映画フォー・ハンズのあらすじとネタバレ感想【悲しき姉妹の物語】

フォー・ハンズ
フォー・ハンズ

フォー・ハンズの評価

★★★★☆

開始30分はつまらない描写にあくびが止まらなかったのですが、ラスト20分は怒涛の展開に目が覚めました。
どんでん返しと言うにふさわしい驚愕の事実が明らかになり、ジェシカとソフィという二人の運命が一気に動きだすところは見ごたえ抜群でした。

フォー・ハンズのあらすじ

幼いころに強盗に両親を殺されたジェシカとソフィー。
二人は目の前で両親を殺害されて心に深い傷を負っていましたが、特に姉のジェシカは事件がトラウマになってしまい、妹のソフィーに異様に執着するようになってしまいます。
ある日、ジェシカのもとに弁護士から連絡があり、20年前の事件の犯人であるクリンガーとマリアが出所したと連絡がありました。
両親の死を乗り越えプロのピアニストを目指していたソフィーはそのことを気にも留めませんでしたが、ジェシカは彼らが自分たちに危害を加えてくると息巻いていました。
ジェシカのしつこい対応に嫌気が差したソフィーはジェシカと口論になり、駐車場で争いになりますが、その際に二人とも車で撥ねられてしまいます。
病院で意識を取り戻したソフィーはジェシカが死んだことを聞き、悲しみにくれました。
ソフィーは病院で医師のマーティンと知り合い、いつしかデートするようになりました。
また、楽団のオーディションにも合格し、順調な日常が戻ってきたかのように思いました。

ソフィーは時々、記憶が飛ぶようになりました。
しかも記憶が飛んだときには色々なトラブルが起きているのでした。
時にはマーティンに暴力振るい、時には見覚えのない工場にいたり、ひどいときには幼稚園に侵入しているのでした。
さらに驚くことに留守番電話にはジェシカの声でメッセージが入っています。
ソフィーは自分が多重人格でジェシカが自分の身体に入り込み、殺人犯の二人を殺そうとしていることに気づきます。
ソフィーは自分の身体をベッドに縛り付けたりして、ジェシカの暴走を止めようとします。
ある日ソフィーが目覚めると車を運転しており、トランクには縛られたマリアがいるのでした。
通りがかりを装いマリアをトランクから出すと、林へ連れて行きマリアを脅して街から出て行くように忠告しました。

フォー・ハンズの結末ラスト

マリアを殺し損ねたジェシカの人格は今度はクリンガーを殺そうとしますが、失敗してしまいます。
ジェシカの存在を確信したソフィーはマーティンにすべてを話し、治療を行うことを決意します。しかし、マーティンにいわれてあることに気づきます。
それは自分の背中にタトゥーがあるのです。つまり自分の肉体はソフィーではなくジェシカのものだったのです。
その日の夜、ジェシカが暴走しないよう自らをベッドに縛りつけたソフィーは部屋にクリンガーが侵入し殺されそうになります。
そこへ訪ねてきたマーティンとジェシカの人格でクリンガーを殺してしまいます。
ソフィの墓参りをしながらマーティンに「これからどうするかは考え中だ」といいます。
部屋に戻ったジェシカはピアノを弾き始めます。鏡にはソフィが映っていました。

フォー・ハンズのオチネタバレ解説

とんでもないどんでん返しがつまっていた映画フォー・ハンズです。
一つづつ解説していこうと思います。

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背中のタトゥー

フォー・ハンズのオチはなんといっても「死んだのはジェシカではなく、ソフィーだった」というところです。
きっかけになったのはマーティンから「背中のタトゥー」に言及されたからです。
精神は2つ、肉体は1つのはずのソフィーはこの肉体が自分のものでないことに気づいてしまいます。

ソフィーの銀行口座にお金がない理由

これも納得です。
ソフィが自分のお金がなくなっているのは、見ているのが「自分の銀行口座ではないから」です。
作中ではなんで?ジェシカが引き出したの?と思っていましたが、自分の口座でないなら納得です。からっぽなのはジェシカの口座でした。

これは完全に憶測ですが、もしかしたらジェシカはソフィが不自由なく暮らせるように親の財産を全部ソフィに相続させたのかもしれませんね。(ドラマのプリズンブレイクでも兄のバロウズが弟のマイケルに全て相続させて大学に行かせたのに似てますね。)

クリンガーを殺すために

ラストでマーティンがクリンガーに殺されそうになったとき、ソフィーとジェシカがベッドの下で見つめ合うシーンがあります。
当然精神は2つでも肉体は1つなので二人が見つめあうことは物理的にありえないことなので、これは精神世界での出来事だと思われます。
これは非力なソフィではクリンガーを殺せないため、ソフィー自身がジェシカに助けを求めた=ソフィーが自身が幻影であることを認めて肉体をジェシカへ返したものと解釈できます。

ラスト鏡に写るソフィー

クリンガーが死に、ソフィーの葬式が終わったものの、ソフィはまだジェシカの中にいます。
ここからは想像ですが、ジェシカはソフィーを追い出すこともできるのだと思いますが、実はジェシカが生きたい未来はソフィーの生きたい未来(プロのピアニストになる)と一致しているのではないかと思います。
ジェシカは終始「ソフィーは私が守るから」と言っていましたが、名実ともにソフィはジェシカだけのものになったといえるでしょう。これは一種のハッピーエンドとも取れます。

フォー・ハンズのネタバレ感想

事故にあう前、ソフィにとってジェシカは口うるさい姉、というだけでなく自分のプロのピアニストの夢すらも潰そうとする厄介者でした。
しかも事故にあった後には、自分の肉体すらのっとってくるとんでもない存在です。ソフィの「私の人生から出て行って」と残した留守番電話はまさに彼女の心の底からの叫びだったと思われます。

ソフィの知る真実

しかし物語が進むに連れて、ソフィは多くの真実を知ります。

それはジェシカが今回の犯人に利用されて家の情報を犯人に伝えてしまったこと、そして彼女がそれに強く罪悪感を覚えていること、また、ジェシカがソフィの目を覆っていてくれたおかげで自分はトラウマが少なく済んだことなどです。それはソフィが知らないジェシカの心の闇でした。

さらにソフィにとって決定的な事実が突き付けられます。

自分の肉体は死んでいて、自分こそがジェシカの身体に寄生していたのです。

ジェシカの視点

あらすじを書いていくと上記のように多くがソフィ視点での物語であり、そのほとんどが「ジェシカはウザイ、ヤバイ奴」という描かれかたをしています。

一方でラスト一気にジェシカ視点になると、突然ジェシカの感情が湧いて出てきます。

ソフィを守る、親の仇を取るという炎のような闘志を持つジェシカが犯人に止めをさします。

そして、一転ソフィの葬式が終わると、ソフィとの奇妙な同居生活を改めて受け入れたようなやさしさすら感じます。

やっとジェシカとソフィは安息の地を手に入れたという病的な安堵すら感じました。

それがラスト幸せそうに、でも悲しそうにピアノを弾く姿に出ていると感じました。

物語を通して病的なジェシカの「ソフィを守る」という執念が実るのを感じられるある意味爽快なラストだったとも言えます。

悪く言えば、病的なストーカーが相手と意識を共有できるようになる、という見方もできますが。。。。。

最後に

フォーハンズという4本の腕は、ピアノを弾く2本の腕と、それを守るために地に染めた2本の腕を指すのではないかと思いました。

久しぶりに重厚なサスペンススリラーを見ました。ぜひご覧ください。