キャビンフィーバーのキャストと評価
製作・監督・脚本: イーライ・ロス
製作: ローレン・モウス/サム・フローリック/エヴァン・アストロフスキー
脚本: ランディ・バールスタイン
撮影: スコット・ケヴァン
音楽: ネイサン・バー/アンジェロ・バダラメンティ
出演:
ポール:ライダー・ストロング
カレン:ジョーダン・ラッド
バート:ジェイムズ・デベロ
マーシー:セリナ・ヴィンセント
ジェフ:ジョーイ・カーン
評価:80点/100点
イーライロスらしい作品。
ただし、彼にしてはグロは少なめでどちらかと言えば人間の汚い部分を見るつらさがある。
キャビン・フィーバーのあらすじ(前半)
5人の若者たちは大学の試験が終わり、休暇を過ごすために車に乗っている。
運転しているマーシーとジェフはカップル。荷台の3人は友人だ。
途中店に立ち寄ると店先に女の子が座っている。
ポールはちょっかいを出そうと近づく彼女に噛まれてしまう。
店主は黒人に偏見を持っている少し危ない男で、森に気を付けろと言う。彼女の父親も娘に近づくほうが悪いと少しよそ者に冷たい人であった。
彼らは必要なお酒だけ購入し、ロッジへ向かった。
ロッジに着いて、早速マーシーとジェフのカップルはベッドで楽しむ。
ポールとカレンは川で泳いでおり、ポールはカレンに恋心を抱いており、キスまでする。
パートは森の中でリスを狙って銃を撃って遊んでいたが、誤って人を撃ってしまう。
しかもその人は、皮膚がただれて血を流している。慌てて謝罪するパートだが、相手の様子がおかしいことに気づき逃げ出した。
その夜キャンプファイヤーをしながらポールは自分が通っていたボーリング場の怪談話をしていると、グリムという男が仲間に入れてほしいとやってくる。はじめは断る一行だったが、ハッパを持っているとわかると輪に入れることにした。
しかし、しばらくして雨が降ってきたため5人はロッジに戻り、グリムはハッパをもって後からロッジに行くことになった。
その後、ロッジで盛り上がっているとノックの音がする。グリムだと思って開けると、そこには昼間の皮膚のただれた男が立っている。
バートは伝染病だと言い、ロッジに入れるのを拒んだ。男はロッジに入ることを諦め、車に乗り込んで行こうとしていた。
5人はあわてて武器を持って男を止めにいく。彼を車から出し、威嚇していると謝ってスプレーと火が合わさり男を燃やしてしまい、走り去る。
翌朝、ジェフとバートは、レッカー車を頼むために街へ向かうが途中見かけた家に立ち寄る。そこでは中年女性が豚を捌きながら、病気の豚だと言って怒り狂っていた。
事情を話すと、無線でレッカーを呼んでくれることになるが、自分たちが火をつけてしまった男が女性のいとこのヘンリーだとわかり、慌てて逃げ出した。
一方で、マーシーは、助けを呼ぶために周りを散策していたところ、無人の別荘を見つけるが、すでにそこにはジェフとバートがおり、結局助けを呼ぶことができなかった。
キャビン・フィーバーのあらすじ(後半)
そのころ、ロッジには、奇妙な雰囲気の保安官代理のウィンストンが訪ねてくる。
事情を聞き、翌日の午後までにレッカーを寄越すと言って去っていった。
また、ポールとバートが車を洗っていると、グリムの犬が襲ってくる。
ロッジに逃げ込んだ2人は、カレン、マーシー、ジェフと今後について相談する。カレンは体調が悪いと言って、寝ていると、カレンが発病し、皮膚が溶け始めていた。
4人はカレンを別の建物に移動させ、お互いに初期症状が出ていないか確認しあった。
ポールは助けを呼びに行く。
ジェフ、バート、マーシーが無断で侵入した別荘で電話を借りようとするが、覗きをしていたと間違えられて追い払われてしまう。
4人は疑心暗鬼になり、感染をひどく恐れるようになった。
やがて、バートは車を直すことに成功し、助けを呼びに行こうとするが、カレンの体調は想定より悪く車の中で血を吐いてしまう。その頃バートも発病し、焦っており、一人で助けを呼ぶために車を走らせて言った。
ジェフはカレンに触ったマーシーらを拒絶し、一人ビールを持って隠れることにした。
マーシーとポールは、絶望に駆られてしまい、寝てしまう。
しかしマーシーも発病し、ロッジの外に出て犬に襲われて死んでしまう。
犬はカレンを襲い、様子を見に行ったポールにも襲い掛かるが、ポールはその犬を銃で撃ち殺した。
ポールは、ヘンリーの遺体が貯水池に浮かんでいるのを見つける。
確認しようとして自分も貯水池に落ちてしまうが、感染源が水だということがわかった。
バートは最初に立ち寄った店で事情を話し、助けを求めるが、霊の子どもがまたバートに噛みついた。
