バーフバリ2 王の凱旋の映画レビュー
バーフバリ2王の凱旋のキャストと評価
【キャスト】
※括弧内は日本語吹替
シヴドゥ/マヘンドラ・バーフバリ、アマレンドラ・バーフバリ – プラバース(小山力也)
バラーラデーヴァ – ラーナー・ダッグバーティ(山野井仁)
デーヴァセーナ – アヌシュカ・シェッティ(喜多村英梨)
カッタッパ – サティヤラージ(麦人)
シヴァガミ – ラムヤ・クリシュナ(英語版)(杉山滋美)
ビッジャラデーヴァ – ナーサル(あべそういち)
アヴァンティカ – タマンナー(英語版)(森なな子)
クマラ・ヴァルマ – スッバラージュ(英語版)(渡邉隼人)
ジャヤ・ヴァルマ – メカ・ラマクリシュナ(英語版)
クンタラ王国宰相 – プラージ・ラジ(英語版)
カーラケーヤ族長の弟 – チャランディープ(英語版)
セートゥパティ – ラケシュ・ヴァーレ
クンタラ王妃 – アシュリタ・ヴェムガンティ(天野真実)
【スタッフ】
監督 S・S・ラージャマウリ
脚本 S・S・ラージャマウリ
K・V・ヴィジャエーンドラ・プラサード(英語版)
原案 K・V・ヴィジャエーンドラ・プラサード
製作 ショーブ・ヤーララガッダ(英語版)
プラサード・デーヴィネーニ(英語版)
評価:90/100点
バーフバリ2 王の凱旋のあらすじ
バーフバリとデーヴァセーナ
マヒシュマティ王国では国母シヴァガミが悪魔祓いの火の儀式を執り行うところから本作はスタートする。
この儀式は目的地まで歩みを止めずに歩くことで願いが叶うと言われており、儀式完了の直前で象が暴れ出す騒ぎが起きるが、アマレンドラ・バーフバリの活躍により無事に儀式を終えることとなる。
その後バーフバリは民をよく知るために旅に出て、クンタラ王国のデーヴァセーナ王妃に出会う。一目ぼれしたバーフバリは軟弱な青年を装い、王妃の兄弟であるクマラの側に仕える。
そのころ、バラーラデーヴァは、デーヴァセーナの肖像画を見て彼女に一目惚れし、バーフバリから彼女を奪い取ると同時に王座も奪還しようと考える。
バラーラデーヴァの願いでシヴァガミは、クンタラ王国に莫大な財宝を贈り婚姻を申し出るが、大国の一方的な申し出に不快感を抱いたデーヴァセーナは申し出を拒否してしまう。
そのころ、ピンダリがクンタラ宮殿を襲撃し、バーフバリはカッタッパと共に応戦する。バーフバリはデーヴァセーナと共に戦い、牛飼いたちと協力して堤防を決壊させ、ピンダリを一掃する。
バーフバリの活躍を見たジャヤ・ヴァルマ国王は感謝を伝え、デーヴァセーナとの婚約を許可する。それと同時にシヴァガミの遣いの鷹が現れ、デーヴァセーナ連行を命じた文書が届けられる。バーフバリはデーヴァセーナに想いを告げ、想いを受け入れたデーヴァセーナはマヒシュマティ王国に赴くことを承諾する。
バーフバリの退位
マヒシュマティ王国に到着したバーフバリとデーヴァセーナは、婚姻話がバラーラデーヴァのための話だったことを知り衝撃を受ける。
バーフバリは、デーヴァセーナとの「あなたの尊厳を守る」という誓いと、シヴァガミの「何者の妨げに対しても正義を貫け」という言葉に従いシヴァガミの誤りを指摘し、彼女との結婚を求める。しかし、激怒したシヴァガミはバーフバリの国王即位を取り止め、バラーラデーヴァを次の国王に指名する。
戴冠式の日に民衆の圧倒的な支持を集める姿を目の当たりにしたバラーラデーヴァとビッジャラデーヴァは、バーフバリへの敵対心を強めていく。ついにデーヴァセーナが懐妊時にバーフバリを国軍最高司令官から解任してしまう。
その後、デーヴァセーナがいさかいにより国軍最高司令官セートゥパティの無礼な振る舞いに彼の指を切り落としてしまう。
彼女の裁判中、彼女への無礼にるバーフバリは激怒しセートゥパティを殺してしまい、デーヴァセーナ、クマラと共に宮殿を立ち去ることとなった。
宮殿を去った二人は平民として暮らし始めるが、民衆は変わらず二人を敬愛したため、バラーラデーヴァとビッジャラデーヴァは危機感を募らせる。
ある日クマラが罠にかけられ王の暗殺未遂の犯人に仕立て上げられ、バーフバリが主犯に仕立てあげられる。
シヴァガミはやむを得ずカッタッパにバーフバリの暗殺を命じる。カッタッパもはじめは躊躇していたが、命令を受け入れる。
