映画「エリザベス∞エクスペリメント」で知っておきたいネタバレ解説

エリザベスエクスペリメントの評価

★★★★☆

とてもよくできた映画で面白いです。

主人公のエリザベスが美人でなんだかロボットみたいなところもとても役柄にあっています。

はじめは私利私欲で性行為のためのクローンかと思いましたが、その裏で複雑な人間模様とそれぞれの思惑が交差するのでサスペンス作品として展開が楽しめる作品です。

 エリザベスエクスペリメントのあらすじ

天才科学者のヘンリーは美しい妻エリザベスを車に乗せて自分の豪邸へ向かっていました。

使用人のクレアと、オリバーが彼らを迎え入れます。

エリザベスは超天才でお金持ちのヘンリーと結婚できたことが今でも信じられず、幸せと不安が入り交じる複雑な気持ちでいました。

彼はエリザベスに豪邸を紹介していきますが、一つだけヘンリーの仕事部屋だけは入室を禁止されていました

ある日、ヘンリーが外出して一人だけ豪邸に残されたエリザベスは、その夜に好奇心から入室が禁止された部屋へ入ってしまいます。

なんとそこには機械の中で眠っている自分自身がいました。

混乱しながらも平静を装う彼女でしたが、翌日帰ってきたヘンリーは彼女が部屋に入ったことを見破っていました。

すると突然ヘンリーは彼女に刃物を持って追いかけてきて彼女を殺してしまいます。

外出から帰ってきたクレアはヘンリーに「もうこれで終わりにして」と彼を責めます。

その数か月後。

エリザベスはまたヘンリーの車で豪邸に向かう途中で目覚めるのでした。

エリザベスエクスペリメントのネタバレ感想

これまでもありそうで無かったクローンもの。題材はとても興味深く、個人的にはスリラーの類として好きな作品です。

クローン映画の新たな一歩

新しくて古い題材「クローン」。技術として画期的ながら世界的に人間のクローンを作ることが禁止されていることから、その話題は現実よりも映画の中で見かけるほうが多いかもしれません。

私が知るクローン映画は「アイランド」が一番印象にありますが、多くの場合「え、自分ってクローンなの?!」というオチが多いです。

このお話ではすでに予告の段階でエリザベスがクローンであることがバレているため、むしろ映画の主題はクローン自身と彼女を取り巻く人間模様にあるこれまでにない映画です。

 倫理か愛情か

酒樽のような腹をしたお金持ちのおじさんヘンリーと美しき妻エリザベス。

ジャケットには「欲望を満たす」なんて書いてあるので、変態おじさんのヘンリーが若くて美しいエリザベスを性奴隷にするか、殺人衝動の奴隷にしているのか、と勘違いさせられましたが、ヘンリーにはエリザベスを作る理由がありました。

それはエリザベスとの新婚生活をもう一度したいという純粋なものでした。

(ちなみにこの考えはクレアには「?」という感じでしたが、これは結婚している人そうでない人の違いなのか、男女の思考の違いなのか、興味深いですね)

この物語は、エリザベスとの初夜からスタートするため「このスケベが」と視聴者は思ってしまいますが、ヘンリーはエリザベスとの燃えるような初夜をもう一度体験したいのです。これは極めて純粋な気持ちであり、誰もが持っている感情ではないでしょうか。

満たされないヘンリー

さて、はじめは美しいエリザベスを性奴隷にように扱っている(ように見える)ヘンリーですが、私は次第に彼がかわいそうな老人に見えてきました。

共同研究者のクレアとは肉体関係も持ち、エリザベスとも肉体関係を持ちながら、新たな研究を続け満たされない日々が続きます。

それもそのはず、クレアとは愛を育んで生まれた性交ではなく、エリザベスとの体験はこれまでもう何度も繰り返してきた過去の体験なのです。

ヘンリーが目指していた「あの初夜」は初体験だからこそ刺激的で素晴らしい夜だったのであり、同じ経験をしたところで「あの初夜」は体験できません(新鮮さがないため)。

人間自分が想定したもの以上の体験をしないと感動できないものですが、人工的に作られたエリザベスは「あの初夜」通りの体験は提供できますが、それ以上のものは作れません。そのためクローンではヘンリーが目指す体験は遠かったのではないかと思いました。

エクスマキナとの比較

話は変わりますが、よく映画エクスマキナと比較しているレビューを見かけます。

「エクス・マキナ」のネタバレ感想と結末の解説

映画エクスマキナはAIで作り出された人造の女性が人間を虜にしていく話ですが、エリザベスエクスペリメントに足りないのは実はこのエクスマキナの要素です。

エリザベスのクローンと、エクスマキナのAIは目指すところは似ていますが、本質は全く別の者です。

大きな違いは過去への執着です。

興味深いのはエリザベスのクローンが崩壊している一番の原因は「過去の記憶がないこと」自体ではなく、「過去の記憶がないことに対する不安」が精神的に、肉体的に彼女を追い詰めることでした。

この点AIは機械ですので「記憶のない」部分に執着がなく、あくまでも記憶のある部分を教師データとして、自らの人格を作っていきます。

この点やはりAIのほうが人間の性奴隷としては優れて(?)おり、この点は映画ホットボットでも私は理解しています。

映画「ホット・ボット」から見る性的ロボットの未来【ネタバレあり】

 最後に

SFでありながらも地に足がついた「ありそうな」ストーリーがとても刺激的な作品です。

特にこの手の映画は倫理感、個人のアイデンティティ、登場人物の愛憎など多くの考えさせられる題材を持っている良作です。ぜひご覧ください!