサラに力を貸します。
フランス語はわかりませんが、「オラーーー何しとんじゃーーー」と叫びながら警官ゾンビを持っていた包丁武器でめった刺しにします。
屋敷女の助っ人もあり、無事に警官ゾンビをKOし、ここでラウンド終了。
屋敷女ラスト問題のシーン
全てが終わったかと思った瞬間に、突然エピローグがはじまります。
サラが苦しみだして「う、産まれる」
サラもはじめてのお産で、不安もあったでしょう。
呻きながら「ママ」と助けを呼びます。
しかし、残念ながらママは先ほどサラが刺しており、2階で冷たくなっています。
ここにはサラ以外には屋敷女しかいません。
当然屋敷女は言います。
「私がついてる」
もはや血だらけの階段で、これが屋敷女がサラに傷つけた傷から出た血なのか、破水による血なのか、見分けがつきませんが、言えることはただ一つ。
一面血だらけ
しかも、屋敷女は相変わらずハサミを持っている始末。
サラが言います。
「で、出てこない」
(閲覧注意)
屋敷女は何も言わず黙々とハサミを取り出し何やら作業しています。
その様子はR18指定の作品にも関わらず、モザイク、というよりも完全な黒塗りのぼかしが入っており、全く見えません。
もはやここを見るにはR18では足りないようです。
ボカシシーンはアンレイデッドバージョンのDVDでは外れており、無修正とか。
そして、無事に鳴き声が聞こえて赤ちゃんが生まれます。
しかし、当然サラはもはや事切れています。
完全のぼかしばかりです。
ラストシーン。
大事そうに赤ちゃんを抱きしめる屋敷女です。
顔はやけどによって完全にただれていますが、なんだか満足げに見えるのは私だけでしょうか。
映画屋敷女のネタバレレビュー
屋敷女はとにかく激しいスプラッタホラー映画です。
まず開始30分からいきなり血みどろの殺し合いがはじまり、ラストは有名な問題シーンと言われる「出産」の強烈なシーンで終わります。
この作品ですごいのは殺戮を行うモンスターや特別な武器であったりがほとんど出てこないにも関わらず、これだけの惨劇が繰り広げられるということです。
ハサミだったり、何かの尖った棒であったり、必死に突き刺せばこんなにも強い武器になるというのは驚きです。
問題のシーンは手加減ない
とにかくサラがかわいそうです。
決して故意に屋敷女の子供を奪ったわけではないですし、結果的に彼女の上司も死亡、彼女の母親に至っては自分で間違って殺してしまい、最後は子供まで奪われてしまうという展開。
そして多くのタブーをこの映画では挑戦しています。
・母親を娘が殺してしまう
・妊婦を腹パンチ
・妊娠シーン
普通なら倫理的に難しい撮影を難なく撮影しているあたりが斬新であり、貴重な映画にしています。
屋敷女も単なるサイコパスではありません。彼女は自分の子供を奪われるという女性にとって最大の苦痛を味わって頭がおかしくなってしまいました。
誰にも渡さない、誰にも触れさせない
彼女の子供への執着がとんでもないものであることを表しています。
屋敷女の狂気の中で最後には同情してしまうのです。
サラが深い傷を負っていますが、実は主人公は屋敷女であり、彼女は被害者であり、ヒーローである、そういう作品に仕上がっています。
ストレートなスプラッタがいい
最近の作品では物静かな怖さだったり、かくれんぼ的な要素が多かったりするのですが、やはり私は特殊メイクがあったり、痛い描写が多いほうがいいです。
本作はエンタメ性は少なく、とにかく相手を傷つけて生きるか死ぬかの瀬戸際の映画です。
例えば今回犠牲になった人はサラと屋敷女以外では、警官が3人、サラの上司、サラの母親、連行中の被疑者など数だけで見ても一晩で一つの家でこれだけの死体が出るのは珍しいです。
通常はサラと屋敷女以外は出てこなかったり死人が出なかったりします。
ですが、視聴者は実はシンプルに痛い描写や殺人現場が見たいものなのです。
その点屋敷女はしっかりとそのニーズにこたえてくれます。
映画屋敷女の最後に
スプラッタ好きは必ず押さえてほしい作品です。
最近はコメディホラーが多いですが、こういった哀しいフレンチホラーもいいですよ。
特にDVDにはコメンタリーもついてるのでぜひそちらもご覧ください。
ちなみにこの屋敷女はハリウッドでリメイクされています。
それが「インサイド」です。