バーフバリの元に「カッタッパが反逆罪で処刑される」という知らせが届き、バーフバリはカッタッパを守るためカーラケーヤと戦うが、背後からカッタッパに刺されてしまう。
カッタッパはシヴァガミにすべて陰謀であったことを告げ、息子の陰謀を見抜けなかったことを非難する。シヴァガミは後悔し、民衆にバーフバリの死と彼の息子マヘンドラが新国王に即位することを告げるが、バラーラデーヴァの策略により妨げられる。
デーヴァセーナは幽閉され、シヴァガミは生まれたばかりの子供を抱えて国を逃げだす。
バーフバリの凱旋
カッタッパから父の生涯を聞かされたマヘンドラはバラーラデーヴァに対して兵を挙げる。
両軍が入り乱れて戦う中、デーヴァセーナは悪魔祓いの火の儀式を執り行い、カッタッパとアヴァンティカを連れてシヴァ寺院に向かう。
バラーラデーヴァは激しい戦いの末にマヘンドラに敗れ、デーヴァセーナが集めた小枝の山に倒れ込み、マヘンドラは剣で彼の膝を串刺しにする。
そこに儀式を終えたデーヴァセーナが到着し、動けなくなったバラーラデーヴァを生きたまま焼き殺す。
バラーラデーヴァを倒したマヘンドラはアヴァンティカを王妃に迎え、デーヴァセーナやカッタッパが見守る中でマヒシュマティ国王に即位する。
戴冠式が執り行われる中、黄金のバラーラデーヴァ像の頭部は河に流され、滝の下の世界に崩れ落ちていく。
バーフバリ2王の凱旋の感想とレビュー
バーフバリ伝説誕生の続編かつ完結編です。
やっぱりこういう映画は大好きですね。ストーリーとしてはバーフバリが王様になり、追放になり、そこから王座を奪還するところまでがストーリーでした。
ちなみにおおむね140分くらいの映画ですが、110分くらいは過去の回想でバーフバリがどうして王位を追放されたかが描かれております。
本当はマヘンドラとバラーラデーヴァの戦いは3部作として描きたかったのではないかなと思います。
正直どういった切り口でレビューを書こうか悩みますが今回は登場人物ごとに書いていこうと思います。
絶対的主人公バーフバリ
作中ではシヴドゥ・マヘンドラ・バーフバリ・アマレンドラ・バーフバリを一人の人物が演じています。
絶対的主人公であり、絶対的王者であるバーフバリです。
映画の優雅さのほとんどはこのバーフバリのカリスマ性によって保たれています。生まれもっての天賦の才と人をひきつける魅力、天才的な閃きを持ってマヒシュマティ王国を絶対的な王国へと導いていきます。
バーフバリのすごいところは単に強いというだけでなく、その天才的な軍略にあります。近作でも弱小クンタラ王国が攻め入られたときにカッタッパと二人だけで撃退できたのも、今ある戦力を最大に活かして戦うことができるからですね。
バーフバリがおもしろいのは映画にありがちなゴリゴリにアクションだけを押しているのではなく、三国志で言えば、諸葛孔明のような頭のよい知略と、呂布のような絶対的な強さを持ち合わせてこれまでに無かったカリスマ性を観ている人間にまざまざと見せ付ける魅力的なキャラクターがいるからだと思います。
そしてその中で愛する女性や守るべき民を持っているからこそ、強さだけが全てになりがちなアクション映画にさらなる多くの深みが出てくるのです。
バーフバリ2王の凱旋では新しくバーフバリとデーヴァセーナの恋物語が出てきます。1のときのアヴァンティカとシヴドゥのような軽さはなく、一国の王子と王女の恋愛ですからそれなりの壮大なストーリーが必要ですが、今回はピンタリとの戦争の中で互いに距離を一気に縮めます。
ここらへんはアヴァンティカとシヴドゥのようなまどろこっしい感じよりも一瞬で惹かれあった感じですね。
個人的にはもっとバーフバリとデーヴァセーナの恋物語は長くあってもいいかなと思いました。これも尺の問題なのでしょうが、もう少しデーヴァセーナが惹かれていく姿があったほうが1であんなにいじめられたデーヴァセーナが浮かばれないかなと。。。
ちなみに今回はインド映画特有の作中の歌と踊りはデーヴァセーナが船でマヒシュマティへ向かうところで出てきます。船が白鳥のように飛んでいきますが、もう特につっこみません(笑)
裏の主役 カッタッパ
実は今回、王の凱旋で最も評価が上がったのはカッタッパだと思っています。伝説誕生の時もそれなりに存在感がありましたが、今回はバーフバリを支える人間として旅を出た時に献身的にバーフバリを支える場面がとても印象に残っています。
