映画アイデンティティーのキャストや評価
<スタッフ>
監督 ジェームズ・マンゴールド
脚本 マイケル・クーニー
製作 キャシー・コンラッド
製作総指揮 スチュアート・ベッサー
音楽 アラン・シルヴェストリ
撮影 フェドン・パパマイケル
編集 デヴィッド・ブレナー
<キャスト>
ジョン・キューザック(エド)
レイ・リオッタ(ロード)
アマンダ・ピート(パリス)
ジョン・ホークス(ラリー)
レベッカ・デモーネイ(カロライン)
クレア・デュヴァル(ジニー)
ウィリアム・リー・スロット(ルー)
ジョン・C・マッギンリー(ジョージ・ヨーク)
レイラ・ケンズル(アリス・ヨーク)
ブレット・ローア(ティミー・ヨーク)
ジェイク・ビジー(ロバート・メイン)
プルイット・テイラー・ヴィンス(マルコム・リバース)
アルフレッド・モリーナ(マリック医師)
ホームズ・オズボーン(テイラー判事)
映画アイデンティティのあらすじ
死刑囚マルコム・リバースは多重人格障害の疑いがあり死刑執行の前夜、彼の罪を問う再審議が行われようとしていた。
一方、大雨のために裏寂れたモーテルに一晩閉じ込められることになった11人の男女は何者かに次々と殺されて行く。
女優の運転手であるエドは次第に連続殺人の奇っ怪さを感じ始め、ある瞬間に突如としてモーテルから審議室に意識が飛ぶ。
そこでマリック医師から、自分はマルコムの人格の一人であること、マルコムの生み出した人格の内誰かが殺人鬼であること、医師の処置により今晩マルコムの人格の全員が引き合わされたことを聞かされ、モーテルはマルコムの精神に存在し、そこでの一連の殺人劇は殺人鬼の人格が他の人格を消滅させているものだと悟る。
モーテルに戻ったエドはロードこそが殺人鬼だと確信し彼の抹殺に成功する。
これによりマルコムは死刑を免れ入院することになったが、その護送の最中ティミーの人格が現れマリック医師とドライバーは殺害される。
映画アイデンティティの結末・ラストのネタバレ解説
個性派俳優が集まるなんとも不思議な映画アイデンティティ。
アイデンティティを辞書で引くと、主体性や自己同一性と出てくる。これでは抽象的すぎてなんともわかりづらい。もう少しかみ砕くと「自分が何者であるかを認識すること」です。
本作はこの「アイデンティティ」という単語一つで全てが理解できてしまう映画であり、内容よりもこの題名に感服しました。では結末を中心に解説していきます。
疑問点①続く連続殺人と犯人は誰だ!
雨で立往生したメンバー10人がモーテルに泊まることになる。
それぞれが訳ありであり、一癖も二癖もある。そもそも主人公であるエドですら開始10分で女性を車で轢いてしまうしまうという主人公らしからぬ立場からスタートする、
物語はこの雨のモーテルと裁判所らしき部屋で裁判官と弁護士との話を行ったり来たりする。
そのモーテルで女優が殺されてしまう。
しかもその首がランドリーで回っているという猟奇的な殺人事件である。
まず疑いが向くのがモーテルに泊まっていた殺人犯。
トイレに縛っていたはずなのにいつの間にか抜け出していました。
しかしその後殺人犯も殺されてしまい、それだけでなくモーテルにいる住人が一人また一人と殺されていきます。
果たして動機は何だったのでしょうか?
疑問点②不可解な点が多すぎる展開
人は殺されるのに誰一人として叫び声を聞いた人はいません。
例えばモーテルで殺されたカップルがいますが、特に彼氏が殺されたとこいに彼女が近くにいたのに彼氏は特に叫び声をあげることなく死んでいます。
女優のキャロラインは名前は出てこず最後まで「女優」という名称で呼ばれ続けていました、まるで特に芸名がないかのように。
囚人のロバートはうまく逃げ出し、モーテルを脱出。道をいき、最後は川を越えて無事逃走完了、、、、と思ったらまさかのモーテルに戻っていました。まるでタイムワープしたかのような展開に本人も唖然としていました。
車で轢かれて死んでしまったジョージは完全な事故死であったにも関わらずそのポケットにはルームキープレートが入っていました。こんなことは不可能です。
しかも最後は死体がきれいさっぱりなくなっているではありませんか!
