あらすじ
社本信行は街の小さな熱帯魚店を営むおとなしい性格の男です。
彼は数年前に妻を失い、再婚した妻の妙子と自分や後妻の妙子に反発しグレている娘の美津子とともにぎくしゃくした家庭になっていました。
ある日美津子がスーパーで万引きして捕まったと電話あがり社本夫婦が誤りに行くとそこで村田という男が仲裁にはいってくれます。
彼はアマゾンゴールドという熱帯魚店を経営しており、高級スポーツカーに乗り、社本の店の何倍も儲かっていそうでした。
ある日社本からの提案で美津子をアマゾンゴールドで働かせる運びになります。
娘との折り合いが悪い社本は提案を受け入れ、そこから村田との交流がはじまります。
村田は人のいい見た目とは裏腹に社本家をむしばんでいきます。
まずは妻の妙子が村田によって強姦されます。
そんなことを知らない社本はある日村田から高級熱帯魚を仕入れて売る儲け話を持ち掛けられます。
呼ばれて応接室に行ってみるとそこには投資をしたいという男がおり、1000万を持ってきました。
村田は現金を確認すると、彼の飲み物に毒を混ぜ殺してしまいます。
驚いた社本でしたが、村田夫婦の勢いに押され、村田の隠れ家で死体の始末を手伝わされます。
彼らは投資詐欺と殺人を繰り返す犯罪者でした。
ネタバレ解説~埼玉愛犬家連続殺人事件~
冷たい熱帯後は1993年に実際に起きた埼玉愛犬家連続殺人事件が元になっています。
以下Wikipediaより
埼玉愛犬家連続殺人事件の概要
埼玉県熊谷市にすむ関根元と風間博子が経営するペットショップ「アフリカケンネル」で愛犬家に対して、血統のいい犬を売りつけその子供が生まれたら高値で引き取ると言う投資取引を勧めていました。
しかし、実態は生まれた子供を引き取る際に難癖をつけて金を出し渋る投資詐欺で、関根は顧客と揉めた際は殺害していたといいます。
埼玉愛犬家連続殺人事件の異常性
この事件の異常性は死体の処分にあります。
関根自身が「ボディを透明にする」という表現をしたとおり、関根たちは殺害した相手を風呂場でバラバラに解体し、骨と肉を分けたうえで骨はドラム缶で灰になるまで焼き、肉は数センチに切断したうえで、山中に投げ捨てられたと言います。
そのため、最低でも4人を殺害したとされていますが、遺体なき殺人事件となっています。
ネタバレ感想
園子温監督の作品は数多くあれど、この冷たい熱帯魚をNo1に押す人もいるのではないでしょうか。
実在の事件をモチーフに映像化した作品で、「事実は小説より奇なり」といえる作品でしょう。
園子温ワールド全開
事件自体がとんでもない内容のため、それを映像化するのには限界があるとはいえ、彼はやってくれました。
飛び散る肉片、必要以上のヌード描写、人の弱みを突くセリフ、狂った社本、もう書き出すと書ききれないくらいに映画の枠を超えた作品になりました。
これぐらい容赦ない映画を作れるのは日本でも少ないでしょう。見る人を選ぶ映画ですが、万人受けせずともコアなファンに響く素晴らしい作品だったと言えるでしょう。
みんな狂ってる
冒頭妙子が冷凍食品オンリーで飯を作ってるあたりから雲行きが怪しいのですが、蓋をあけてみれば全員狂人で見ているこちらのモラル判断基準もどんどん下がっていきます。
でんでん演じる村田は当然きっすいの殺人鬼で、とにかく楽しそうに人を操り、殺します。
妻の愛子は村田と同じくらい頭のネジが外れており、もう”ヤる”=(殺る・セッ●スする)
という文字しか頭にないとんでもお姉さんです。ラスト社本と殺し合うところなんて本人も殺ってるのか、ヤってるのかわからなくなってますからね。個人的に本作で一番印象に残ったキャラでした。
社本はもちろんラストに向けてのイカれ具合も素晴らしいですが、家庭がうまくいかない苦悩がひしひしと伝わってきます。必死に村田から逃げようとしたり、プラネタリウムに行って気を紛らわせようとしますが、そんなもの焼け石に水、マグマに水もいいとこ。
妙子と美津子はこの中では比較的まともである一方で、でんでんに乱暴されるところなんてやはり彼女の抱えるストレスや不満が爆発するようで見ていられませんでしたね。
とにかくみんな狂っていて、それが世界観としてしっかり映画としてちゃんとした作品になっていることがほんとうに素晴らしかったと思います。
最後に
本人は嫌がっているようですが、本作は家賃3部作と言われ実在の事件をとりあげた園子温監督の1つです。
もし冷たい熱帯魚が面白かったらこちらの愛なき森で叫べもどうぞ。