ゴリラのような体格でスキンヘッド、強面の彼がバーフバリと一緒に旅に出てバーフバリのキューピッド役になる姿を見ているとなんとも微笑ましかったです。
そして伝説誕生の最後がカッタッパこそが裏切りの張本人であったことが最大の謎であったこともあり、実はバーフバリを最も盛り上げているのはカッタッパなのです。
私の愛読書である新渡戸稲造の武士道に出てくる「義」と「忠」と「勇」という概念を表す人間こそカッタッパなのです。
壮大な嫁姑問題の物語
伝説誕生ではバーフバリの世界観を作るためにまずはシヴドゥの活躍が甚だしかったですが、王の凱旋ではもう一つ女性の活躍が極めて目立ちました。
バーフバリは純粋な男ですが、一方でバーフバリを惑わすのは二人の女性デーヴァセーナ(妻)とシヴァガミ(母親)です。
いつの時代も嫁姑問題は勃発するもので、バーフバリという超カリスマ王が究極死んでしまったのはこの壮大な嫁姑関係の悪化と言えると思います。
とにかく自分が許せないものはとことん許せないデーヴァセーナと絶対的な王者でないと気がすまないシヴァガミ。根本的に龍と虎のような関係である二人は互いに戦う運命にあったのでしょう。正直バーフバリとバラーラデーヴァよりも怖いっす、、、、
シヴァガミの犯したたった一つのミス
個人的にシヴァガミについて語らせてください。
バーフバリを育てあげたのはシヴァガミです。
バーフバリが持つカリスマは自身が生まれもった才能もあるでしょうが、引き出したのはまぎれもなくシヴァガミです。
「この宣言を法と心得よ!」
この言葉だけで彼女がとんでもないリーダーシップを持っていることがわかるでしょう。逆に言えばこの言葉だけで民が国母として従うのはまぎれもなく彼女自身にもカリスマがあり、王としての素質があったにほかなりません。
増して彼女は自分の夫が障害を持っているかつ小心者であるがゆえに突如女王となったのです。その心労たるや壮絶なるものがあります。
バーフバリにはバラーラデーヴァというライバルがいましたが、バラーラデーヴァというダークサイドに落ちたものの、もう一人の天才を作り上げたのもシヴァガミなのです。
この二人の天才がいたからこそ、カーラケーヤ族を撃退できたとも言えますし、どちらか一人ではもしかしたらカーラケーヤに滅ぼされていたかもしれません。
残念ながら、バーフバリを殺したのもシヴァガミでした。
彼女の犯したたった一つのミスは「息子バラーラデーヴァの悪事を見抜けなかったこと」ではありません。
息子が二人とも「人間」であることを忘れていたことだと思っています。
バーフバリもバラーラデーヴァも互いに天賦の才を持ち、人の上に立つ存在だと思いますが、残念ながら二人とも人としては未熟な面がありました。
当初バーフバリを旅にいかせたのも「人間」として成長させるためでした。それがいつしか自分の思い通りにならないことにいら立ちを覚え、王の集権に固執して、バーフバリを人として向き合わなくなりました。
バラーラデーヴァについても結局王に任命できなかった償いが、王宮を与えるというビジネスの関係で済まそうとしてしまったことが一番の問題だと考えています。バラーラデーヴァが一番傷ついたのは「シヴァガミが生まれたばかりの自分でなく、バーフバリに優先的にに乳をのませた」という極めて人間らしい理由だったと思っています。
バーフバリ2王の凱旋の最後に
バーフバリ1伝説誕生と比較して、カッタッパやシヴァガミがとてもいい味を出していたと思っています。
もちろん神の化身のようなバーフバリですが結局は私たちを同じ人間であり、この映画の物語も極めて人間らしい愛憎により物語が推移しています。
もちろんそういう身近な愛憎に親近感を覚えるからこそ私はバーフバリの映画に惹かれます。
なにしろ壮大な嫁姑戦争があり、マザコン兄弟が母の愛を勝ち取るために争うのです。そしてそれをカッタッパが右往左往しながら一生懸命形にしようと走り回る。
本作はそんなほのぼの物語をスペクタクル超大作にして私たちのいつもの日常をより煌びやかにしてくれる作品だと思います。
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