コアなファンを持ち続けている鬼畜映画セルビアンフィルム。作品としては「鬼畜・残酷・人でなし」という点で非常に有名な映画ですが、本作をレビューしていこうと思います。
もちろん、見終わった後につらい気持ちになるなど、ネガティブな感情は否定できませんし、人に勧められるような作品ではありませんが、それでもやはり後世に残る最悪な映画として一つの才能だと認めざるを得ないでしょう。
映画の概要
キャスト
スルジャン・トドロヴィッチ セルゲイ・トリノフヴィッチ イェレナ・ガウリロヴィッチ
スタッフ
[監督]スルジャン・スパソイェヴィッチあらすじ
かつて伝説的なポルノ男優だったミロシュ。今は、すでに引退し妻と子供がいました。
ある日かつて共演した女優から高額ギャラの仕事のオファーがきます。仕事を受けるか迷う彼でしたが、妻と子供を養うお金が欲しかったため仕方なく仕事を受けることにします。
当日高級車が彼を迎えに来て、そこで、仕事の内容を聞きます。その仕事は大富豪であるクライアントの欲望に応えられる芸術的なポルノ映画を作ることでした。
しかし、実際はブラックマーケット向けの映画撮影で、撮影当日、ミロシュはハイになる薬を飲まされ、その作品は殺人を含む常軌を逸した作品になるのでした。すでに関わってしまったミロシュ自身の逃げ場はなく、撮影は過酷さ・残酷さを増していくのでした。
ネタバレ感想・解説
史上最も物議を醸した映画の1つがこの「セルビアン・フィルム」ではないでしょうか。この作品はセルビアという国の歴史と文化への深い批評とともに後半からの怒涛の暴力的で性的な内容が多くの批評と評価を受けています。
ちなみに、この映画が上映された際に、映画館に「この作品には倫理的に問題ある描写があります」なんていう立て看板が出るのはこの作品くらいでしょう。なお、世界中で上映中止の映画館も多くあったそうです。
タブーへの挑戦
人類最悪の行為は何だろうか、人を傷つけることか、人を殺すことか。
答は尊厳を奪うことでしょう。誰の?
「弱い人」のです。
弱い人と言えば、女性、高齢者、障害者、子供の順でしょうが、この作品では当然限界を目指します。さらにそれに近親〇姦まで入れてしまうのですから、作品の本気度を感じます。
そしてこの作品は芸術(エンタメとしての)表現の自由度の是非を問いかけてもいます。
セルビアの持つ闇
一部の人はこの映画はセルビアの戦争と政治的混乱を揶揄しているといいます。
困窮する経済環境の中で人間の尊厳を切り売りしながら生活しなければならない人たちの苦しみを表しているという人たちもいます。
一部の権力者が権力を握り、弱者の尊厳を踏みにじるようなこの映画からそう遠くない現実がそこにはあるのかもしれません。
倫理観と映画
多くのレビューサイトで批判を受けているこの映画ですが、個人的にはフィクションである以上は案外すんなりと受け入れてしまいました。
結局人間の最大の武器は想像力であり、それを完全否定してしまうのはどうしてもナンセンスだと思いますし、この手のホラー映画を見慣れている自分からすると、倫理観のオンオフの切り替えがしっかりできてしまっていることに気づきます。
まるで外国では「人を焼いて食べる文化がある」と聞いて、ふーんと思ってしまうのに似ています。
そうは言っても簡単に人には推薦できる映画ではないですよね。でも普通の映画には飽きた、という人はたまには人の道を外してみてはいかがでしょうか。
セルビアンフィルムが4Kリマスターで戻ってくる
鬼畜・残酷・人でなし、と言われるこの映画ですが2022年には4Kリマスターとして今なおコアなファンを生み出し続けている作品になっています。