そして店にいた子供の父と仲間たちが、バートを殺そうと追ってくる。命からがらロッジまでついたバートはポールに3人の男が彼らを殺しに来るという話をする。
ポールは、待ち伏せして3人の男たちを殺したが、バートは撃たれて死んでしまう。
ジェフを探すポールは、洞窟の中で感染して内臓が飛び出たグリムの遺体を発見する。
店の人間たちが乗ってきた車を見つけ、町へと急ぐポールだったが、ポールも発病してしまう。その後鹿を轢いてしまい、車が動かなくなったポールは逃げ続け、助けを呼ぶために他のキャンプをしていた若者にも接触するが彼らも逃げだしてしまう。
道路で横たわったポールはトラックに拾われ、病院に運ばれた。
しかし病院側は匙を投げ、治療は無理だと言った。
感染源を聞かれても、意識がもうろうとしているポールは話すことができなかった。
その後、ジェフはロッジに戻る。
水を飲まず、ビールだけを飲んでいた彼は発症していなかった。状況を確認するために一度ロッジへいき、惨状に目を覆うが、自分が生き残ったことを喜び始める。しかしつかの間、事態を収束しようとする警官隊に射殺され、死体はすべて燃やされてしまう。
同じころ店の主人が川で死んでいるシーンが出ており、感染している川の水を組む男の子と女の子の姿出る。彼らはその水でレモネードを作り、店先で警官たちに売っていた。また、その脇では「南部の天然水」と銘打って感染した水を都市部へ運ぶトラックが出発する。
店には黒人が自分の預けた猟銃を取りに行く。最後に店主が「やれやれ」と言って終わる。
キャビンフィーバーのネタバレ解説・感想
イーライロス好きであれば、もちろん絶対見なければならない作品キャビンフィーバー。
実際彼が19歳の時に皮膚の病気にかかったことをもとに作られている作品だそうですが、彼の作品らしい「現実味」が感じられる作品に仕上がっています。
イーライロスの良さが出る作品
彼の良さはモンスターとかが出てくるSF系ではなく、ただただリアルにありそうな怖さです。もちろん、スプラッタ描写があったりする部分も怖さを助長させるのですが、一番は現実の中に潜む怖さです。
映画ホステルでは旅行中の男女が拉致されて変態にひどい目にあわされること、グリーンインフェルノは食人族ですが、わざわざアマゾンの奥地に不時着するほうが悪いです(彼らの文化ですからしょうがない)。今回のキャビンフィーバーの怖さはグロではなく、とにかく人間の薄情さです。
体調が悪い人がいる=助けるのが当たり前です。ですが、伝染病になった瞬間に感染した人は大逆の犯罪人のように差別の対象になるのです。
今回ははじめの感染者の男を5人でいじめます。その後カレンが感染すると、好意を寄せていた男さえも汚いものを見るような目でカレンを物置に監禁します。
そして、その負の連鎖はとにかく止まることがありません。
結局関係のない人も巻き込んで自分が助かるために相手を殺していく連鎖が止まらないのですが、感染源が水ということも結局誰一人助からないことを示唆しています。
ラストはどう解釈するか?
道の途中のお店でラスト2つのシーンがあります。
一つは黒人が預けていた猟銃を取りに行くシーン。もう一つは老人が「やれやれ」というシーン。
イーライロスは皮肉が大好きなのでこれらももちろん皮肉です。
つまり、店主は黒人をニガーと呼んで猟銃を指さして「これは黒人用だ」と言いますが、あれは「黒人が来たら射殺してやる」ではなく、本当に「黒人のもの(所有物)」ということになり、決して店主は黒人を差別していません。
むしろ、この映画で起きる「差別公道」は感染者をとにかく遠ざけて相手を殺そうとするその動作にあります。
だからこそ、老人が「やれやれ」と言ってしまうのです。
皮肉屋不条理=イーライロス
不条理を得意とするイーライロスですが、今回も全く持って非情でした。
そもそも水が媒介ということで、登場人物を誰一人助けるつもりがありませんでした。映画アフターショックでも結局最後は津波で全員死亡というバッドエンドでした。
また、百歩譲って水を飲んでいなかったマーシー(賭けでビールだけで過ごすことを宣言していたから)でさえも、感染していないにも関わらず感染リスクがあるかも?という理由で警官に射殺されてしまいます。
そしてその射殺した警官もしっかり水を飲んで無事アウトです。
最後に
リブート版も作られていますが、リブート版のほうが評判は良くないですね。
私も見ましたが、リブート版はスプラッタ要素が少し強いのと、人間の薄情さよりも単に感染によるパニックが色強くなってしまっているため、イーライロスらしくない作品になってしまいました。
やはりノックノックしかり、この人の作品はあまり気持ちよく見れるものではありませんので見る方は注意して見てください。