ハングリーハーツのあらすじ
ジュードとミナは中華料理店のドアが壊れて閉じ込められたことをきっかけに結婚しました。ミナは妊娠していましたが、ベジタリアンの彼女は食事をほとんど手につけていませんでした。医者は彼女を心配しましたが、医者嫌いな彼女は徐々に往診もやめるようになりました。
ミナを心配するジュードですが、彼女の強情さに成すすべもありませんでした。すっかり体力の落ちたミナでしたがなんとか出産し、育児がはじまります。
相変わらず医者嫌いとベジタリアンの彼女は生まれてきた息子に独自の育児方針を立てていました。肉などはダメ、検診もいかない、食べるものは自分で育てた野菜だけ、外の世界に触れさせない、携帯電話の電波は禁止などと徹底した方針でした。
そのうちに息子は栄養が足りず微熱が続くようになります。ジュードはミナに内緒で医者に見せると、成長障害だと診断されます。仕方なくジュードは影で栄養のあるものを食べさせますが今度はミナが息子に栄養を阻害するオイルを与えます。
このままでは息子が死んでしまうと心配したジュードは弁護士を訪れ、ミナから子供を取り上げることにしました。子供はジュードの母親の家に預けられ育てられます。ミナはなんとか子供を取り戻そうとします。
ある日ミナがジュードの母親の家にいったときジュードが勢いでミナに暴力をふるってしまいます。実はそれはミナの策略で、DVを受けたと被害届を警察に出したミナは警察と一緒に息子を連れ去ってしまいます。
弁護士に相談したジュードですが、なかば誘拐のようなやり方をしていた彼には何の手立てもありませんでした。
絶望する彼でしたが、その夜ミナの家に侵入し、彼女を殺した人間がいました。それはジュードの母親でした。
彼女は自首し「孫を守るために仕方なくやった」と自供しました。
子供はジュードのもとで大きく育っていくのでした。
ラストのネタバレ解説
ラストに衝撃を受けた人もいたことでしょう。まさかお母さんがミナを殺すとは。実はこの展開には予想以上に驚きました。そんなラストの意味をここでは解説していこうと思います。
鹿が殺される夢
物語の序盤で出てくるミナが見た「鹿が殺される」夢ですが、あれにはある種のメタファーがあります。映画で言えば「聖なる鹿殺し」を見たことある人はピンとくると思います。
この映画はギリシャ神話の悲劇はアウリスのイピゲネイアという話をもとに作られています。
このお話はアウリスにてギリシア軍を率いるアガメムノンが、トロイ軍との戦に勝つために狩猟の神アルテミスから娘イピゲネイアを生贄として要求されるのですが、結果的にイピゲネイアの身代わりに鹿を生贄に捧げる、という話です。
つまりギリシャ神話では鹿とは生贄や犠牲の意味を持ち、今回ミナが見た夢が象徴しているように、ハングリーハーツという映画はまさに「誰を犠牲にするか」という映画なのです。
殺されるべきは子か親か
ギリシャ神話でも映画「聖なる鹿殺し」でも殺されるのは娘や息子でした。その点でいえばこのハングリーハーツでも殺されるべきは赤子であるべきだったのですが、そうは問屋が卸しません。
今回は何ともそんな胸糞悪い展開をぶち壊す「義母が嫁を殺す」という何とも昼ドラちっくな展開となりました。その点では非常に現代版のお話になっているこのお話はある意味肩透かしをくらったというか、明らかに病気に近いミナ自らが犠牲になるという展開で幕を下ろしました。
最後に
なんとも悲しい、心をえぐられる作品ですが鬱映画好きな人にはおすすめの作品です。
ミナの心の病気にもう少しジュードが向き合っていたらもう少し違ったエンディングになっていたのかもしれません。
ジュードのふがいなさを補ってありあまる母の愛も見どころです。母の愛の形も十人十色ということですね。