どうも現実世界とは乖離しているかのような展開が起きます。
疑問点③互いの共通点は?事件の関連性は?
これは後ほど判明しますが、全員なんと誕生日が一緒でした。
しかも全員アメリカの州の名前が必ず入っているため明らかに全員一定の法則で名前が決められています。
しかも事件が起きるたびに部屋のルームキーナンバーのプレートが落ちているのです。
それが10からはじまりだんだんカウントダウンしていきます。
今日であったばかりでしかも雨で立往生という偶然の中の偶然が生んだ10人の出会いがなぜか一つの殺人に結びついていきます。
オチ解説ネタバレ① 作品のネタバレ
エドをはじめすべての登場人物はマルコムという連続殺人犯の同一人格であることがわかります。隔離性同一性障害といういわゆる多重人格です。
過去におきた一連の殺人事件はマルコムの犯行ではなく、マルコムの中にある別の人格がやっていたのです。
そしてモーテルでの出来事はこのマルコムの頭の中で起きた多重人格殲滅作戦なのです。
現実世界ではなくマルコムの頭の中の世界なので色々な不都合な設定は排除されているのです。例えばマルコムの人格の一人の囚人が逃げ出そうとしても絶対に最後は必ずモーテルに戻ってきてしまうことがそうです。
ナンバーがいつでも死体のそばにあったのもこれで納得ですね。マルコムは無意識のうちに自分の中の人格の残り人数をカウントしていたのです。
オチ解説ネタバレ② 多くの伏線
今思えばその予想はいつでもできました。
はじめの導入で「売春婦に置いてきぼりにされた男の子」のくだりがありましたが、あれは明らかにマルコムのことで、モーテルにも売春婦を異常に嫌う男がいました。
モーテル経営のラリーですね。ではラリーがマルコムかと言われるとそうではありません、
作品初期の段階でいきなり、ロードが背中を刺されてシャツが血だらけになっている映像があるので明らかにこいつが殺人鬼の候補ナンバー1です。
車が爆発したタイミングから視聴者も気づき始めました。明らかにおかしいと。突然ティミーとジミーの死体がなく、しかも他の人の死体も全部なくなってしまったのですから。この時点で現実でないことがわかりますし、犯人は死体がない人物と言えばティミーかジミーしかいません。
オチ解説ネタバレ③真犯人
最終的に死体が見つかっていないのはティミーかジミーなのでこの二人が怪しいです。
ですが、
私も含めてロードが怪しい!と思いましたよね。これが本作の秀逸なところです。血で穴のあいたシャツ、不自然なくらいつながらない無線、パリスが見つけた囚人の写真がロードであったこと。すべてロードにミスリードするための伏線ですね。
でも最終的にティミーが犯人でした。まあ死体がなかったことから当たりがついた人もいるはずです。
ちなみに母アリスを殺したのは直接はエドですが、実質的な原因は一緒に遊んでいたティミーです。親父も同じですね。
映画アイデンティティの結末は?
ラストはパリスが一見幸せそうに農園で生活していたのに殺されるシーンでした。
なぜティミーはパリスを生かしておいたのでしょうか?あのいざこざ殺してしまうこともあったでしょう。
でも必要だったのです。
一つは精神鑑定を乗り切るために無実の人間を誰か一人生き残ったかのように見せかける必要があったのです。
ティミーの計算どおり生き残ったパリスは無罪ということになり、死刑を免れました。
ですが、ティミーはなぜパリスを選んだのでしょうか。
これは私の考えですが、冒頭にあった「売春婦に捨てられた男の子」というのが答えだと思っています。
ティミーにとって最も憎むべきはこんな多重人格になるきっかけをつくった母親であり、売春婦です。
作中でも怒りをあらわにする場面もありましたが、彼にとって売春婦はしっかり方をつけなければならない大事な相手だったのでしょう。
だから自分を救う相手は売春婦(=母親)である一方で、自分で最後に止めを刺す相手として残しておいたのだと思います。
映画アイデンティティの最後に
ジョン・キューザックの作品はサイコパスものが多いですが、今回も外れることない良作でした。
特にティミーは怖すぎるくらい役にはまっており、こんなのエスター以来の怖い子供です。
そういえば日本には怖い演技ができる子役はいないですよね。今回のティミーやエスターのように大人をドキっとさせる子役が日本にはまだまだ出てきていません。それは日本がホラー後進国であることを物語っているのかもしれません。