映画ドクター・スリープのあらすじとネタバレ解説【徹底考察】

今回はスティーブンキング原作の映画ドクター・スリープのあらすじとネタバレ解説です。

いや~面白かったです!まずはあらすじから見ていきましょう。

ドクタースリープのあらすじ

オーバールック・ホテルの事で生き残ったダニーは父親に殺されかけたトラウマに悩まされていました。同時に彼は不思議な能力「シャイニング」を持っており、その能力にも騙されていました。彼はホテルで出会った同じ超能力の持ち主であるハロランから(前作シャイニングで死んでいる)能力の使い方を学びながら次第にシャイニングを自分のものにしていきます。彼は頭の中に作った魔法の箱に悪霊を閉じ込めることができるようになりました。

ダニーは大人になり、ダンと呼ばれています。ダンは父親同様アルコール依存症に悩まされており、喧嘩、盗み、女の最悪の生活を送っていました。人生のどん底にいたときハロランが現れ彼に更生を促します。

彼はバスに乗り込み、職をもとめて旅立つのでした。フレイジャーの街で降りた彼はそこで出会ったビリーの紹介で住む家とホスピスで働くつてを手に入れながらアルコール依存症と戦うことを誓うのでした。ホスピスで働く彼はいつしか死期が近い人の傍で寄り添い、眠るように息を引き取る手伝いをするようになります。患者はダンのことを「ドクタースリープ」と呼ぶようになりました。

同じころ、“トゥルー・ノット”と呼ばれる集団のローズとクロウは旅を続けていました。彼らは他人の”スチーム”と呼ばれる生気を吸い取り永遠に近い命を手に入れていたのです。ローズとクロウは新たにアンディという少女を味方に引き入れます。アンディは言葉で他人を自由に操ることのできるシャイニングの持ち主でした。

ローズたちは特にシャイニングを持つ子供を狙ってはさらっては拷問し、スチームを吸い取っていました。

時はたち8年後。

ローズたちは野球少年を拉致しスチームを吸い取っていましたが、その現場を強力な力を持つアブラという少女に見られます。ローズは強力なアブラのスチームをぜひとも吸い取りたいと彼女を探し始めます。

アブラは見てしまったことが遠くで実際に起きている子供誘拐殺人事件であると知り、同じような能力を持っているダンに会いに行きます。はじめはアブラにかかわることに悲観的だったダンですが、現れたハロランからの忠告を受けアブラを守ることに積極的になっていきます。

ダンはあえてアブラを使ってローズたちをおびき寄せることを提案します。ダンとビリーは人気のない場所へローズたちをおびき寄せライフルで狙撃することにしたのです。結果、計画は成功し、トゥルー・ノットたちの多くのメンバーを消すことに成功します。しかし、不用意にアンディに近づいたビリーが、アンディの「死ね!」の言葉に逆らえず自分の頭を撃って即死してしまいます。悲しむダンですが、メンバーのクロウが足りないことに気づきます。

クロウはそのころアブラの父親を殺してアブラを誘拐していました。

車に乗せられたアブラはクスリを盛られ意識がもうろうとし、シャイニングが使えません。ダンは何とか助けようと自身のシャイニングをフル活用しアブラと協力してクロウを倒します。

結末ラスト

ダンとアブラは最後のローズを迎え撃つ場所としてオーバールックホテルを選びました。

ホテルに着くとダンはボイラー室のスイッチを入れた後、ホテルの部屋で父親が行った惨劇のあとを見つめます。ボウルルームのバーカウンターでは、父親そっくりのバーテンダーから酒を勧められますがそれを断りました。

ローズが到着するとロビーで迎え撃ちました。ローズの意識を庭の迷路へ飛ばしローズを意識の中の魔法の箱へ閉じ込めようとしますが失敗します。劣勢になるとアブラに逃げるようにし、ダンが一人でローズを迎え撃ちます。

はじめはダンに興味のなかったローズですが、ダンがすさまじいシャイニングを持っていることに気づき仲間になるように誘います。ダンはそれを断りましたが、ローズは仕方なくダンのスチームをどんどん吸っていきます。

ダンはそれを待っていたかのように意識の中に閉じ込めた魔法の箱を解放します。その箱にはこのホテルの悪霊たちが封印されていました。悪霊たちはローズへ襲い掛かり彼女を八つ裂きにします。

それが終ると今度はダンの方へ向かってきます。「ハロー、ダニー」そう言って彼らはダンに襲い掛かります。

同じころアブラはこのホテルの悪霊だけでなくダンの悪霊にも出会います。アブラは自身のシャイニングを使ってダンを悪霊から取り戻します。ダンは当初の計画通りボイラー室を爆発させ、ホテルを燃やしました。

その数日後、アブラは自室でダンと話をしています。

シャイニングの所持者にとって生と死に境目がないためあのホテルで死んだダンはいまだにアブラと生きていくことができるのでした。

ドクター・スリープを徹底解説

スティーブンキングの名作「シャイニング」の続編であるドクタースリープです。映画シャイニングに比べると幾分世界観がはっきりしており、超能力としてのシャイニングがはっきり定義されており前作より理解しやすい内容でした。

シャイニングとは何か

作中不思議な超常的な力のことを総称してシャイニングと呼んでいます。他人の思念が読めたり、その能力は人によりさまざまです。特に子供のほうが強いシャイニングを保有しているようです。

