イン・ザ・トール・グラスの評価
★★★☆☆
メイズランナーをはじめ、迷路ものというのは決定版の映画がないジャンルかもしれません。
例えばキラーメイズなんかは発想がいいものの、名作と呼ぶにはもう2歩も3歩も欲しかった作品です。
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その点、元祖迷路映画といえば、映画「キューブ」じゃないでしょうか。
シンプルな3D迷路の構造の中で人間同士の醜さが露呈する、一つの完成形のような映画です。
さて、その点で見てもこのインザートールグラスというこの映画は完成度で言えば、完璧からはまだまだ遠い作品になってしまいました。
ひまわり迷路を見ると心がワクワクするように大きな巨大な草むらを見ると迷路のようにワクワクしてしまいますが、そのワクワクは冒険心として長く続くことはなく、途中で見る人間を困らせるようなわかりずらい内容になってしまいます。
死人は動かないとか肩車しながら進めば一定方向には勧めるなど、多くのアドベンチャー要素を持ちながらその視点は徐々に迷路から人間の罪のような非常に抽象的な内容に映っていってしまうことで作品そのものを楽しめなくなってしまったのが、残念な原因だと言えるでしょう。
イン・ザ・トール・グラスのあらすじ
カンザス州の一本道を走るベッキーとカルの姉弟。ふと草むらから男の子が助けを呼ぶ声が聞こえます。
カルは心配になり、子供助けに行きますが、入り込んですぐ二人はこの草むらの以上に気づきます。
この草むらは方向感覚、距離感覚が完全に狂ってしまう巨大な迷路の入り口だったのです。
声がするほうへ、向かっても中々たどり着けない二人はいつの間にか出口を見失ってしまうのでした。
イン・ザ・トール・グラスのネタバレ感想
スティーヴン・キングとジョー・ヒルが2012年に発表した短編小説『In the Tall Grass』を原作とした映画が本作品です。
よくあるスティーヴン・キングの投げっぱなし映画の一つで、キングの投げっぱなし映画と言えば映画セルなんかが記憶に新しいですね。
しかもさらにループものとくればこれはもう細かい辻褄なんかを気にしだすともう映画のストーリーは耳に入らなくなってきてしまいます。そのため、この映画を楽しむには「細かいことは気にしない」というおおらかな心が必要です(笑)
映画の発するメッセージ
元々短編の小説であるものを1時間半の長編に伸ばしているので少し間延びしているのはしょうがないでしょう。
しかし、それがこの映画を少し退屈なものにしてしまっています。
さて、この映画を簡単に解説するとこの映画は地獄の苦しみを再現している映画と見れます。
映画内に出てくるそれぞれのメンバーは各々が罪を持っています。
妊娠して安易に養子に出そうとする女、堕胎しろと迫る男、妹を愛してしまっている兄。
そういった、罪を背負っている人間がこの草むらに迷い込むと出られなくなります。出られなくなるどころか、何度も飢え死にや頭がおかしくなった人間に殺されることになります。
違った観点で見ていくと地獄というのは生前の罪によってその罰を受けると言われています。例えば北欧神話のヘルの世界では、罪ある者は毒の川を渡るように言われ、その川の流れの速さから何度も転び毒を飲んで苦しむ、それが永遠に繰り返されるのです。
生前の罪は(殺人、堕胎、近親相姦など)全て繰り返される罰によって苦しめられます。
映画トライアングルで、一生船の中で殺され続ける主人公は、神話シシュポスの神話をもとに作られました。
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神の怒りを買ったシーシュポスは大きな岩を山の上に運ぶという罰をもらいますが、その山は山頂に上った瞬間に岩が下に転げ落ちてしまうという構造だったのです。
このように罪人への罪は終わることのない罰によって行われます。
だからこそ、トラヴィスとベッキーはラスト子供を産み、養子に出さないことに同意したからこそこの狂気の迷路から抜け出ることができたのだと考えられます。
最後に
ループものとしても迷路ものとしても中途半端な作品になってしまいました。
単純に迷路から脱出するために出演者たちが共闘するようなものを想像すると想定外の映画になってしまうことでしょう。