前作「シャイニング」ではダニーは死の世界と生の世界をつなぐような能力を発揮していました。

なぜダニーはドクタースリープなのか

ドクタースリープとはまぎれもなく主役のダニーです。なぜ医者でもない彼がドクターと呼ばれるかというと、アルコール依存症と薬物から立ち直った彼がついた仕事が終末医療のホスピスでのスタッフだったころの話に起因します。

彼は死人や死後の世界とコンタクトできるその特殊な能力から、死期が近い相手に寄りそうことにしました。いつしか患者たちは死ぬことに恐怖を覚えず、眠るように息を引き取っていったことからダニーのことを「ドクタースリープ」と呼ぶようになったのです。

スチームとは何か

作中スチームが重要な役割を担うスチームですが、日本語では生気と表現されることが多そうです。ローズたちはこのスチームを吸うことで生命力を補充するように何百年たっても若く生きていくことができるようです。特にシャイニングを持つものやシャイニングを持っているけど気づかない者(一流アスリートや弁士など)は強い生気を持っており、さらに子供のほうがその量は多いようなのでローズたちはそういう子供たちを探してはスチームを定期的に採取して特別な瓶に保管していました。

オーバールックホテルの悪霊たちは何者か

これは前作を見ていない人にはわかりずらいことだったでしょう。オーバールックホテルは私の個人的見解ではあの世とこの世の境目が薄くなっている場所なので1作目のシャイニングではあの世とこの世が1枚の鏡の表裏のように入り乱れる場所でした。ダニーは自らのシャイニングを使い、あのホテルから脱出後少しづつあそこの悪霊たちを自分の精神の中の魔法の箱に封印してきました。強敵であるローズを倒すために一時的に彼らを解き放ちます。悪霊たちはシャイニングを持つ強いスチームを好むためダニーの思惑通り彼らはローズに群がりました。詳細はこちら

ドクタースリープから見た映画シャイニングにおけるジャックの正体とラストを考察&解説

トゥルー・ノットたちは何者か

作中彼らの詳細な説明はありませんが、何かしらのシャイニングを持っている集団であり、他人のスチームを吸うことによって不老不死を手に入れようとしている存在です。彼らは徒党を組み、新たな仲間を迎え入れては住む場所を移動しながら生活しています。それもそのはず行く先々でシャイニングを持つ小さい子供からスチームを吸い取っては殺しているからです。

特にスチームを吸い取る際に「苦痛が大きいほど多量のスチームが採取できる」ことから小さい子供にも関わらず拷問に近い身体的な苦痛が加えられます。

アルコールの持つ特別な意味

シャイニングにおいてもドクタースリープにおいてもお酒は重要な意味を持ちます。シャイニングでもダニーの父親が狂ったのはバーでお酒を飲んでからです。原作でも父親がアルコール依存症であることが明らかになっていますし、元々このホテルで起きた惨劇はアルコールによるものであると言われています。(家族を惨殺し、自身もホテルの部屋で自殺した事件)

ドクタースリープでもダニーは自身が父親のようになりたくないと言いながら結局アルコール依存症になってしまいます。そしてホテルに舞い戻った時に父の幻影からお酒を勧められます。これはホテルでのあの世とのこの世(わからない人は私の1作目のレビューをご覧ください)の切り替えに重要な役目を果たしたのがお酒であり、あの時点でもしお酒を飲んでいたらダニーもホテルの悪霊たちにやられていたことでしょう。

余談ですが、スティーブンキング自身もアルコール依存症の経験があります。それを悪魔の誘惑のように感じたと証言しているという記事を読んだことがあります。

ネタバレ感想・レビュー

前作のシャイニングから何十年たったあとの続編ということでファン待望の作品だったはずです。結果的に大満足でしょう。前作がキューブリックによる神がかり的な作品だったことからすれば今作でメガホンを取ったマイク・フラナガンの手腕はお見事と言わざるをえないでしょう。

それはなぜかをここで書いていきましょう。

続編だが全然違う作品に

続編の宿命は内容の陳腐化にあります。結局前作の世界観を引き継ぎすぎると二番煎じと言われ、全く違うものを作ると求めていたものと違うと言われる。それが2作目を作る難しさなのです。ましてこれが完璧主義者キューブリックが作り上げた芸術的作品で、さらにキングの原作を完全に無視して作り上げた(それによりキングは映画のシャイニングを酷評している)作品の続編を作ることは並大抵の想像力ではできなかったことでしょう。だからこそ、マイクはキューブリックの背中を追うのをやめて1作目のシャイニングとは全く違う独自の作風で作品を作り上げました。

例えば二つの作品の死生観は全く違います。前作シャイニングでは生死は鏡の表裏のように身近だが全く真逆の世界として描かれているものの、本作ドクタースリープでは生死の世界に境界を作らず死は生の延長として作られています。これらは似ているようで全く違うわけで、この違いはそれぞれの監督の死生観の違いから生じるものです。少し話は脱線しますが、死生観というのは国や宗教、生い立ちによって全く違うものでどちらが正しいというものではありません。ですのでこの違いというのはそれぞれ続編(シリーズもの)として共存できるわけなのです。

シャイニングをよりわかりやすい作品に

前作シャイニングがその設定の曖昧さから色々な解釈ができるところを今回は極めてきめ細やかに描写を進めています。特にシャイニングについての説明が全くなかった前回からすれば今回はその設定や世界観をより詳細に表現しているためドクタースリープを見た後でシャイニングを見るとまた理解が深まります。

ただまずはシャイニングから見ることを強くお勧めします。そしてもう一度早送りでシャイニングを見てみましょう。